第41話
アルカとシェルドはルークと共に去って行くリリスを茫然と見送っていた。リリスが魔族で魔王であること、自分達のことを忘れてしまったこと、余りにも多くのことが起きすぎて頭の中が整理しきれずにいた。
「ちっくしょうが……!」
「どこに行くんだ!? アロワ!」
歩み始めるアロワをシェルドが呼び止める。
「決まってんだろ! 旧南の魔王城に向かう準備をするんだ。こっから移動するだけでも1日はかかるからな。急いで行動を始めなきゃならねえ。お前たちも行くだろ!?」
「ぼ、僕たちは……」とシェルドは言いかけながらアルカと目を合わせる。アルカもシェルドと同じく曇った表情を見せていた。
アルカとシェルドは人間だ。魔族は敵だと幼いころから言い聞かせられてきたし、本能で敵だと信じている。リリスはその魔族の長である魔王だったのだ。アルカとシェルドは迷っていた。魔王であるリリスを救いに行くべきなのかどうか、と。理性で考えれば、アルカとシェルドはリリスと師弟になり、強くしてもらった恩がある。助けに行くのが道理だろう。しかし、リリスが魔族であることを知った今、二人の人間としての本能がリリスを救いに行かないよう働きかけていた。二人の優柔不断な対応にアロワはイライラを募らせる。
「やっぱり、てめえら人間は最低だ。魔族だと知った途端に、例え師匠であっても見捨てるんだからな!」
アルカとシェルドはアロワの言葉に言い返すことができなかった。
「まあいいさ。てめえらには最初から期待なんてしてねえさ。姉御はアタイ一人でも救い出して見せる」
「ま、待って下さい!」
その場を
「なんだよ?」
「アロワさん、あなた、さっきの戦闘から師匠のことを『姉御』と呼んでましたよね? なんでそんな呼び方を……? それにあなたが師匠のことを尊敬しているとホワイトエルフの王は話していました。それが関係してるんですか?」
「……どうでもいいことに質問するんだな。……あの人は私にとって恩人なんだ。もっともあの人は覚えてなんかいないだろうけどな。私もあの人の顔をおぼろげにしか覚えてなかったし。でも覚えてもらえていないからこそアタイはあの人を尊敬してるんだ。百年ぶりの再会でこんな事態になるなんてな。最悪だぜ」
「百年ぶり……百年前に何があったんですか!?」
「大したことじゃねえよ。本当に大したことじゃねえ。
アロワは思想にふけるように目を閉じた。
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