第2話

「君は、人に感動を与えられる人種だよ」

その言葉は魔法のように僕の人生を変えた。

その言葉は鎖のように僕の人生を縛った。


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僕はずっと、芸術というものとは縁遠い生き方をしてきた。


日本人としては恵まれた体格をしていたためか、手先を使う細かい作業というものが昔から苦手。


そんなだから、小学校のころの美術の成績は五段階中の一。

筆を握れば「崩し字は基本ができてからよ」と窘められ(もちろん至って普通の楷書体を書いたつもりだ)、

のみを振るえば「いたずらで机を掘るんじゃないの!」と叱られ(掘ろうとしてた木材を一突きで貫通しただけ)、

思い返せば無才のせいで、なんとも理不尽な目にあってきた。


だから、中高は小麦肌の擦り傷絶えない野球少年になり、

大学デビュー後はオシャレなインカレソフトボールサークルへ入会してと、

体育会一本で生きてきたのも、僕にとっては水が高いところから低いところへ流れるが如く、ごく自然な成り行きだった。


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放蕩男と家出少女 @yuhachi

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