第53話
◇◆◇
「ふーん。つまり、
集落のテントの中、腕組みするアロワの要約にアルカは「そうです!」と元気よく答える。
「なるほど。変にややこしい解呪方法よりよっぽどわかりやすいな。……お前らは脳筋とバカにするかもしれないが……アタイ向きのいい作戦だ」
アロワはにやりと口角を上げる。
「……先生の頭をぶん殴るというのは少々心が痛みますが……、緊急事態ですしね。先生も許してくれると思います」
「……二人とも長旅で疲れているだろう。少しだけ休むといい。といってもすぐ出発するけどな。明日には旧南の魔王城に着いてねえといけない」
「ええ!」とアルカとシェルドの二人はアロワに答える。
小休憩を取った北と東の勇者は、南の勇者とともに、旧南の魔王城に向けて集落を出発しようとしていた。随行者としてアロワの側近ドグと数人の兵士がつく。正直戦力とは言えない。兵士とは名ばかりでシェルドが剣をふるい、アルカが魔法を使えば紙人形のように吹き飛んでしまうだろう。仮にも南の魔王アロワを従者でもなんでもない勇者二人だけと決闘に行かせるわけにはいかないという形だけの随行である。
「残った者たちは留守を頼むぞ。……と言っても何者かが攻撃を仕掛けてくれば迷わず逃げなさい。生き残ることを優先させるのだぞ? アロワ様の留守を狙ってホワイトエルフたちが攻めてくるやもしれんからな」
アロワの側近ドグは出発を見送る集落の若い衆に告げる。見送りには老若男女問わず、全ての魔族たちが集まっていた。もちろん、シェルドとアルカが遊んであげたホワイトエルフと人間のハーフの女の子も。
「お姉ちゃんたち……、がんばってね……!」
ハーフの女の子を含めた子供たちもアロワたちにエールを送る。アルカとシェルドが一緒に遊んであげた子供たちである。
「ええ、がんばります。ホワイトエルフを倒して、南の魔王国を平和な場所にしてあげます!」とアルカは子供たちと約束した。
「……まさか、魔族から応援を受けるなんて思いもしませんでしたね。ちょっと前の僕なら考えられないことです」
「……でもきっと間違いなんかじゃありません。師匠の言うとおり、魔族と人間も分かりあえるのかもしれません」
道中、アルカとシェルドが話しているのを横耳で聞いていたアロワはフッと小さく笑うのだった。
「……お前らわかってるよな? ガキどもと約束した以上は絶対守らないといけねえ。……純王国ホワイト、絶対ぶっ倒すぞ!」
「言われるまでもないさ……!」
「……それじゃ、行くぞ!」
アロワは高スピードで走りだした。随行者を含むアルカ達も後に続く。決戦の地、旧南の魔王城へ一同は向かうのだった。
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