第130話 3人目の眷属

「俺をユウの眷属にしてくれ」

「イヤだ」

「そうか、じゃあすぐ手続きを……っておいっ!」


「いやだ?」

「ひらがなに代えても言ってることは同じだろうが! なんで嫌なんだよ」

「むさい男はいらない」

「むさくて悪かったな!! じゃ、愛らしい動物になればいいんだろ?」

「お前が?」


「なんだその疑惑のまなざしは」

「おまえが?」

「だからひらがなで言っても同じだというに」


「変身ができるってことか? それならどんな風になるのか先に見せてくれよ」

「いまできるわけがないだろ。お前が眷属にしてくれるときの条件にそういうのが付けられるだけだ」


「なんだ先には見ることができないのかぁ。それじゃリスクが高すぎるだろ」

「なんのリスクだよ! どんなものに変身させるのかは、お前が決めていいんだぞ?」


「お、俺の好きなものを指定できるのか。それなら文句はない。しかし、俺はすでに2回その魔法を使っているからなぁ。これで最後になってしまう。まだ12才なのに使い切ってもいいものかどうか」


「ユウ? なんか勘違いしてないノか?」

「勘違いってなんだ?」

「生涯に3回というのは召喚であろう。眷属は何人でも持てるぞヨ?」


「あ、そうか。お前らを召喚したときに眷属にしてものだから、セットかと思ってた。うん、それならいいぞクラーク」

「そうか! それはよかった。じゃ、頼む」


「しかし、どうしていきなり俺の眷属になろうと思ったんだ?」

「俺は、魔王として知らないことが多すぎると思ってな。お前の下でそういことを含めて学びたいと思ったんだよ。お前は特に物知りのようだしな」


(本音はニホン刀が欲しくて仕方ないノだよ)

(暇ができるので、俺たちと遊びたいのだろうヨ)


「まあそれならいいか。じゃあクラークは小鳥の姿にになってくれ。エナガのイメージだ」

「エナガってなんだ?」

「スズメより一回り小さくて、可愛い鳥だ」

「それだけじゃわからん。ここにいる鳥なのか?」


「どうだろ? ニホン中にいると思うのだが」

「クラーク様。こちらに図鑑があります」


 モナカが図鑑というものを持ってきてくれた。コマ回しの手を休めてまで、さすが俺の秘書である。てかこの世界に図鑑があるのか?!


「ああ、こいつか。シマエナガではないか。これなら知っている」

「色合いがちょっと違うけど、まあ、似たようなものだな。それでいい。できるんだな?」

「ああ、俺の知っているものならなんでもOKだ。さぁやってくれ」


 本当に大丈夫だろうなという心配もあるが、本人が自信たっぷりだからこれ以上ツッコむわけにも行くまい。


 自分から眷属になりたいなんて殊勝なことを言うやつを、無碍にするわけにも行かないしな。


(最初はきっぱり無碍にしていたようだったノだ)


「じゃあ、お前は俺の手下な」


 …… …… 


 あれ? いつものち~んがないぞ? これはどうしたこと……ぷっ!!!!


「あはははははは、クラーク、なんだそれは、わははははは」

「なんだ、とはなんだ。俺はお前の希望通りにシマエナガに」

「希望ってそれ、希望とわははははは、ちがははははははは、くる、くるしあはははは」


 俺の爆笑を聞いて、ゲームに興じていた連中もこっちを見た。そしてクラークに視線を移すと、


「ぎゃはははははは、なんだ、なんだそれぎゃははははははノだ」

「くら、くくくっ。おぬ、しお、ぬし、あはははわははは、その姿あはははははヨ」


 最初のうちは、笑ったら失礼になると思って我慢していたその他の連中も、やがて我慢しきれくなって、


「あははははははははは。すごいあははははは、その姿わははは」

「く、クラーク。様、ステキでしゅはははははは」

「か、可愛いぃ、クラーク様、そのお姿はあははははあははは」


 笑い転げたのであった。


「お、お前らは一緒になって笑いおって。俺が立派なシマエナガになったのがそんなにおかしいか!!!」

「いや、そういうことじゃなくてだなあはははは」

「ユウ、違うのか?」

「いや、違ってはない。違ってはいないが、ちょっと違ってるっていうか、だからこっち見んなおかしぃぃあはははははは」


 クラークは、シマエナガに変身したつもりであった。しかし、もとのいかつい顔がどうしても自分のイメージに残っていたのであろう。

 人間の姿であったときの特徴が、ちょっぴりシマエナガに残ってしまったのだ。


 それが下の絵である。


「うふふふふふ。とても、とても可愛いらしいですわよ、クラーク様くくくくくくっ」

「す、ステキです。いままでよりもふふふふ、ずっとふふふ、いいきゃはははははは」


 どうにも腑に落ちない顔をしているクラークを見て、俺はある名前をふと思い付いた。そうだ、こいつにこの名前をやろう。


「よし、クラーク。俺の眷属になったお祝いに、名前をつけてやろう」

「いや、俺はクラークだ。いまさらどうして名前なんか」

「俺が名前をつけると、お前は進化するらしいぞ」

「え? そうなのか?」


(それ、なんて転スラヨ?)


「これから、お前はカンキチと名乗れ」

「そんなヘンな名前なんか冗談ではな……」


 ち~ん。


 ここで、それ!?


#クラーク画像は『ブユムシクイ』でググってください。

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