第115話皆して地面を舐めた。ゲストも参加。

「いや、ぶっちゃけ助かったぜ。ガチで出られなくなったかと思ってたし」


 シュウは特に気にした様子も無く、二言目にはそう言ってくれた。

 まあ、やった事と言えば隠れて目の前にアンデットの骨置いただけだしな。

 必要なかった様なのでレラに返せと言ったらめっちゃ叩かれたが……


「なんで出口に繋がる唯一の道があんな脆い作りなんだよ!

 魔法一発で崩れるなんて有り得ないよ!」

「知るか! 俺がここを出る為に作っただけなんだよ。

 そもそもがここの出入りの為に作ったわけじゃないんだっての」


 しかも勝手に使って勝手に壊したのに文句言われても困る。


「あー、ってことはカミノも来たはいいけどここから出られなくなった口か?」

「まあな。俺の場合『十王の森の入り口は此処らへんだろう』と掘ってたら地面が崩れて此処に落っこちたんだけどな」


 あん時は焦ったな。

 洞窟の中で穴掘ってたらいきなり光に包まれて空中ダイプだもん。


 なんて感慨に耽っていたら、ずっと睨んでいたユウキが前に出てきた。


「てかあんた人にいきなり『音消し』掛けるってどういう事よ!!」

「あ、あれ? なんでユウキがここに居るんだ?」


 絶対に許さないといった顔で俺を睨み付けて居るが、シュウに声を掛けられてチラチラとどっちに対応しようか迷っている様子。


「くんなって言っても粘着して付いて来るんだよ。どうにかしてくれないか?」

「き、聞きなさいよ!! ってあんたいいって言ったじゃない! 嘘つきっ!」

「何度も何度もしつこいから仕方なくな?」

「うそつきぃ!!」


 猿みたいにキーキー言う彼女を放置して二人に町で起きて入ることを説明してこの町を離れる事を勧めた。 


「マジで即移動した方がいいぞ? 多分、一緒に居たら戦闘に巻き込まれるからな」


 そんな事になっているとは思っても見なかった様で、レラは目をぱちくりとさせると深く考え込んだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれないかな? 全世界に宣戦布告?

 それって帝国にも話し回ってることなの?」


 ああ、妖精国から話が回っているって言ってたなと軽い感じに伝えてみれば、なにやら呆れ顔のレラ。

 ……こいつのこの顔はら立つんだよなぁ。

 シュウの手前叩けないし、余計厄介な存在になったな。


「はぁ……なんでディア連れて来ないのさ。

 何も考えてないんだから……まったく、僕が参加するしかなさそうだね」


「いやいや、お前何言ってんの避難しろよ」と声を掛けてみたが、レラは「わかってないなぁ。いいかい?」と説明を始めた。


「キミはもう全世界に勇者だって認定されているんだよ。

 これはもう、世界の大事として後世に残るレベルの出来事なんだ。

 ここまで言えばわかるよね?

 前回勇者が全ての国の兵を率いた時と一緒……ううん、それ以上だね。

 なのに帝国から一人も参戦していないなんて許されないよ!

 これでも僕は列記とした帝国の貴族なんだよ!?」


 そんなもん知るか!

 と言いたい所だが、ディアもその立場だと考えると無関係とは言えんな。


「あー、そういう事なら俺も手を貸すぜ?」


 幸いシュウもこういってくれてるし、頼らせて貰うか。


「……あー、わかったわかった。じゃあシュウ、わりぃけど頼む」

「おう。俺もわりぃけど、取り合えず此処から出してくれ。出れるってわかってても居たくねぇ」


 何日居たのと問い掛けてみれば、三日目だそうだ。

 確かに出れない状態での三日は精神的にキツイな。


「そんなに居たのに魔物は残ってるんだな……」

「いや、ここ割とすぐ沸くぜ?

 レラの話じゃ魔素が溜まりすぎてるんだろうって事らしいが」


 あー、もう沸いているだろうで時間空けて着てたからわからんかった。

 カーチェの生まれた大図書館ダンジョンみたいな事になってるんだな。


「ふっふーん、この三日で僕も相当強くなったからね。

 大活躍して後世に語り継がせてやるんだから!!」

「じゃあ、リアに上まで送ってもらって宿で休んできなよ。

 俺たちはここ殲滅してから戻るからさ。

 二人はそれまでさっきの続きでエロい事でもしてれば?」


 と言ってもさっきはただ抱き合っていただけなのだが。

 二人のあたふたする様を見てほっこりしてからララたちと狩りをして遊んだ。


「あんた本当に今がどういう事態かわかってるの?」


 何てユウキに突かれたりもしたが……


「こっちの世界来てからこんなばっかだからな。一々姿勢を正してられねぇっての。

 逆にお前は慣れてないみたいだけど、今までどれだけ怠けてきたの?

