第10話 サポート
次の日の朝、いつものように軽く株式相場のチェックを終えた後、僕は早速歴史自動車のタイムマシン・サポート係に電話することにした。
「リーン、リーン、ガチャ……。歴史自動車タイムマシンサポート係です。オペレータにおつなぎしますのでしばらくお待ちください。」
しばらく、電話を待っていると
「初めまして弊社のタイムマシンをいつもご利用いただきありがとうございます!」
と女性の声。
「あの、お聞きしたいのですが、ちょっと置く場所に困っているので、タイムマシンを廃車にするかそちらで引き取って頂きたいのですが?」
と予定通り聞いて見る。
「タイムマシンに何か不具合でもありますか?上司と代わりますので。少々お待ちください……。」
とまた待たされる。1分ほど待っただろうか。
「もしもし、廃車とか返却とか困るのですよ。そのままにしていただけませんか?あれは弊社のマーケティングの施策として行なっているタイムマシンプロジェクトの車でして、宣伝等兼ねているわけです。だいたい、受け取るときマーケティング協力費用として1億円お渡ししていますよね?それは返却していただけますか?その他、こちらの損害も請求させて頂きますので。」
と心底呆れたという口調で男性は続ける。
「ウェブで懸賞申し込む時、この件は同意していただいているという条件ですので、ご理解お願いいたしますよ。こちらの広告宣伝への影響理解していますか?本当に困るなぁ。……。どうしても廃車にしたいというのであれば、相談にはのらせて頂きますが、一度弊社までお伺いしてもらうことって可能ですか?私、宣伝企画部長の柳川と申します。」
とまくし立てる男。
「申し訳ないですが、実は私、歴史自動車さんから1億円を受け取ったことはないのですよ、その車は譲ってもらったもので。」と言ったがすぐに、
「なんですって!!困るなぁ、あーーオークションで落札した人からさらに譲り受けたってこと?あの件はあれで片付いたと思ってたのに。一体誰から譲ってもらったんです?」
僕は米倉の元彼の名前を言う。
「信じられない!また契約違反か。あれほどレンタル権の譲渡は相談の上お願いしますと言っておいたのに!それじゃぁ、おたくには何も言えないね。ではタイムマシンを弊社まで運転してきてもらえます?その後、本来の契約者に引き渡しますので。それができないのであれば、損害賠償に応じてもらいます。いいですね?」
叩きこむように男は凄んでみせる。
「損害賠償っていくらですか?」
もう払って廃車にしようと思い持ちかけると。
「まさか、おたく、そこまでうちに嫌がらせするの?損害賠償金払ってもらえばいいってわけじゃないんですよ?困ったなぁ。とにかく一度話しましょう。こちらから伺いますから、そちらの近場でいいので会いましょう。廃車にはくれぐれもしないでくださいね。いいですか?お願いしますよ?」
男は強引に会う約束を取り付ける。
なんか成り行きで歴史自動車の宣伝部長と会うことになってしまった。
日時は奇しくも僕が死ぬ予定の木曜日の昼。駅の近くの喫茶店。
ひょっとしたら僕は歴史自動車の刺客に殺されたんだろうか?
その前に365億円を集めて1年前に戻るべきなんだろうか?
それとも、とりあえずの時間的猶予を得るために半年でも過去に戻った方がいいのだろうか?
立山と作戦会議をすることにしよう。
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