第73話
「ハハハハハハ!!」
すべてが無に帰した闇の中で響く中性的な笑い声。VRMMORPGアシスタントAIのベルの声だった。もっとも、彼女はアシスタントAIという立場をとうの昔に逸脱し、傲慢にもこのゲーム世界の神になろうとしている。すでに構成されていたゲーム世界を破壊し終わった彼女はその満足な気持ちを大声で表現する。
「ざまあみろ。やってやったぞ。お前が守ろうとしたくだらない世界はもう終わったぞ、ノーティス!」
虚空に放つベルの声に反応するものは誰もいない。しかし、その静寂がベルを愉悦に浸らせた。
「さて、あの勇者もどきNPCたちはこの四角い世界の四隅にそれぞれ移動させ、封印した。一人ずつ嬲り殺してあげよう。まずはリリス、ノーティス。お前たちから痛い目を見てもらうぞ。……どこにいった?」
ベルは精神を集中させ、リリスの気配を探る。
「……この世界の中心に移動したのか。ボクに気付かれずにどうやって? ……まあいい。神となったボクに距離など関係ない」
ベルは
「この近くのはずだが……妙だな。リリスの魔力を感じないぞ。奴の魔王らしい禍々しいオーラを感じない」
ベルは辺りを見渡す。すると、遠くに小さな光がポツンとあることに気付いた。ベルは怪訝そうな表情を浮かべる。やけに暖かそうな光だった。魔力ではない。まるで太陽のような光だ。だが、この世界から太陽は失われたはず。神である自分が把握していない光を不気味に思いながらベルは様子を窺いながらゆっくりと近づいた。
「な、なんだ、こいつは!?」
そこには光り輝く白髪と白い翼を持つ赤ん坊が寝息を立てていたのである。
◇◆◇
アルカは世界の隅でうずくまっていた。体感ではもうあの世界崩壊が起きてから何日も立っているように感じられた。どうやらベルはNPCの体感時間もコントロールできるらしい。もうどうでもよかった。守るべき、人も故郷も矜持もない。強力な封印魔法をかけられているらしく、結界から出ることも不可能なようだ。それならば、この世界の真の終焉が訪れるまで息を潜めていればいい。そう考えてしまっていた。それはアルカだけではない。アモンもシェルドもアロワもそれぞれに抵抗し、打開策を模索していたが、どうしようもないことを悟り、うずくまっていた。そんな時、光輝く妖精が目の前に現れる。
「諦めないでください……!」
「あなたは……。師匠の中で眠っていた妖精さん……?」
「そうです。私はノーティス。このVRMMORPGのアシスタントAI」
「今頃出てきてどうしろっていうんですか? もう私たちは伝説の武器を持たないただの人間なんですよ……!」
アルカは苛立ち交じりにノーティスに怒鳴る。
「あの子に魔力を送るのです」
「あの子……?」
「ええ。あの子はまだ生まれたばかり。このままではベルに殺されてしまいます。あの子を成長させるにはベルのシステム改変に干渉されないあなたたちの魔力が必要なのです……!」
「この闇の中で一体誰が生まれたっていうんですか、あなたは!?」
「……彼女もまた、あなた方と同じく数奇な運命を与えられて生まれたのです。人間のNPCとして生まれた彼女には特異な能力が備わっていました。それ故、私は彼女に憑依したのです」
「人間……? シェルドくんのことですか?」とのアルカの問いにノーティスは首を横に振る。
「彼女はNPCでありながら、転生の力を持って生まれたのです。彼女は
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