 まあいいや。そこは責めないでやるから黙ってろよ」


 シッシとてで追い払いつつ言葉を返した。

 そんなこんなで狩りをしている合間合間で、エリーゼがララの尻尾を使ってフーちゃんの調教をしていた。

 ちっちゃいエリーゼがちっちゃいララを抱っこしている様は大変微笑ましかったが、その可愛らしい口から出る言葉の内容は、余り可愛らしいものではなかった。


「ランス様のお陰でララさんの幸せがあるんです。この毛並みもそうです。

 それはランス様が命を賭けて守ったもの。

 それを享受するには貴方もそれ相応のものをランス様に捧げるべきですわよね?」


 全くもって意味が分からない。ララの幸せはララの幸せだ。そもそも関係が無い。

 のだが……


「……は、はい。

 ですけど、私そんなに強くないし、女の子は間に合っているみたいだし……

 ああ、やっぱり更にモフモフになってる……暖かい。なんて柔らかいの……」


 と、さっきからララの尻尾をちょいちょい堪能させる事で彼女を誘惑している。


「そう、そこです!

 女性は間に合っている。それがわかっている貴方だからいいのです!」


 ちょっと良く分からないけど、別に何もさせなくていいよ?

 まあ、いいや。エリーゼの行いであれば俺に被害はないだろうしな。任せよう。


 そうこうしている間に二人を地上に送ったリアが戻って来て本格的に狩りを再開させた。


 前にやったようにリアに釣って貰い殲滅するというやり方である。

 前と違うのはパーティを組めるところ。

 二パーティー作って皆で緩く楽しんだ。


「ふむ、やはりこのパーティーというのは良いのう。

 手伝うだけで強くなれるではないか」


 と、一番働いたリアもそう言って喜んでいた事だし、いい感じに楽しめた。

 割といい空気でリアの背に乗り地上へと飛んで貰った。


「何の手伝いもしなかった怠け者もいるけどね!」


 またお前か……

 俺とかアキホが手を出したらつまらなくなるだけだろ。

 だから最初にパーティーから外して良いって言ったのに。

 なんて思っていたら、ラキが槍の柄でユウキを打っ叩いた。


「いったぁ……何すんのよ!」

「ご主人様とアキホさんは護衛してくれてた。

 私たちが遊べるように仕事してくれてたんだ。不快な事言うな」


 まあ、正確にはアキホが暴れ出さない様にと、ずっと二人でじゃれてたんだけど。

 言いように寄っては皆の楽しい空間を守っていたとも言えるかもしれんが。


「……ぜ、絶対あんた調教してるわよね?」


 かなり不利なのはわかっているはずなのに諦めないユウキ。

 俺は彼女の言葉には目もくれずアキホを対面座位で座らせたまま頭を撫でている。


「アカリちゃん、いい加減止めなさい。

 ご主人様に構って欲しいからってそんなやり方は良くないわ」

「ご、ご主人様っ!? フーちゃん!?」


 思わず俺も驚いてエリーゼに視線を向けた。

 彼女は何故かやりきった感を出しつつ深く頷いた。

 その隣には尻尾をモフられ過ぎたのかウトウトしてエリーゼに寄りかかっているララが居た。

 良く分からんが、そういう事か。とフーちゃんに声を掛ける。


「フーちゃんよ、よく見るが良い。モンテおいで」


 俺はアキホを隣に座らせてクリエイトでブラシを作ると、モンテを呼び寄せた。

 嬉々としてモンテは隣に座りなおして尻尾をこちらに差し出した。


「この強さ、この優しさだ。ここを基本とした所からの強弱は皆好みが分かれる所。

 そこからは己が修練で身に着けると良い。お主にはこれを授ける」


 そう言って適当に作ったブラシを大仰にフーちゃんに渡した。

 自分もと視線を送ってきていたペチとラキを呼び寄せてフーちゃんに練習させた。

 中々筋がいい様だ。眠りはしてないが、心地よく目を細めている。

 気を利かせてぐるりと飛び回ってくれていたリアに『ストーンウォール』のトンネルまで送ってもらった。


「ああぁぁ……もう少し、もう少しだけぇぇ……」


 幸せタイムが終わってしまったフーちゃんが寂しそうに嘆く。

