第5話「あの子が大宮凛(おおみやりん)って言う子ですね」
「おにーさん、もしかして私を助けようとしてたのですか?」
その少女は顔を傾けて、顎に人差し指を当てて、俺を見てくる。頭にハテナマークが見える。
この少女ただ者ではないな。なぜ浮いている。何かトリックでもあるのか?
「ああ、人間がビルの最上階から落ちてきていたんだ。助けるのは当たり前じゃないかよ。そんな事より怪我はないのか」
「ふーん、べ、別にあなたの助けなんて必要はなかったのですけど……、一応、お礼言っときます。あ、ありがとう」
少女は耳を赤くなりながらも、もじもじしながら言った。そんな少女を見ながら俺は拳を握りしめた。
「俺がそんな事をするわけないだろ。善意からの行動だ。決して、ピンク色のクマさんパンツを見るために君の真下の立ったわけじゃない。年相応でいいじゃないか。それより今、浮いているのってトリック……」
会話が言い終わる前に、俺の頬は手の痕で真っ赤に腫れた。そして、気づいた時にはその少女はこの場から姿を消していた。
痛いじゃないか。俺がなにをしたって言うんだよ。それに言い終わるまでにどこかに行くとか酷い奴だ。会う機会があれば説教してやる。
俺は叩かれた頬を手で撫でながら、真顔で、
「香川補佐、それじゃ行きましょうか」
心なしか、香川補佐の目が冷たく感じる。まるゴミを見る目をしている気がする。
「……あなたって、ロリコン?少女のパンツを見て熱く語るなんて……」
「違いますよ。正真正銘、ロリコンではありませんよ」
なんで誤解をしているのだろう。ただ俺は助けようと、そのタイミングで見えたパンツは仕方ないとして、俺の正義を貫いただけなのに。なぜだ。男の目にも涙だぜ。
真のロリコン認定された俺だったが(認めていないぞ)、エレベーターで最上階に向かう。
「え?さっきのアイドルの一人だったのですか?あの青紫髪の女の子が」
「そうですね。あの子が大宮凛(おおみやりん)って言う子ですね」
「そっか、今度はしっかりと挨拶をしないとな。名前も述べてないし」
「…………」
隣にいる香川補佐が拳を構える。それに俺はドキリする。
「な、なんですか、一体?いきなり、拳を向けるなんて、何かやりましたか?」
「あなたがまたあの子に無礼を行いそうだったから、私も女として拳を構えただけよ」
「何それ、ひどい。そんな無礼っていう事はしませんよ。するとしても高い高い、をした後に肩車ぐらいです」
香川補佐は頭を抱えた。そして、深いため息を吐いた。僕に目で威嚇をしてから、
「都条例に引っかかるわよ。それに私は経った今、警察に通報しました」
「え?俺、何もやってませんよ。まだ無実だ!」
俺はエレベーターの中、香川補佐と二人っきりの空間、大きな声で身の潔白を叫んだ。
そんなの理不尽だ。証拠不十分、通報の即時撤退を申し込む。
「うるさいですね。冗談よ。そんな事するわけないじゃない」
その言葉を聞いて、俺はゴクリと唾を飲む。ホッと胸を下ろした。
あの目は本気だった気がするのだけど。それに香川補佐は冗談を言う人じゃない気もしてましたし。
「あら、そう。私は冗談を言うのが結構好きよ。この変態君」
口調は柔らかだけど、目が怖い。目の敵にするかのような目だった。
目から顔にかけて冗談に見えませんが……。ため息を吐きたいのはこっちの方だぜ。
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