少女
イヤフォンは、完全に耳を塞がないタイプのものが良い。
靴擦れを起こすサンダルを履いて、アスファルトを踏む。買いに行くアイスは何でも良かった。僕を閉じ込むように耳へとそれを押し込めば、目の前の全ては輪郭を無くしてしまう。通り過ぎる排気ガスも、名も知らぬ虫の音も、頬を撫でる音無風も、全てが薄皮を一枚隔てたようにぼやける。
そのとき僕はようやく、どこまでも少女になれるのだ! 訳も分からずステップを踏む。ロックンロールはかけてもかけなくてもいい。縁石に登り、くるくる踊る。踊る。
そんな行儀の悪い聞き手のことなんか無視して、街は淡々と夜を語る。
それがいっとう嬉しくて、恋しくて、僕はそのうち踵とイヤフォンだけになる。
優しい声だけが、響いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます