第30話

「それじゃ、店主さん、お世話になりました!」


 リリスは笑顔で店主のおばあさんに挨拶する。アルカとシェルドの二人は死んだ魚の目をしたような顔で挨拶していた……。


「さ、行くわよ! 絶対に今日中に南の都に到着するわよ! しゅっぱーつ!」


 リリスは元気な声を出して意気揚々と猛スピードで走りだす……。おばあさんは目をまるくする……。


「シェルドくん……。もう覚悟するしかありません……。頑張りましょう……」

「はい、アルカさん……」


 二人もリリスの後を追って猛スピードで走りだした……。おばあさんは『嘘じゃないかもしれないねぇ』と呟いた……。

 南の都に向かって走る三人……。リリスは昨日と同じく、二人を待ちながら、走る……。日が暮れ夜になったが、走りを止めることはなく、動き続けた……。


「アルカさん……。先生、本当に南の都に到着するまで、休憩なしで行くつもりですね……。やっぱり、怒ってるんですかね?」

「……仕方ありません……。最初にずるいことを考えたのは私達です……。今、私達にできるのはやり遂げることです……!」


 二人は肩を貸し合って走り続ける……夜も明け、朝日が昇る頃、二人はようやく、南の都に辿り着いた……。そこでは、先に到着していたリリスがお茶とお菓子を用意して待っていた……。


「よくがんばったわね……! さすがは私のレッスン受講者第一号と第二号ね!」


 アルカは目に涙を浮かべる……。


「ど、どうしたのアルカちゃん!?」

「うっ、うっ。師匠怒ってないんですか?」

「な、なんで怒るのよ?」

「だって、私達がずるしようと考えてたから……」

「昨日の朝のこと言ってるの!? あの程度で本気で怒るわけないじゃない! それで泣いてるの!?」

「はい……。お茶とお菓子用意してくれてるなんて思わなくて……」

「はぁああ……。あなたたち、本当に純粋なのね……。大丈夫よ。そんなことで怒ったりしないわよ……」


 リリスは二人の頭をなでる……。長距離の移動で精神的に参っていたのも泣きだした原因だろうとリリスは思った……


「謝らなきゃいけないのは私の方よ……。あなたたちみたいな純粋な子に嘘吐いてるんだから……」

「嘘?」

「ええ……。時が来たら話すわ……。もう少しだけ時間をちょうだい……。全くこの純粋さをアーくんも見習ってほしいもんだわ……! さ、もう宿はとってるから、明日の朝までゆっくり休みなさい! 明日は、良い男を探しに行くわよ……!」


 アルカとシェルドは、宿に着くなり、ベッドに横たわった……。リリスもすぐに横になる。さすがのリリスも徹夜は応えたらしい……。三人は仲良く、丸一日眠り込むのであった。

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