第348話 最終兵器ハルミ
その間にもウズメの攻撃は続き、ハルミの着ている布は、巨乳と尻を隠しているだけとなっていた。
このぐらいイジメてやっと気が済んだわ。あんまりやっても可哀想よね。このぐらいにしておいてあげましょう。
そこに。突然降ってわいたような斬撃が飛んできた。ウズメは避けるどころではなかった。
衝撃が来て、始めてそのことに気がついたのだ。思わず後方に飛び上がったのは、衝撃が来た後であった。ウズメは、自分に起きたことに気がついていなかった。
ハルミの――というよりミノウオウハルの――斬撃は、ウズメの袴の紐をぶった切っていたのだ。その結果、袴は重力によってずるずると垂れ下がり始めていたのである。
そんなときにウズメは後方に向かって大きくジャンプをしたのだ。
袴をそこに残したまま。
「きゃぁぁぁぁぁ」
パンツが丸見えになったウズメの悲鳴である。
「なんかおばんのパンツだな、あれ」
「もう少し色気のあるパンツをはくべきだと思うノだ」
「そこっやかましい! 踊りをするのに、そんなちゃらちゃらしたパンツなんか……なんで? どうして袴が脱げたの? いまなにがあったの?」
「私が切ったのだ。さんざんやってくれたなウズメ。少し仕返しをさせもらうぞ」
「ハルミ。あんた、師匠に向かってなんてことを!」
「師匠が先に手を出したのだ。私がただ黙ってやられている女だとは思わないことね」
「そうか、分かった。もう手加減なんかしないからな。この巨乳だけが取り柄の肉布団女!」
「だ、だだ、誰が巨乳だけが取り柄だ。私には鍛え上げたこの筋肉もあるのだぞ。だからいま、素っ裸で仁王像作りのモデルをやってやかましい!」
「知らないわよ、そんなこと! それよりどうやって私の袴を切ったのか白状しなさいよ! 魔法を使うなんてインチキよ!!」
「な、なにがインチキよ! そんなルールないでしょ。でも私の刀はね……あれよ。その、あ、そうか。言っちゃダメだった。えぇと、その、ああいうところに置いておくと誰かが転ぶかもしれないからちゃんと片づけておきなさいよ、的な?」
だぁぁぁぁぁ。なんだよ、その意味不明な発言は。それに最後の? はどういう意味だ。誤魔化すのがヘタなのは知ってたが、それにしたってヘタ過ぎ……。
「あ、そう。それなら勝負しなさい。どっちが強いか、決着をつけてあげるわ」
なんでそれで納得してんだよ!! どうでもいいのか! 斬撃が飛ぶのは、転ばないように片づけておきなさいよで片づく程度の問題なのかよ! 助かったじゃねぇか!
「意味は不明だが、魔法を使ったことになっているノだ。良かったノだ」
「良かった、のかなぁ」
「ハルミがそう来るのなら、私は魔法防御を張ることにするからね。それでおあいこよ」
そう宣言してウズメは結界をつくるべく不思議な踊り始めた。スペルを奪う踊りではない。結界を作る踊りである。
その間に攻撃してもルール違反に問われることないが、ハルミはその必要を感じていなかった。魔法防御などで防げるはずはないという確信があったからである。
「ルール違反もなにも、これは剣舞ではなかったのかヨ?」
このクドウの力を使ったミノオウハルの斬撃は、物理でも魔法でもあらゆる結界を苦にしないのだから。
「パンツ丸出しだけどいいのか?」
「うるさいわね! 考えないようにしてるんだから黙ってろ!」
考えなければパンツは見えてもいいらしい。さすがはエロエロ度700のウズメである。アマテラスが岩戸に隠れたときも、こんな感じで脱いだのかな?
「さぁ、用意はいいわよ。どっからでもかかってきゃぁぁぁ」
ウズメの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ハルミが一閃すると、こんどは右の袖部分がすっぽりと抜け落ちた。
「なんでそうなるのよ!!」
「いや、なんでって言われても」
ウズメは芸能の神であり、剣技にも卓越した技術を持っている。しかし、魔法使いとしては中の中である。その程度の結界でミノオウハルの斬撃が止められるはずはないのだ。
こうなりゃ仕方ない、接近戦に持ち込むしかない。そう考えたウズメはハルミに襲いかかる。速度なら足裁きがスムーズな分だけ、ややドタドタ感の残るハルミよりもウズメのほうが上のようであった。
ウズメは一気に間合いを詰めると、息をも尽かせず連続で剣を放った。ウズメの持つ両刃剣はこういうときは有利である。持ち帰ることも刃の向きを変える必要もなく、第2第3第4と、連続して斬撃が繰り出せるのである。
しかも長さに勝るウズメの剣は容易にハルミの着衣を捉え、次々い引き裂いて行った。
「これでもか、これでもか、これでもか、巨乳はまだか巨乳はまだか」
「やかましい! そんな恥ずかしい言葉を連呼するな! ああっ」
接近戦ではハルミに分が悪い。飛ぶ斬撃を出すためには、ミノオウハルを振り切らないといけないのだ。そのためには相手との間に距離が必要だ。
「えい、えい、えい、やぁ。とぉぉ」
カンカン、がん。さくっ、カンカンカン。
という音が何度も繰り返される。ハルミが必死で斬撃を受け止めている乾いた音に、たまに袴を切られている音が混じっている。
おおっ。なんだか知らないが、どんどんあの子の着ているものが減って行くぞ。これも剣舞のひとつなのか? いや、そんなはずはないと思うヨ。でもこれは剣舞のエキシビションだったろ? まあ、俺たちはいいものを見せてもらってありがたいけどな。もっと脱がそうぜ。イセラーといい剣舞といいここは良い国だ。こんどは我の国でもやるノだ。それはいいけど、あんたたち「「「「「誰?」」」」」。
お前ら、いつのまに観衆に混じってんだ?