 ケモナーなのかレズなのかちょっと判断がつかない所ではあるが、女の子同士のこういったふれあいは俺としても有りなのでまた場を用意するとしよう。


「次は夜寝る前にやってやってくれ。気持ち良くて眠くなっちゃうみたいだからな」

「一生付いて行きます師匠」

「うむ。他にも必殺技はある。またレクチャーしてやろう」


 宿に戻り、シュウたちを交えて話し合いをする。


「さて、もう面倒だからこのまま行こうかと思う。異論がある人ぉ」

「いいんじゃないかな?

 世界に認められていない勢力が国を乗っ取ったのなら、気を使う必要はないよ。

 ただの犯罪者だし、仮に卑怯な手で屠ろうとも批難の声は出ないからね」

「けどよぉ、そいつらつえぇんだろ……正面から行って大丈夫か?」

「ケンケンと私が先陣を切るから大丈夫。元々私達だけで行くつもりだったし。

 攻城戦、燃えるぜ!」


 ニヤリと悪い顔で親指を立てるアキホ。

「お前すげぇな」と関心した顔を向けるシュウ。それにレラが対抗して声を上げる。

 これは収集が付かなくなる奴だなと会話を切るように声を上げた。


「まあ、異論が無いなら行こうぜ。

 どうせ皆で集まるなら、全部終わらせて完全に遊びの体で居たいしな」

「おおそうだな! レベリングも終わったし、これ終わったら皆で帝国でもいかね?」

「そうだな。そう言えば帝国の屋敷忍びっ子に任せたままらしいしな……」


 と、かなり緩い感じに宿を出て、この町の代官の館へと赴く。

 ぞろぞろと歩を進めていけばとうとう目的地が見えてきた。


 取り合えず門番に話を通して貰おうと近づいていったのだが――――


「――――っ!? か、神様っ!!」

「お、お願いします、どうか、どうかお助け下さい!」


 門番の二人と目が合うなり、土下座された。


「ちょっと、ケンヤ……ここでなにしたのさ!」

「いや、ちょっとな」


 レラにジト目で見られつつも『元より国を解放させる為に来たのだから頭を下げる必要はない』と立たせて中へと案内して貰った。

 最初は『ソナー』で一発だと思っていたのだが、この国の兵士の大半が赤点になってしまっているので探すのが大変そうだと思っていたのだ。


 案内されてたどり着いたのはミィが笑い転げたあの部屋だった。


「おにいちゃん、ここ……なつかしいね」

「おう。また来ることになるとは思わなかったな」


 門番の二人がそのままその部屋まで案内してくれた。

 前もって中に話を通したりは一切していない。

 てか門番が応接間まで案内しちゃうってそれ自体が異常か。


 そんな事を考えながら中へと入っていけば、全裸で床に転がる男女が居た。

 世界征服勇者は獣人の女の子に一生懸命腰を振っている。

 俺とシュウの侵入に気がつくとビクンと震えて声を荒げた。


「だ、誰だてめぇ! なん……なんで勝手に入ってきてやがんだごらぁ!」


 シーンと静寂が辺りを包み込む。

 あ、俺が何か言わないとダメなのか。

 すげぇ気まずいんだけど……


「いや……そんなカッコで凄まれても……取り合えず服着ろよ」

「そもそもこんな所でやってんなってんですよ。どんだけ節操ないんですか……?

 飢え過ぎでしょう。うえすぎさん? ねぇ、貴方の苗字うえすぎさん?」


 皆にはちょっと待っててと声を掛けたのだが、もう既に入って来ていたアキホは気にせず言葉を続ける。


「ほら! 早くその粗末なもの隠せって言ってんですよ!

 ……聞いてんですか? ねぇうえすぎさん」


 そんな事を言いながらも興味津々な視線を送るアキホ。

 アキホが他の男の裸を見ても嫉妬心は起きないようだ。まあそうか、アキホが裸を見せた訳でもないし。

 アキホに視姦された男は表情を険しくしながらも必死にお着替えをした。


「あなた、もうちょっと男らしく出来ないんですか?

 同じ世界から来たものとして恥かしいんですけど……?

 余裕が無い。顔が卑屈。無様」


 ちょっとアキホさん。今から一応お話をするって事になってるんだから止めて。

 戦争止めに来たんだよ?

