第9話 セラピードックとセラピスト
「杉村くん、君に来てもらった理由だけどね」
「僕のセラピーだね」
「えっ」
早瀬さんは、驚いた様子をしていた。
「言いだしっぺは、真一だね。そして、僕の両親に話を持ちかけた」
「杉村くん・・・」
「そして、僕のセラピーのためにここに連れえ来た・・・
あの子たちは、セラピードック・・・そして・・・」
「そして・・・?」
「早瀬さん、君はセラピスト、違う?」
早瀬さんは、頭をかいた・・・
「全部、お見通しなんだね。その通りよ」
「やはりね・・・おかしいと思った・・・」
「何が?」
「女の子が、わけなく僕に優しくするはずないもん」
「それは、違うよ」
早瀬さんが、怒鳴りつけてきた・・・
でも、動じなかった・・・
「君は、あの子たちに好かれていたじゃない」
「動物は違う」
「違わない」
「えっ」
早瀬さんは、続けた。
「君がここに来たのは、確かに鈴本くんからの持ちかけ。
でも、私は嫌いな人を、セラピーしたりはしない」
「えっ?」
「あの子たちもそう。君がこれまでしてきたことが、あの子たちを引き付けたんだよ」
早瀬さんは、続けた・・・
「私はここに来て、わずかな間だったけど、君はとても光っていた。生き生きしていた」
「それは、全てあの子たちのおかげだよ」
「それだけじゃないよ!」
「えっ」
「私もそうだけど、皆君が好きなんだよ」
わからない・・・人は自分の事がいちばんわからない・・・
主観的にしか見れないからだ・・・
客観的にはそう見えるのか・・・
「どうやら君には、口で説明しないほうがいいみたいね」
「早瀬さん・・・」
「ついてきて・・・」
早瀬さんの後をつける。
いつもの広場に出た・・・
「早瀬くん、中央に立って・・・」
言われるままに中央に立つ・・・
すると、たくさんに犬たちが僕の周りに集まってきた・・・
何もせず、ただじっとしている・・・
「杉村くん、わかった・・・」
「ああ、わかったよ・・・」
目頭が熱くなる・・・
「杉村くん、私はセラピストとしては、まだまだだけど・・・」
「うん」
「この子たちに負けないようになるから・・・だから・・・」
「だから・・・」
「お願い。力を貸して・・・」
早瀬さんは、泣いていた・・・
僕が力になれる事はあまりない・・・
でも・・・
それでもいいのなら、力になろう・・・
「よろしく・・・これからも・・・」
僕と彼女と・・・犬たちと・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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