第6話 他愛のない嘘

「おい、ところでお前今嘘ついただろ?わかるんだぜ」

と立山は言う。

「櫻井はそのセールスレディーに惚れたんだろ。不気味な話をしているのになんか懐かしいような目をしているからな。それにお前の嘘をつく時の癖、把握してるからな。大方1億円を恵んでやったんだろ?違うか?」

全く……。鋭いやつだ。

「それでまた彼女と会いたいから、1年前か。おいおい、自分が命狙われているのわかっているのか?第一その女は可能性は低いと信じたいがお前を殺した相手かもしれないのだぞ。」

立山は呆れている。


「……。名前ちゃんと覚えてればなぁ。」

我ながら何を言っているんだ。頭にはしっかり彼女の名前が刻み込まれているのに。


「あー馬鹿馬鹿しい。彼女に会うために365億を稼ぐってわけか?真剣になった俺は……。嬉しいぞ。やっとまともな恋をしようって言うんだな。お金にしか興味がなかったお前がだ。」

ニヤニヤ笑う立山。


「命狙われているのにコイバナはないだろ。立山。」

照れ隠しに軽く非難してみる僕。


「言っておくがな、お前はお金だけを追い続けろ、途中下車するなって言ったがな。俺はとっくに降りているぞ。その列車。まぁ、金が大事なのは同感だがな。どうも投資家のお前は人と会うことが極度に少ない。多分、その性でお前がその列車を降りることはもうないかなと思っていたところだよ。いやーめでたい。」

立山は続ける。


「しかし、そんな回りくどいことしなくても、今会いに行けよ!彼女に。彼女生きているんだろ……。そうか、死んだのか。違うか?」


「いや、生きているよ彼女。ただ、なんと言うか会いに行くのが、その億劫でな。」

そう僕は彼女に死ぬほど会いたかった。でもできれば自然な形で会いたかったんだ。僕は彼女の嫌っている車の持ち主で、彼女は僕に会いたくないに違いないから。


「あ、そうか、そう言うことか。」

立山も気づく。

「彼女にしていれば、車のことを忘れたいわけで、会ってくれるわけはないわな。」


そう言うことなのだ。命も危険だし、早くタイムマシンで過去に戻りたい。


「だがな、お前の思い過ごしかもしれん。取り越し苦労ということもある。1億円をあげて車を引き取って、お前はまだ生きている。その、会ってみたらどうだ。情報も欲しいしな。聞きづらいかもしれないが。」

立山は僕の背中を叩いて言う。

「そう言う引っ込み思案のところが、お前らしさだな。ま、任せとけよ。金に関してはお前の方が確かに上だが、世間慣れしていると言う意味では俺の方が1日の長があるだろ。ずっとPCの前に座っているわけじゃないからな、俺は。」


そうして立山は彼女とどう会うか?ああでもない、こーでもないと計画を練りはじめた。僕たちは自分たちの命の危ないのも忘れ、その日は楽しく「初デート」の計画を練った。きっと楽しいデートになると信じ、それを祈りながら。


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