ハルミは力任せにウズメを引き離し、そのわずかな間隙を縫って斬撃を放つ。それは着実にウズメの羽織を引っ剥がすが、ウズメは近接状態から斬撃を放ち、ハルミの袴を切り裂いて行く。
しかし、最初に切られた分だけハルミが不利であった。ハルミの身体に残っているのは、巨乳をお情け程度に隠している胴着の切れ端とパンツの残骸だけとなっていた。
うむ。だいたいヌーブラとTバック状態である。あれでよくあんな自由に動き回れるものだ。恥ずかしくないのだろうか。
「うるわさわね! そんわけないでしょ!!」
いや、もう慣れたのかなって思って。これで2回目だし。
「さて。そろそろ年貢の納めどきですわよ、ハルミさん」
ハルミの布が少なくなったのを見て、ようやく少し余裕の出たウズメであった。
「この勝負、全部脱がされたほうが負けですからね。ではいくわよ!」
いつそんなルールができたんだ?
と思っている余裕はハルミにはなかった。すごい勢いでウズメが間合いに飛び込んで来たのだ。後ずさりならが剣先をかわすハルミ。
これで最後といわんばかりに剣を振うウズメ。当てる必要はない。その剣が起こす風塵だけでも、ハルミを素っ裸にすることが可能だと思っているようである。
その激しい攻撃に、後ろに下がりながらひたすら耐えるハルミ。もう絶望かと思われたときであった。
「あれ?」
足になにがか当たったと思ったときには、ハルミは思い切り後ろにすっころんだ。
攻めて攻めて攻めまくっていたウズメは、予想もしていなかったハルミの動きについてゆけず、覆い被さるように前につんのめってしまった。
仰向けに転がったハルミは咄嗟にミノオウハルを手放し、両手で覆い被さってくるウズメの襟を掴むと、自分の右足を曲げてウズメの腹を足の裏に乗せ、その勢いにまかせて思い切り後方に投げ飛ばした。
巴投げである。これがあまりに見事に決まったため、背中を強打したウズメは一瞬息が止まった。
「ぐはっあぁ」
ハルミはミノオウハルを持ち直し、斬撃の構えを取った。これで距離を稼ぐことができた。しかし、ウズメもすぐに体勢を立て直し、こちらに向かってきた。その足取りはややふらついてはいたが、また接近されたら、もう勝ち目はない。
この距離で出せる斬撃は、2回か3回か。それではウズメの着ているものを全部剥ぎ取るのは無理だ。そこに、ユウから容赦のない声援が飛ぶ。
「ハルミー。例のアレを出せ! もうアレしかないぞー」
これまでも何度も出そうと思ってはためらったあの技。まだ1度も――練習でさえも――出したことのないハルミの最終兵器。飛ぶ斬撃の最終形態ともいうべき技がある。
斬撃を427に分けて一撃で飛ばす。アレである。
そうだ。もうアレしかない。アレしかない。アレしかない、のだが、アレしかないのかよ!!!
そんなハルミの逡巡を尻目にウズメは近づいてくる。もうダメだ。この距離では1撃しかできない。ハルミは決心するしかなかった。
この大観衆の中で、あの恥ずかしい技――技は恥ずかしくない。恥ずかしいのはユウが設定した呪文である――を出すのか。
みんなに聞かれる。きっと噂になる。私が噂になる。初級聖騎士があんな恥ずかしい言葉を言ったなんて、みんなの話題になったらもうお嫁にいけない。
しかし、負けるのは嫌だ。それだけは絶対に嫌だ。あぁ、どうすればいいのだぁぁぁぁ。
ウズメがハルミに切りかかる。もうハルミの胸にも股間にも、わずかな布が貼り付いているだけだ。それが剥がれたら負けが決まる。ウズメが剣が目の前に来る直前、ハルミはそれを唱えた。
「おちんちんスラーーーッシュ!!!!」
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