かぼちゃと魔法使い
10月31日。ご飯屋“宵”は前日から黄色いかぼちゃがお店の前でお客を待っていた。
今日はハロウィン子供も大人も無邪気に楽しめるイベント。お店の店主宵も今日は張り切っていた。
「トリックオアトリート。いらっしゃいませ。」
店に来たお客は一緒驚くも先の尖った帽子を被る店主と三角の耳をつける妻和歌を見て微笑んだ。
「そうか、今日はハロウィンか。」
お客は思い出したかのように笑った。
「今日のオススメは何だい?」
「かぼちゃのグラタンです。」
「じゃあそれをいただくよ。」
「はい、お待ちください。」
フライパンに事前に作っておいたホワイトソースを入れてフツフツするまで焦がさないように店主が温める。次第にいい匂いがすると和歌が茹でたかぼちゃを耐熱皿に移し店主に渡す。ホワイトソースを上にかけてチーズを乗せてオーブンで数分焼くとチーズに焦げ目が付いてグツグツと音を立てた。
「お待たせしました。お熱いのでお気をつけ下さい。」
カウンターに出されたグラタンをスプーンで掘ったお客は綺麗なオレンジのかぼちゃを見てうっとりする。ホクホクのかぼちゃはグラタンのソースとチーズに絡み濃厚さを増す。
「うまい!」
お客は店主に言うと店主は微笑んだ。
「魔法使いですので。」
「こりゃ魔法にかかって仕事が捗るわ。」
そう言ってグラタンを頬張るお客の後にぞろぞろとお客は増えた。グラタンの匂いに誘われたOLはお菓子を誰に渡すかと騒ぎ、かぼちゃに誘われた親子はグラタンの中のかぼちゃに興奮した。
昼が過ぎても途絶えなかった客足に魔法使いも大慌てだった。
客足が遠のいた頃和歌はふと冗談交じりに店主に言った。
「トリックオアトリート…」
店主は驚いて目を丸くしたがその可愛いさに店主は和歌を撫でた。
「いたずらも嫌じゃないけど、お菓子はあるよ。」
渡された袋に入っていたのはお化けの形をしたクッキーだった。和歌は少し微笑んだ。
「ありがとう宵。」
「いいえ。あ、和歌。」
「ん?」
「トリックオアトリート!」
「…え、」
困った和歌を見て店主は言った。
「お菓子をくれないといたずらするぞ。」
「…無理。」
和歌はそそくさと二階へ駆け上がった。
店主はそれを見てクスクス笑う。
するとお店のドアが開いた。
「トリックオアトリートいらっしゃいませ。」
店主が声を出すと和歌も降りてくる。
お客は2人の画像を見て微笑んだ。
「今日は何がおススメですか?」
店主が答えようとすると和歌が行った。
「魔女のかぼちゃグラタンです。」
「いいわねそれ。」
グラタンを頼んだお客に和歌は微笑んだ。
店主ら苦笑いをして和歌に耳打ちする。
「魔女って僕男で魔法使いなんですけど…?」
「意地悪したから仕返し。」
クスクス笑った和歌にお客言った。
「カッコいい狼男ね。」
「え。」
和歌が動きを止めると店主はクスクス笑った。
ご飯屋“宵”。朝10時から開店しています。
今日は魔女似の魔法使いの店主宵と化け猫の妻和歌がお店でお待ちしております。
魔女と狼男に見えた人はご飯屋“宵”の不思議な魔法にかかっているのかも知れません。
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