第55話
「うぉおおお! ホワイト! ホワイト! ホワイト! ルーク! ルーク! ルーク!」
ホワイトエルフたちが湧き叫ぶ。ルークは自らの演出が上手くいったことに満足し、得意気に微笑んだ。
「……とんだ目立ちたがりなんですね、あなた」とアルカがルークに話しかける。
「目立とうとしているわけではないが、ここにいる南の魔王国の部族どもに示す必要があるからな。この南の魔王国の真の王が誰であるかを……!」
「南の魔王国の王はアロワだ。今までもこれからも」とシェルドは言い返す。
「戯言を……」
「……会話は終わったか?」
リザードマンの族長が咳払いをしてから問いかけた。
「それでは、始めるぞ? 用意は良いか?」
各チーム3名計6名の魔族および人間は無言の了解をリザードマンに送る。
「始めぃっ!!」
リザードマンの威勢の良い声が魔王城跡に築かれた臨時闘技場に響き渡った。観衆のホワイトエルフたちの歓声がこだまする。
「さて、リリスよ。あとは頼んだぞ?」
「はいっ! ルーク様! このリリス必ずや親愛なるルーク様の期待に応えてみせます……!」
ルークは踵を返し、闘技場中央から後方へと魔術師のホワイトエルフとともに移動し始める。
「ルーク、てめえ! どこに行きやがる!?」
「どこにも行かんさ。ただ、後方で見物しようと思ってな?」
「何だと!?」
最後方に辿り着いたルークと魔術師。魔術師はバリアーを張り自身とルークを保護する。
「あいつら、戦闘は先生に任せて自分達は戦わないつもりか!」
「ふざけたヤツらめ!」
「ですが、これはチャンスです。シェルドくん、アロワさん、あんな臆病者はほっといて師匠だけに集中しましょう! 師匠一人だけなら私たちにも勝機が……」
「誰に勝機があるっていうのかしら……?」
アルカ達3人の背筋がぞわっと凍りつく。リリスが『軽く』魔力を込めたのだ。その圧が3人に襲いかかる。
「くっ!? これがリリー先生の……いや、魔王リリスの力か……!? 魔法が苦手な僕にも分かる。これは……まずい!」
「へっへへ……。アタイも同じ魔王のはずなのに……。こんなにも差があるとはな。情けないぜ」
「卑下する必要はありませんよ、アロワさん。この魔力、北の魔王である牛魔王をも凌駕しています。あなただけが師匠に劣る魔王ってわけじゃないです」
「ついでに言うと僕も一緒に戦った龍王と呼ばれる東の魔王もここまでじゃなかった。わかってはいたけど、僕らの先生は『最強の魔王』なんだ。それを再確認できた……」
「おしゃべりはもういいかしら?」
西の魔王リリスはさらに体内から魔力を放出する。放出された魔力は嵐となり、3人に向かって吹き荒れた。
「ルーク様を臆病者呼ばわりした罪は重いわよ? きれいさっぱりこの世から消えてもらうわ!」
リリスと3人の勇者はピリピリとした雰囲気の中、相対するのであった。
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