ii. ご利用は計画的に
なんてこった……。
この前/dev/nullに捨ててしまっていた上長の話、ひどい炎上案件だったじゃないの!
あたしはみんな帰ってしまった深夜のオフィスの自席に突っ伏している。
もー。今日で三日目よ、帰れてないの。
かろうじてネットカフェで仮眠とシャワーくらいはなんとかしているものの、これはもうボロボロよ、ボロボロ。ガベージコレクションしきれないわ。
はあ……。
もー! もういい!
こんなインスタンス、破棄してやるっ!
愛用の
なんてね。こう言うとなんかかっこいいでしょー。魔女っぽいでしょー。
すぅっ、と。
あたしの体が徐々に徐々に透けていき、やがて完全に消えてしまう。
……はて、そういえば。この肉体を持っていない間もあたしはこうやって思考できているわけで、これどうなっているんだろうね? 意識というのは難しいものね。まあいいけど。
そんな哲学的な思考に片足つっこんだあたりで、あたしの体が再びうっすら浮かび上がり、完全に
いやー、リフレッシュ!
これはなかなかの大技でしょー。
まあ簡単に言ってしまうと、あたしの肉体は仮想化してしまったのよね。
本体たるイメージがサーバー上にあって、それをインスタンス化することであたしがここに存在している、と。
なかなかこれ、難しいんだからね? サーバーのリソースも食うし、転送量も……あ。うう。考えるんじゃなかった……。
クラウドコンピューティングサービスは、サーバーリソースを使った分だけ課金される、従量課金制のものが多いの。
ああ、怖い怖い……。
後日、あたしの元に届いた請求書によって、今回の残業代が余裕で吹き飛んだのは言うまでもなかった。
――インスタンスのご利用は計画的に。サーバーも。肉体も。
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