第14話

 リリスは白目を剥いてしまったシェルドに素早く回復魔法をかける……。シェルドはすぐに目を覚まし、リリスに問いかけた。


「どうなったんですか!? 上手くいったんですか!?」

「い、いえ……、失敗しちゃったわ……」

「そ、そうですか……。なら、もう一回ですね!」


 シェルドの言葉にアルカは「ええ!?」と大きな声を上げて驚く。


「シェルドくん、正気ですか!? 失敗したんですよ!? 次も失敗しちゃうかもしれないんですよ!?」

「しかし、成功しないと強くなれないんですよね? ならやるしかない!」

「……痛かったりしなかったんですか……?」

「いえ、痛くはなかったです……。むしろ、何かすごい快感が押し寄せてきました

……」


 シェルドは頬を赤らめながら、答える。


「それ、絶対、臨死体験かなんかじゃないですか!? 危ない脳内物質が出ちゃってますよ!」


 アルカはシェルドを止めようとするが、効果はなさそうだった。


「……どうやら、シェルドくんは私の能力の凄さを理解してくれているみたいね……。さあ、やり直しを始めるわよ!」

「はい、お願いします! 先生!」


 アルカはリリスとシェルドが意気投合しているのを見て、信じられないといった表情をする。


「さあ、行くわよ! シェルドくん!」


 リリスは再びシェルドの頭に魔力を流し込む……。


「うおおおおおおおお!」


 シェルドは気合を入れて大声を出す……が、再び白目を剥いて倒れてしまった……。


「はっ!? また……失敗しちゃった……」

「……おい!」


 アルカは敬語を忘れてリリスの独り言に突っ込みを入れる……。リリスに回復魔法をかけられたシェルドは意識を取り戻すと、すぐに喋り始めた……。


「はあ、はあ、はあ……。もう少しだった。もう少しで、別の世界の扉を開けられるはずだ……!」

「シェルドくん……。それは実力の壁の扉ではなく、冥界への扉だと思いますよ……」

「もう少しだったんだ……! 先生、もう一回お願いします……!」

「……話を聞いてくれてますか?」


 シェルドの耳にアルカからの忠告の声が届くことはなかった。

 再び、リリスとシェルドは魔力回路を脳内に造ろうとする……。三度目の正直……、ついに成功したらしい……。シェルドは意識を失うことなく、自分の体に変化がないか目視で確認する……。


「成功したわよ……! 気分はどうかしら、シェルドくん!」

「こ、これが成功ですか……。思ったより、気持良い感じがしませんでしたね。新しい扉を開いた感じはしませんでした……」

「だから、それは臨死体験に違いないんですよ! 絶対に開けたらいけない扉ですよ!」


 アルカは大声を出して、シェルドに突っ込む……。


「ふふん」


 リリスが得意気に笑みを浮かべながらアルカに視線を向ける……。


「どうかしら? アルカちゃん……。これが魔力回路の増設よ。楽ちんでしょ? どうあなたも……」

「絶対、私はやりませんからね!?」


 アルカは断固拒否する姿勢をリリスに突きつけた……。



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