第9話 ジョーク製品

 立山の家に戻ると立山は若干興奮気味で僕にいう。

「おい、お前が今持っているタイムマシンだがな、ちゃんとした車メーカの製品だぞ。あまり話題にはならなかったから気づかなかったが、どうもジョークとしてタイムマシンを作ったということらしい。過去の記事を見るとほら。」


そこには映画リバーストゥーヒストリーのタイムマシン復刻プロジェクトと書いてある。そして僕が今所持しているタイムマシンと寸分たがわぬ写真が記事に貼られていた。


「なるほど、ちゃんとしたメーカーが作っていたのか、歴史自動車という日本の中規模の車メーカか。聞いたことぐらいはあるな。ここから米倉さんは手紙を送られていたわけか。


「そのタイムマシンを名乗る車は懸賞の景品に使われたらしい、トップ賞1名様とある。そして、すぐにどうもオークションサイトに出品されたらしい。」


なんということだろうか!まさか落札した人も本当のタイムマシンであるとは夢にも思わなかっただろう。


「考えがあるのだが、そのメーカの担当者に直接接触してみたらどうだ?お前のタイムマシンの説明書にご丁寧にサポート用の電話番号まであるぞ?電話したら何かわかるかもしれない。」


僕はしばらく考えて、


「やぶ蛇にならないか?その自動車会社、歴史自動車の社員は当然、これが本当にタイムマシンであることを知っていると思うんだ。どういう意図でこれを懸賞品にしたのかはわからないけど、殺しにくるのはその会社の手の人間かもしれないんだぜ?」


あんなにタイムマシンを壊されるのを嫌がっているんだ、ただのジョーク製品にしてはやりすぎだと思う。


「廃棄したいのですけど、損害賠償の契約は冗談ですよね?って軽く聞いてみたらどうだ?カマをかけて見るわけだ。その反応次第でどうすればいいかわかりそうだ。

本気で嫌がれば、相手はジョークでないと知っていることぐらいは推定できそうだ。どうだろう?」


なるほど一理あるな。

というわけで僕は歴史自動車のタイムマシンサポート係に電話をかけて見ることにした。「タイムマシンが邪魔なので廃車にしたいのですがよろしいでしょうか?損害賠償の件は冗談ですよね?」という内容でかける予定である。はたしてどんな反応が返ってくるのだろうか?


僕の予想では柳に風とジョークで返され、なんの手がかりも結局得られないのではないか、と考えていたのだが。




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