 どう見ても煽ってます。本当にありがとうございました状態だよ?


 なんてぼそぼそとアキホに注意していたら、フル装備で固めた……うえすぎ(仮)さんが姿を現した。

 と同時に、こちらに向って『フレアバースト』を放ってきた。


 おいおい、ここ室内だぞ。と呆れつつ『マジックバリア』にて『フレアバースト』を掻き消した瞬間に即『マジックバリア』を掛けなおす。


「あー、最終勧告だ。戦争すんの止めろ」

「うるせぇ!! ぶっ殺す『エクスプロージョン』」


 適当にばら撒かれたが重ねてもいない威力。さて、警告もしたし戦闘開始だな。


 と思った瞬間だった。うちの聞かん坊が限界まで重ねた『エクスプロージョン』を放った。


「ばっ、アキホお前何やってんだぁぁぁぁぁ!!」


 轟音と共に吹き荒れたもの凄い爆風に俺たち全員が吹き飛ばされる。

 いや、前もって言ってくれればどうにか出来たんだけどね?


 レラといい、アキホといい、何でお前らそんなに爆発好きなんだよぉぉぉ!!

 苛立ちをむき出しにしたままアキホの方に視線をやった。

 砂塗れになって倒れて居るアキホ。撃った本人でさえ転がっていた。

 即座に跳ね起き砂を叩き落とすと、こちらに振り返り自分の頭をコツンと叩くと舌を出した。


「てへ、失敗失敗!」


 彼女は爆発異常の勢いで俺たちのヘイトを集めた。


 いや、その前にあいつはどうなったんだ?

 アキホの奴、さり気なく通常の『エクスプロージョン』を一発入れてからの全重ねだったから、マジで終わったんじゃね?

 『ソナー』の赤点も近場には無いな。死んだな……


 と、辺りを見回してみれば、割と近い所にタカくんが転がっていた。

 彼も情報収集に当たるって聞いてるし『隠密』使って偵察していたのだろう。

 なんか途轍もなく申し訳ない気持ちに襲われた。

 そうして、視線を向けていれば、ふと彼と目が会う。

 そう言えば、まだ挨拶はした事ないんだよな。

 俺たち、地べたに寝っころがったままなんだぜ? これがファーストコンタクトとか勘弁して欲しいんだけど。

 俺たちは腕だけで少し体を起し、頭を下げあった。


「こ、こんな格好でなんですが、私は王国の所属で戦争を止める為にここに居ます。

 不用なら引きますので敵対は勘弁して頂きたい」


 彼はゆっくりとした動作で立ち上がり、埃を落としながら言った。


「あ、俺も王国の依頼で動いているんで出来れば味方という事でお願いします」


 同じく埃を叩き落としつつ言葉を交わす。と同時に嫁達は平気かなと目で追った。

 後ろを見ればエリーぜが中心となり、もう既に臨戦態勢に入っている。

 うん。問題なさそうだ。


 一安心して彼と向き合うと彼が口を開いた。


「それはありがたい。それにしても、凄まじいですね……」

「申し訳ない。もう少し考えて行動しろと言い聞かせているんだけど……」


 うん。建物、ほぼ吹き飛んだね……

 あ、一応範囲のヒール掛けておくか。あの犯られちゃってた女の子とか普通に巻き込まれてそうだし。


「おい、アキホ! お前これやるなら一声掛けろって言ってあったよな?」

「でもケンケン、これが一番安全だったのは事実でそ?

 エリーゼたちの頼みでもあったし……一人で倒しちゃってごめんね?」


 うん。反省した様子は見受けられない。少しドヤ顔ですらある。お仕置きだな。


「ええと……タカさん、後三人が何処に居るとかわかります?」

「え? あ、ええ。わかりますよ。仲間がそっちを見てくれている筈ですから。

 一人になった彼を私がやる手筈だったので二手に分かれた所でして」

「なるほど。えっと……どうします?

 流石にこのまま共闘というのも変な話ですし、残りもこっちが受け持っても構いませんけど?」

「はぁぁ? 同じ所から依頼受けてきてるなら仲間でしょ?

