第31話
「うーん……。やっぱり東の都ほどの派手さはないわねえ……」
リリスはぽつりと独り言をこぼした……。リリスたち三人は南の都を観光していた……。もちろん、南の魔王国の情報収集も含めてである。南の都は、炭鉱や希少金属の鉱山があることにより、出稼ぎ者が集まって来たことで発展してきた町である。やはり、都会度は東の都より一段落ちる……。
「師匠……、向こうの役所に聞いて来ましたが……、やはり、サラダ国も純王国ホワイトのことも知らないようです……。魔王国内部のこともほとんどわからないみたいです……」
「ええ……。南の都って南の魔王国から出てきた魔族の被害にあってるんでしょ? そんな情報収集能力で大丈夫なのかしら……」
「まあ、一般の人には話さないって場合もありますから……」
シェルドが口を挟む……。
「僕はあっちのお食事処で聞いてみましたが……、やっぱりアルカさんと同じですね……。だれもサラダやホワイトといった国は聞いたこともないらしいです……」
「はあ、まだ調査し始めてちょっとだけど……、良い情報は入らなそうねえ……」
「師匠の方はどうですか?」
「うーん、駄目ねえ……。確かに、ワイルドな殿方は多いんだけど……、やっぱり私は王子様風イケメンの方が好みみたいだわ……」
「先生……、予想通りではあるんですが……、少しは魔王討伐関係のこともしてもらえませんか?」
シェルドはリリスに苦言を呈する……。リリスは情報収集を二人に任せ、自分はイケメン探しに躍起になっていた……。しかし、東の都にいるようなスマートなイケメンは南の都では見かけない……。やはり鉱山労働者が多く、ガタイの良い筋肉モリモリの男たちばかりだ……。しかし、リリスの好みではなかったらしい……。
「師匠は清潔感のあるタイプが良いんですね……?」
「こら、アルカちゃん、そんなこと言ったら、ここの男の人たちが清潔感ないみたいでしょ……! でもそうね……。もっとこう、シュッてしてる方が良いわね……」
そんなことを話していると、炭鉱夫とおぼしき男たち三人が、リリスに話しかけてきた……。
「よう、そこの姉ちゃん! オレ達、今日もう仕事上がりでよう、これから飲みに行こうと思ってんだ。一緒にどうだい?」
「ごめんなさい……。今日はもう先客がいるの……。また誘っていただけるかしら……?」
「なんだよ。男がいるのかよぉ。姉ちゃんみたいな美人と飯食えるなんて、その男うらやましいぜ。そんじゃまたな!」
リリスは作り笑顔で手を振る……。
「これで五組み目ね……」
「そんなに声をかけられたんですか!? やっぱり、師匠はモテますねぇ……。今の男の人は何が駄目なんです?」
「やっぱり、もっとこう、『お穣さん、おひとりでどうされました? 今日は風が冷たいですね……。一緒にディナーに行って心を温めあいませんか?』みたいな感じが良いのよ! 姉ちゃん、とか、飲み行こうぜ、みたいなのはイヤなのよ!」
「それをここの男の人たちに求めるのは難しいと思いますけど……」
リリスがわがままを言っていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた……。
「アルカちゃん、聞こえるわね?」
「はい!」
「先生、アルカさん何か聞こえるんですか?」
聴覚強化ができないシェルドはリリスとアルカに状況を聞く……。
「はっきりとは分かりませんが、誰かが盗みを働いたようです……」
「それは許せませんね……。先生、アルカさん、さっそく懲らしめに行きましょう!」
リリスたち三人は声のする方に向かう……そこにはダークエルフの男の子がガタイの良い男に捕まえられていた……。
「お兄さん……。その子が何かしたのかしら?」
「ん? ああ……。オレが売ってる果物をこの魔物のガキがかっぱらいやがったんで、急いで追いかけてとっ捕まえたんだ!」
「……なんでそんなことをしたの……?」
ダークエルフの男の子は一言もしゃべらずに俯く……。この魔物め……。ぶっ殺してやる……。ガタイの良い男が男の子を殴ろうとする。リリスが止めようとする前に大きな声が聞こえた……。
「すまねえ……! そいつが盗みをやったのか……?」
声をする方を振り向くと……、そこには、ダークエルフの少女が立っていた……。
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