第40話
「ど、どうしてしまったんですか!? 師匠!! ……ルーク! あなた師匠に何をしたんですか!?」
「さあ? なにをしたんだろうな?」
「とぼけないで下さい! 師匠を早く元に戻してください!」
「無理だ……! アレは……
アロワがルークに代わって、アルカにリリスがかけられてしまった魔法について説明する。
「ほう。さすがに貴様は知っていたか。さすがは南の魔王だな。多少は知識もあるというわけか……。そう、
「せ、先生……」
シェルドはリリスの様子を伺う。リリスは相変わらず顔を紅潮させ、だらしない笑顔を浮かべながら、ルークのことを見つめていた。
「
「なあに。一族を人質にとって助けてもらいたくば、術を発動させろと命令しただけのことだ。簡単だろう?」
アロワの問いかけにルークは悪びれもせず答える。
「外道が……!」
アロワは下唇を噛み締めるようにしてルークを睨みつける。対してルークは余裕の笑みを浮かべていた。リリスというある意味最強の兵器をルークはその手にしたからである……。
「オレは知っているぞ、アロワ。貴様がこの西の魔王リリスを尊敬していることをな……。西の魔王を救いたくば……十日後、元南の魔王城に来るが良い。そこで真の南の魔王が誰か決めようではないか……。ルールはそうだな……。3対3のバトルロワイヤル方式にしよう……。リーダーである貴様かオレが降参するか、気絶するか……死ぬか。それで決着しようじゃないか?」
「勝手に決めんじゃねえよ!」
「そうか、ならば、リリスには自ら死んでもらうことにしよう。今の奴にとってオレの命令は絶対だ。『自害せよ』と命じれば喜んで死ぬだろうな……!」
「くっ……!?」
「アロワ、貴様に選択肢はない。西の魔王を失いたくなければ、素直に戦いに応じ、全ての部族の前で無様に純王国ホワイトに滅ぼされろ。くくっ。十日後が楽しみだな……! ついて来い、リリス!」
「わかりました。ルーク様……」
リリスはルークの元に駆けより、ルークとまるで恋人のように腕を組む……。
「…………姉御……」
アロワは茫然とした表情で、リリスを見る。そこにはアロワの尊敬する西の魔王の姿はなかった。術によってルークに媚びるように身を寄せるリリスを見て、アロワはルークに対する怒りを増幅させる。
「行かせません……! リリース・ファイア!」
アルカが全力の炎魔法を繰り出す……。巨大な火の球はルーク達、純王国ホワイトの軍勢全てを呑み込まんとする。ホワイトの軍勢は逃げ出そうとするが、到底間に合いそうもない。
「ば、馬鹿! 姉御まで殺す気か!?」とアロワが叫ぶが……、その心配は最悪の形で杞憂に終わる……。
「お穣ちゃん……、凄い魔法を使えるのね……」
アルカの巨大な火の玉は完全なる防御魔法で無効化される。ホワイトの軍勢を囲むように薄紫色に着色された半透明で半球状のバリアが一瞬で施されていたのだ。
「でも、ルーク様に手を出すなんて、おいたが過ぎたわね……」
アルカの攻撃をいとも容易く受け止めたのは、リリスだった……。リリスは間髪入れずに、アルカに向けて魔法を放つ。直径5センチ程のビームが一直線にアルカを襲う……!
「アルカさん! 僕の後ろに!」
シェルドがアルカの前に立ち、ビームをドラゴンの盾で受け止める。盾に当たったビームは四方八方に分散した。
「私の攻撃を完全に防ぐなんて……、そこの僕も凄いのね……」とリリスは歪んだ笑みを見せる。
「せ、先生……、アルカさんと僕のことを忘れちゃったんですか!?」
「……あなたたちと私は知り合いなの? ……覚えてないわ。でも、何も問題はない。私の頭の中にはルーク様だけがあればそれでいいもの……」
そう言うと、リリスは頭に被った帽子に手をかけて取ると、胸元に押し付ける。リリスの頭部が露わになり、彼女の魔族としてのシンボルである角が姿を現す。
「そ、そんな……、師匠の頭に角が……。本当に魔族だったの……?」
アルカとシェルドはリリスが魔族である現実に直面させられ立ち尽くす……。
「リリス……。この場で戦闘を起こす必要はない……。奴らには十日後の試合で南の魔王国全部族の前で無様に敗れてもらわなければならんのだからな……。……アロワ、各部族の長にはオレから連絡を入れておいてやる。……それじゃあな」
ルークとリリス、そして純王国ホワイトの軍勢は集落から引き揚げていった……。
「くっそぉおおおおおおおおお!」
アロワはルークの思惑通りにことを運ばせてしまった自分の力の不甲斐なさに怒り、地面を思い切り殴りつける。その衝撃音は集落を虚しく駆け廻るのであった。
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