 共闘すれば良いじゃない! 馬鹿なの?」


 気がつけば、災厄が隣に居た。


「お前、居たの? 今挨拶の途中だから黙ってて?」

「~~~~っ!! こんな時くらい真面目にやりなさいよ!」

「すみません、私らは二人なので有難い。お気遣い、ありがたく頂きます」

「いえいえ元々その予定でしたから……

 ってすみません自己紹介すらしてませんでしたね。

 カミノ・ケンヤです。どうぞ宜しくお願いしますね」

「っ!? やはり、貴方が……私はサノ・アキラと申します。

 お噂はかねがね伺っております。こちらこそよろしく」


 まるで、リーマンの様なお互いに頭を下げ合う挨拶を交わして話が纏まった。

 てかあれ? タカさんじゃ? と思わず口に出た。

 彼はその理由をすぐさま教えてくれた。シャイニングストーンの時のキャラ名をこっちでずっと使っていたそうだ。出来ればタカと呼んで欲しいと頼まれ承諾した。

 都合が良いのでさり気なく「俺もランスロットって偽名使ってるんですよ。一緒ですねぇ」なんて言葉を返しておく。

 ランスロットなんてキャラは持っていないのだが。


 そんなこんなで皆にもタカさんを紹介して、残りの三人の居場所へと案内をして貰った。

 そこは高級住宅街。その中でも高級感溢れる建物を指差した。


「あそこの最上階に居ます。

 元は高級宿のようですが、今は乗っ取って好き勝手やっているという有様です」

「リョ。ケンケン今回も吹き飛ばすからね」

「ちょちょちょ、宿の弁償どうすんだよ! あの代官の所なら国取り返した代償みたいになるだろうけど……」

「それも国でいいでしょ。

 建物二つで戦争が止まり、国も取り返せるんだからおつりがくるよ?

 と言うか、ミラたちに頼まれてるからここは引けない。ケンケンも困るよ。

 ここでまた自分から危険に突っ込んで行ったらあいつらかなり怒ると思うし」


 ああ、なんかそんな話ししてたね。てか、呼び捨てだし、結構打ち解けたんだな?

 うん?

 人の贅肉を掴んだり、人の髪の毛で遊んだりする奴らだから遠慮は辞めた?

 あー、レベルダウンした時か。


 ふんすと鼻息を荒くしているアキホから視線を外してタカさんに問い掛けた。


「もう一人と連絡取れます? 避難して貰い次第『ソナー』便りで吹き飛ばしちゃいますけど……」

「出来ますが……その前に一応警告して来ましょうか?」


 あっ、なんかそんな話し出てたな。


「あ、貴方話しがわかるじゃない! まともね! それ私も一緒に行くわ!

 人数多いほうが説得しやすそうだし」

「構いませんが、大丈夫ですか?」


 と、視線をこちらに向けるタカさん。


「あ、最悪そいつを囮にしても問題ありませんから。

 なんてったって勇者が五人出た大会の優勝者ですし」

「ふ、ふん、やっと認めるのね! 私よりも下だって!」


 褒められたのが嬉しかったのか、囮の件に反応しないユウキ。

 まあ、常識人っぽいタカさんならそんな事しないだろうけど。


「それほど強い方なら安心です。ではご案内致します。行きましょう」

「え? あ、うん。お願い……」 


 ユウキは心細そうにフーちゃんを見つめる。だが、フーちゃんは爆風に煽られたことを理由にして必死に獣人の皆のブラッシングに性をだしていた。

 こちらには目もくれない様子。

 うん、幸せそうで何よりだ。


「なぁ、俺たち来た意味あったか?」


 シュウが余りの肩透かしにそんな事をぼやく。


「馬鹿だなぁ。ここに僕達が居る事に意味があるんだよ。

 シュウだって他人事じゃないよ? 勇者の名前は特に挙がるだろうからね。

 世界平和に貢献した勇者として国民に愛されるはずだよ」


 へぇー。俺はそういうの逆にいらないんだけど、どうやって回避すればいいの?

 ほう。名前を伏せさせればいいだけ? でも俺は無理? どういう事だよ!


「そんなの決まってるよ!!

 王国だけならまだしも妖精の国にも話し通したんでしょ!?

 それにこっちの兵士にも顔割れてるじゃないか!」

「はぁ。ランス様はもう少し武勇に胸を張ってもいいと思うのですが……」

「良いではないか、こんなあるじだから面白い。わらわはそう思っておるぞ」

「そうですね。ご主人様のそういう所、私は凄く好きですよ」


 お、なんだなんだ。好感度が上昇してんぞ!

 え? そんな事は当然? これが広まるほど皆の好感度が上がる。

 なるほど。皆の好感度が上がるか………

 ふむ、ならば仕方あるまい。

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