第12話 包囲殲滅陣
この日の空は雲一つない快晴で、暖かい太陽はまるで祝福しているかのようだった。
連邦に反旗を翻す軍隊を
おっさんたち反乱軍は城を取り囲むような陣形を整えて本陣を城門前におく。
兵士が本陣への報告に来た。
「軍長。城の包囲完了しました」
軍長は椅子に座っているが以前のようなやつれた顔をしていない。
いつも和かな笑顔で兵士達に接している。
「報告ご苦労である」
しかし戦力差で大きく優っているのに、なぜ攻め込まないのか理解できない。
「攻め込まないのか?」
すると和かな笑顔で軍長は狙いを説明してくれた。
「城を守備する兵士はほとんど残っておらん。無謀な戦じゃよ、そのうち自ら城門を開けるだろう」
「なるほど」
軍長の言葉通り城に残っている人間の兵士はわずかである。
ただ連邦代表も大人しく負けましたと城を明け渡すような人物ではない。
軍長は平静を装ってはいるが、内心では何か仕掛けてくるのではないかと警戒をしていた。
残念なことにその憂慮は実現のものとなってしまう。
ガルーニャ連邦城の宮殿内では実際に代表が反乱軍の存在を知り頭を掻きむしっていた。
兵士が宮殿の玉座に座る代表に、現在置かれている状況を説明している。
「我らが王国討伐軍…謀反です。35万の軍勢が城を包囲しています」
「あいつら、裏切りやがって!」
〈ガッ〉
代表が近くにある机を足で思いきり蹴ったせいで、置いてあった銀のグラスが床に落ちて転げてしまっている。
「ダイヒョウ、ダイジョウブカ?」
その転がった先で銀のグラスを拾ったのは一際目立つ、体の大きな者だった。
しかし、全身を布で包んでいるので表情が分からない。
「大丈夫だ!お前も早く布を取って喋れ。声が聞きづらいわ」
「シツレイシタ」
代表と会話をするために大男は、顔に巻かれた布を取り始めた。
布の中から出てきた姿に近くにいた兵士は驚き、腰に携えている剣の柄に手をかけている。
大男は人ではなく魔人だったのだ。
怯えている兵士を見て代表は笑い出す。
「ふははは。大丈夫だこいつは我らの味方よ。キッチリと契約もしたしな」
「ハンラングン、チンアツスル、ドノクライタスケルカ?」
「反旗を翻す軍などいらんわ、皆殺しでいい」
「ワカッタ。ミナゴロシダ」
「頼んだぞ。あの軍長は串刺しにして街の広場に飾ってやるわ」
「リョウミンハ、モラッテイクゾ」
「好きなだけ持ってけ。領民など取るに足らんわ」
魔人は一礼すると、部屋を出ていった。
視線を王が座している部屋に戻すと会話を聞いていた兵士は体を震わせている。
それが恐怖なのか、怒りなのかは分からないが混乱していることは確かであろう。
魔人軍は、そんな兵士の思いを壊すように城から打って出ようと城門前で待機していた。
何も知らずに城の外で包囲している反乱軍はいまかいまかと開門の時を待っている。
魔人軍後方に位置する指揮官が反乱軍の焦る気持ちに応えるかのようにゆっくりと右腕をあげた。
開門の合図である。
〈ガガァ〉
城門が開くとともに門と地面が擦れて広範囲の砂煙が発生して城門前は、なにも見えなくなった。
門を監視していた兵士が軍長に報告しに行く。
「城門が開き始めました」
「遂にあの代表も降参というわけか」
軍長は自らも見ようと城門に近づく。勝利を確信しているのだろう。
しかしおっさんの目には『あれ』がハッキリと見えている。
恐らく、人間の視力だと砂煙に隠れて見えないの
だ。
「軍長。お前の国って人間の国だろ」
おっさんの質問に対して軍長は不思議な顔をしながら答えてくれた。
「なに言っとる。当たり前だ」
しかし砂煙が晴れていくにつれて反旗を翻した兵士達の表情まで変わっていくのが容易に分かった。
おっさんは質問を続ける。
「じゃあ何で、魔人が出てくるんだ」
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