第7話 王都襲来
二度目の魔人侵攻を防いだ後は、前回と同じように村に留まり続けるといった選択はしなかった。
レッドと新たに加わった女兵士長ビジューを加えた三人で、森へ向かおうと村の入り口で待機している。
そんな三人を村人総出で見送ってくれた。
「救世主様… 本当に行ってしまわれるのですか?」
村人のなかでも特に村長は、心配そうな顔をしている。
村に残って魔人の脅威を防ぎたい気持ちはもちろんあるが、王国へ向かう必要があったためにここに長居はできない。
女兵士長を仲間に加えるためだ。
仲間となって冒険する前に、国に帰って兵士長の職を辞する必要があるらしい。
なぜ仕事を辞めてまで冒険をしたいのか、さっぱり分からなかった。
兵士長とレッドが、コソコソと会話しているのを見ていたが、あの時に何か取引でもしたのだろうか。
モヤモヤとした気持ちを抱えながらも、おれは足を進めようとした。
「では、今までありがとうございました」
一礼して村を出ようとするが、村長は何か言いたそうである。
「何か、言いたい事でもありますか?」
心配そうな顔を見ていると、そう言わずにはいられなかった。
その言葉を聞いた村長は待ってましたと言わんばかりに膝をついて話し出す。
「救世主様… お願いがございます。この付近に魔人の拠点があるので、いつか時間が空きましたらそこを潰していただきたい」
弱々しいその姿を見て、ジュビーは悪いことをした気分になったようだ。
「私が一人で国へ戻ろうか。その間だけでも二人は残って守ることが出来る」
「いやいいよ。国へ行く途中で寄り道して潰してくるから」
親切心から出た言葉なのだが、レッド以外は固まっている。
「ちょ、ちょっとそれは流石に無理なんじゃないの?」
「多分いけるぞ。変態ドラゴンは一応、伝説のドラゴンだからな」
レッドが兵士長を説き伏せて、寄り道して魔人の拠点を潰す事が決まった。
「よし、じゃあ行くぞ」
〈バサァ!〉
ドラゴンへと姿を変え翼を広げると、いつも通りレッドが頭に乗ってくる。
「兵士長も一緒に乗って。この場所は快適だから」
「え?分かったわ」
兵士長も俺の頭の上までよじ登る。女一人分なら重さを感じないが、流石に堅強な鎧を身につける女性まで乗せると重い。
「ここ結構見晴らしがいいわね」
「でしょ?お気に入りの場所なんだよ」
〈バッ〉
頭の上で談笑を始める二人の声を聞いて変な気持ちになりながらも、翼を用いて風を地表に叩きつけた。
空中に舞い上がり前方へとぬらりと進むと、しばしの静寂が訪れる。
「空は静かで気分が落ち着く」
しかし静寂な空の中にあっても、頭の上では話し合いが行われているようだ。
「おーい変態。敵の拠点は、村長に聞いて確認したけどあっちの方向みたい」
すっかり忘れていたがレッドは、おれのことを変態と呼ぶようになっている。
「分かった」
教えられた方向に進むと、いかにも魔人の拠点らしい地点を発見した。
大きなドクロの門と、小さいドラゴンが見える。
「お二人さん、少し揺れるぞ」
頭の上に向かいそう言うと、火を噴く体制に入った。
しかし普通の火のブレスでは、この距離だと致命的なダメージを与えることはできないだろう。
(もっと強力なブレスを吹かなければ)
〈ゴガッ!〉
そう考えながら火を吹くと通常のブレスではなく、巨大な黒い火の玉が異常な速さで口から飛び出た。
〈ドゴォン〉
相手の拠点にぶつかると、その玉は巨大な爆発を起こして魔人の拠点を消滅させることに成功する。
「ちょっとドラゴンさん、あれはやりすぎなんじゃない?」
苦い顔で上から覗いてくる。
無理もない。拠点どころか山の上半分をえぐって消してしまったのだから。
「あららー。流石、変態さんね」
また、バカにしたように笑っている。
「早く向かうぞ」
いつも通りムカついたので、全速力で王国へと向かった。
「ちょ、落ちる落ちる」
「もう慣れましたエキサイティングです」
反応は異なるが、二人共必死になって頭にしがみついてる。
全速力で飛ばしたのが原因か、すぐに巨大な城が前方に現れた。
兵士長も確認できたようで頭から身を乗り出して指をさす。
「見えてきたわ!あの国が私の国。ランデル王国よ」
しかし巨大なドラゴンが王国の本拠地である城へと向かっているという状況は、王国として受けいられるものなのだろうか。
敵とも味方とも分からない。そんなドラゴンが急接近しているのだ。
実際にランデル王国はこの時、通常の国が取るであろう対応をしていた。
一度、城の守備兵達の動きを見てみると大きな体をした男が兵士の前に立ち、指示をしている。
「全兵士に告ぐ!大型のドラゴンが急接近している。我らの誇りにかけて迎撃せよ」
「は!兵士長が帰ってくるまで守り抜きます」
兵の士気は十分なようで、指揮官らしき人物からの指示に大声を出して応えている。
それに、指揮官らしき人物はドラゴンが接近しているにも関わらず全く怯えている様子がない。
「対ドラゴン用の装備を進めよ」
「は!」
自信に満ち溢れた声は、さらに兵士達の動きに拍車をかける。
〈ガラガラガラガラ〉
その使命感に駆られた兵士達は、複数の大砲を城の上に設置していた。
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