洋梨シャーベットと女子力

ご飯屋“宵”は日曜日も変わらず10時からの開店。

日曜日は朝から慌ただしい主婦と子供がよく訪れる。そんな日曜日はお子様限定デザートの日。


「おまたせしました“洋梨シャーベット”です。」


10月下旬と言えど子供はアイスが大好きだと和歌が主張した事により旬が終わる洋梨でシャーベットを作る事になった。

洋梨とレモン汁と砂糖をフードプロセッサーにかけて冷凍庫へ冷やす。固まったら取り出して何度かかき混ぜまた冷やすだけ。洋梨のカットしたものを添えて出すと子供が大喜びした。


「うまーい!うまい!」

「こら、美味しいでしょ!」


お昼時に来た親子が店内で騒ぐ。

近い姪と甥がいる店主は子供を見て微笑んだ。

和歌も遠目で見ながら食器を片付ける。


「騒がしくしてすいません。」


母親が店主に向かって謝ると店主は笑った。


「いえ、いいんですよ、日曜日はお子様連れも多いですし、元気があって可愛いですから。」

「元気過ぎて困ってますよ。でもほんと、シャーベット美味しいです。」


子供からもらったシャーベットを一口食べた母親は驚いた。


「簡単なんですよ、レシピ書きましょうか?」

「やー、ほんと?!お願いー!」


急にテンションの上がった母親に店主はメモを渡す。会計を済ませて店を出る間際に母親は店主に耳打ちした。


「旦那さん、かっこいいわね!良いのゲットしたじゃない!子供きっと可愛いわよ!」

「はは…ありがとうございます。」


母親は子供を引っ張ってドアを閉めると和歌が店主に話しかけた。


「お客さんなんていってたの?」


その質問に思わず店主宵も苦笑いして答える。


「イケメンの旦那ゲットしたねって。」

「間違えられたの久しぶりだね。」

「うん、ここのところ常連さんばっかりだったからあんまり気にしてなくて。」

「まあ、イケメンって嬉しいから良いけど。」

「僕は複雑だよ…」


女性に間違われるとはと上を向いて考える店主に

少し嬉しそうな和歌が付け足した。


「常連さんは周りに言ってないみたい。」

「そうなんだ。」

「うん、この前サラリーマンのお客さんが言ってた。“男でも女でも目の保養だから”って。」

「う、う〜ん、やっぱり複雑。」


考え込む店主にまた和歌は笑った。


「いっそオネエになってみれば?」

「えぇ!?本当に言ってる?僕がオネエで和歌はいいの?!」


少し考えた和歌はコクンと頷いた。


「まあ、面白いし、宵は宵だし。」

「否定して…」


額に手を当てた宵に和歌は声を出して笑った。


「今も余り変わらないけどね。」

「うそ!?」

「本当。」


男らしくしようと足を開く店主にさらに和歌は笑った。後日焦った店主は姉に電話すると姉は普通の声で答えた。


『え、今まで妹だと思ってた。ていうかオネエとまでは行かなくてもそこらの女子より女子力高いからまあ、大丈夫じゃない?』

「大丈夫って何が…」


またさらに店主が悩み和歌が笑うのを姉は全く知る由もなかった。

ご飯屋“宵”はよく勘違いされる店主と妻の夫婦と温かいご飯でお出迎えいたします。

店主が実は男性だったと知ったら早めに周りのお客さんの誤解を解くようお願いいたします。

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