第355話 モテモテ君

 そうか、俺は知らないうちに、モテモテ君になっていたのか。俺tueeeなんてやった記憶はないけど、これからはちょっとやってみようかな?


「似合わないから止すノだ」

「……それもそうだよな」


 ともあれ。モテモテ君になったいま、俺がすべきことはこうである。


「なでなでなで」

「きゃっ。なにすんのよ、この忙しいときに!」

「あ、いや。ミヨシって実は俺のことすわぁぁぁお、だからオウミヨシをこっちに向けるな! 尖った先端とお前の目が怖い」


「お尻に触わったからよ! 命が惜しかったら引っ込んでなさい。キャベツと一緒に刻むわよ!」

「ハイ、スミマセン」


 ミヨシのやつ、今日は機嫌が悪いのかな。俺がファーストキスの相手だったらしいのだが。あ、モナカ見っけ。


「ぷにっ」

「きゃっ! ばしっ!!!」

「ふげっ」


「なななな、なにするんですか、ユウさん。それ、セクハラですよ!」

「痛たたた。お前、なんかツッコみ力が強くなってないか?」

「突然お尻を掴むからびっくりしたんですよ! もう止めてくださいよ!!」

「ハイ、スミマセン」


「オウミ?! 本当に俺はモテモテ君なのか?」

「そうなノだ」

「なんか魔王を見るような目で見られたぞ」

「それ、なんて尊敬のまなざしなノだ?」


 くっそ、ネタで誤魔化しやがった。しかしモナカは対象じゃないということかな? まあ、いいや。次はっと。


「がしがしがしがし」

「分かった。お前は最初から対象外だ」

「がしがしがしがっしがし」

「いつもより余計に踏まれております、やかましいわ」


 こいつに近づいたのがまずかった。


「そうだ、ハタ坊!」

「どうした? もぐもぐ」

「お食事中だったか、ちょっとおっぱい揉ませてぐでぇぇぇぇぇ」

「あたしはそういうの厳しいぞ、もぐもぐ」


 もぐもぐタイムに俺の腕をネジネジするとは、けしからん眷属である、いててて。


「おい、オウミ!!」

「なん、なんなノだ、近いノだ。そんな近くで迫力を出して睨むでないノだ」


「お前、俺がモテモテ君って言ってたけど、どこがだよ!」

「我はウソは言ってないノだ。本当なノだ」

「なんかここにいる全員に振られた気分なのだが」

「それはお主のやり方が悪いノだ。我のせいにするではないノだ」


 スキンシップのどこが悪いというのか。俺はあちこち(おっぱい、尻、太もも)に触ってみたかっただけだ。


 自慢じゃないか俺は女の子(の3箇所)に触ると幸せになるのだ。だから触られたほうだって幸せにならないわけがない。そうならないのに、なにがモテモテ君だよ。


「思い上がりなノだ」

「お前は俺を持ち上げてんのか引き落としてんのか、どっちだよ!」


 こんちくしお。オウミの言うことなんかを真に受けた俺が間違っていた。ところで、俺のスクナはどうしたんだろう。


「ミヨシ、スクナはどこ行った?」

「えっと今日の予定は確か……。あ、小麦粉の仕入れ交渉に、ミカワまで行ってるわね。ミノウ様とベータ様も一緒みたい」


「ベータと? なんで一緒なんだろう?」

「さぁ、それは聞いてないけど。ついでにお里帰りでもするのかしら」

「そういえばベータのやつは、こっちに来てから一度も帰ってなかったな。ラーメンのタレも目処が立ったし帰省にはいいタイミングか。自慢話もできるだろう。でもなんでスクナが一緒なのかと俺は問いたい」


「ふん」

「なんでそうなるんだよ!」


 なんだかものすごく単純だけど雄弁な「ふん」であった。ハルミがエースに、そしてスクナがベータに。なんてことになったら、俺は泣くぞ。


「ユウが泣いても可愛くないノだ」

「ほっとけよ」


「とことで、ミヨシはなにを見てるんだ?」

「あ、これ。社員ごとのスケジュール表よ。人は増えたし出張するケースも増えたから、誰がなにをしているのか分からなくなるでしょ? だからこうやってその日になにをするのかを、あらかじめ書いてもらってるの」


「なるほど。それを見ればだいたい把握できるわけだ。どれどれ。ハルミのとこは、……筋トレとしか書いてないが」

「お仕事が休みの日はそればっかりね」


「あいつは筋肉を休ませるということも覚えろよ。するともう他にはいないのか」

「他にって?」

「おっぱいが揉めそうな女のこ痛だだだだだ、あ、なんでもないです。痛痛痛」


「ユウ。もういい加減に迎えに行くべきだと思うノだ」

「誰を?」

「ユウコはお主の秘書と護衛の両方だったのではないノか」

「そうだよ?」


「いや、そうだよ?シレ ではないノだ。ユウコをアイヅに置いてきたままなノだ!!」


「あっ!! 俺のおっぱいちゃん!」

「いや、おっぱいだけじゃないと思うノだが」

「忘れてた。迎えに行こう。ミヨシ、ちょっとアイヅに行ってくる」


「ふん」

「だからその、尾てい骨に響くふんは止めろって! オウミ、転送を頼む」

「ほい。ひょいっ!」



「イセシマ編はどうなったのヨ?」

「継続中だよ?」

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