風邪を引いた夜
夜7時、ご飯屋“宵”の明かりが消えて二階の窓には明かりが灯っていた。
「ご飯食べれそう?」
ベッドに横たわる和歌に店主宵が聞いた。
「うーん…食欲無い…。」
そう言って脇から取り出した体温計を宵に渡した和歌は咳をした。
宵は和歌のおでこに冷えピタを貼って体温計を見ていった。
「38.5か…下がらないね。」
先日通り雨に打たれた和歌は寒さで風邪を引いた。
昼間の店は宵1人で何とかなったが2日目となると話は違ってくる。
和歌は申し訳無い気持ちで咳をした。
「お粥、作るよ。」
宵はキッチンへ向かった。小さな鍋に溶き卵を入れて、塩をする水も少し足して味噌を入れ混ぜる。
水分が飛ぶ前に火を止めてお粥の上に乗せた。
「起きれる?」
オボンごともってきた宵を見て和歌は起き上がった。宵はベッドに腰掛けてお粥をすくって熱を冷ました。
「あーん。」
口にスプーンを運んだ宵に風邪か照れか顔を赤らめた。
「い、いいよ!自分で…」
「だめ、こういう日は甘えて。はい、あーん。」
口を開けた和歌は目を逸らして一口食べた。
「美味しい…」
「よく母が作ってくれたんだ。」
微笑んだ宵に安心感を抱いて完食した和歌は再びベッドに潜って目を閉じた。
宵は和歌の手を握っていた。
「ありがとう宵。」
「どういたしまして。」
和歌はずっと風邪を引いてもそばにいてくれる人が居なかった事を思い出し宵を見て笑った。
眠りについた和歌の額にキスをした宵は和歌の寝顔を見て笑った。
ご飯屋“宵”はいつも朝10時から温かなご飯と共に2人がお待ちしております。
雨が降って風邪を引けば、店主特性の卵味噌粥が食べられるかもしれません。
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