第45話

 アルカ、シェルド、アロワの3人はアロワの故郷であるダークエルフの集落の奥に位置する洞窟を訪れていた。


「結構大きな洞窟ですね……。わたしの村にも洞窟はいくつかありましたが、ここまで大きなものは見たことがありません」

「ここなら、災害に遭う確率も低いからな。大事なもんを置いておくにはうってつけってわけさ」

「それで僕らに見せたい『ガラスの石板』ってのはどこにあるんだ?」

「もうちょい先さ」


 アロワは二人を案内するため先頭にたち、先導する。しばらく歩くと、洞窟の中に似つかわしくない扉が現れる。


「洞窟の中にわざわざこんなものを造るなんて……」

「なんせ、アタイたちダークエルフが代々受け継いできた大事なもんだからな。厳重に守るってもんだ。集落を引っ越すときには慎重に運んだぜ。じいちゃんは『よくわからないもん』なんて言ってたが、あれは間違いなくお宝だ」


 アロワはアルカとシェルドに説明をしながら扉の鍵を開け、部屋の中に入る。二人もアロワに続くように扉をくぐった。部屋の中には綺麗な装飾をされた箱が設置されている。


「ザ・お宝って感じですね。アロワ、この中にその『ガラスの石板』が?」

「ああ。今開ける」


 アロワは鍵を取り出すと宝箱の鍵穴に差し込み蓋を開ける。アルカとシェルドは開いた宝箱の中を覗き見た。そこには、まさにガラスの石板としか言い様のない透明な長方形の板が収められていた。


「ガラスの石板というか、ただのガラス板ですね。アロワのおじいさんの言うとおり、なんでこんなものをダークエルフが大事にしているのかわかりません。あと、わざわざガラスの石板なんて言い方しなくてもガラス板って言えばいいんじゃないですか?」

「結構手厳しいことを言うなよ、赤髪……。ま、ガラスが発明される前からあるものらしいからな。じいちゃんたちからすれば、『ガラスの石板』って表現で間違いないさ。『ガラスの石板』と呼ばれる前は『神の造った板』とか『神の石板』とか『神器』とか言われてたらしい」

「……で、わざわざ僕らに見せようとしたのはなんでなんだ? なにか理由があるんだろう?」


 シェルドは腕組みをして、アロワに急かすように質問する。アロワはにやりと笑うと『ガラスの石板』を取り出した。


「……この石板には、じいちゃんや他のダークエルフが知らない秘密があるんだ。……正確には知ることができない秘密が……」

「秘密……。なんですかそれは?」

「これから見せてやるよ。……お前らなら……、選ばれた勇者なら多分見えるだろうからな」

「僕たちなら見える?」


 アロワはシェルドの問いに答えるように石板に魔力を込め始める。すると石板から光が放たれ……、その光の中から半透明の羽根が生えた妖精が現れた。


「……おひさしぶりですね。アロワ様……。三十年ぶり、くらいですか?」

「ああ、久しぶりだな。ベル」

「ど、どうなってるんですか、これは!? 急に小さな人が石板の中から……!?」


 アルカとシェルドは見たことのない現象を眼前にして目を丸くするのだった。

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