第14話名も知らぬ村①

 いやー昨日は笑ったわ。

 面白すぎでしょミレイちゃん。ああいう天然っ娘好きだわ。

 素直すぎて全部顔に出ちゃうところとか。

 まさかしょっぱな顔面ビチャビチャで王子様って言ってくるとは思わなかったよ。

 片言でしか喋れないし。しかも皆可愛かったなぁ、助けたからか皆がよいしょしてくれるし。アーミラちゃんあのまま頼んだらやらしてくれたんかな?

 いや、ミレイちゃんが俺の為にっぽく止めてたんだから多分ダメなんだろうな。止めておかないと後悔する事になるのだろう。それにこの状態でやるんならお店行っても余り変わらないもんな。まずはラブラブになってから。

 それにしてもこれからどうするかなぁ。


 あっ、あれ行ってみよう。魔物に襲われる村クエスト。

 うんうん。それと今回は前もって報酬を頼もう。

 でも、難しいな。ラブラブになってくれなんて言っても無理な事だしなぁ。

 えーと、ああ、使用人に一人くれ的な感じでいく? 


 いい考えじゃね?

 お屋敷に使用人、昼下がりは旦那様とメイドのイチャイチャタイム。

 よし、お屋敷を買おう。ちっちゃくて良いんだちっちゃくて。

 定義的にお屋敷ならば、村でそう言って嘘にならなければ。


 よぉし! ブロコリー商会に突撃だ。


「そうですねぇ。お屋敷といえるほどであれば、パーティ会場として使える大きさは欲しい所、そうなると……お買い上げならば金貨800枚からでしょうな。え? 借家でですか? いえ、そういった物件はありませんな」


 ぐぬぬぬ、物価がちげぇ。金貨400枚もあれば十分だと思ってた時期が俺にもありました。

 仕方が無い。ルドベントさんに泣きつくか。って、正当な取引だけど。

 この前作ったのがまだ20点くらいあるからな。お屋敷なんて余裕余裕。

 いや、待てよ。もうちょっと聞いてみよう。


「800枚からというのはやっぱり王都だからですか? 例えばアルールや、ルーフェンであればお安くなるとか?」

「それは勿論です。ただ、空いている物件が見つからない可能性は高いですけどね。ご予算はどの程度をお考えで?」

「今の所手持ちですぐ出せるのが400程度、金策に動いても……700程度でしょうか?」

「何と、素晴らしい。金貨600枚もあればルーフェンでも手に入るでしょう。400枚のままだとしたらアルールで、ただ、あそこはお屋敷自体が少ないので、運がよければ。土地も資材も余っているでしょうから建てたほうが良いかも知れません」


 おお、アルール行こう。

 あそこは良い町だ。拠点にするならあそこがいいな。

 よし、下手したら引き篭もるかも知れないから先に手を打っておこう。


「そうですか。あ、そうだ。あのお借りしている土地なのですが、先に数年分払っておく事は可能ですか?」

「ええ、勿論」

「では追加で10年分として、金貨30枚を納めさせてください」


 そうして情報を得た俺は、問題点を思い出した。


 アルールで屋敷を買って、こっち戻ってきてあの名も知らぬ村に行って、上手くクエストがあったとしてどうやって女の子連れていくん? 担ぐの?

 その村からアルールまで8時間もなんて担がれる方も辛すぎでしょ。


 何もかんがえてなかったぁ~!

 歩かせたら死んでしまう。いや、俺が死んでしまう。

 何十日掛かるんですか!

 だって今俺移動速度、車並よ? それで8時間とか走り続けるんですよ?

 時速60キロとかで走り続けて恐らくは7時間強。

 何キロあるかお分かりでしょう?


 さて、白紙に戻すか。いや、方法あるな! 

 色々間違っている気もするが。

 俺が我慢する必要はあるが。昼下がりのメイドタイムを思えばその程度我慢可能だ。

 よし、『スリープ』で眠らせて運ぶとしよう。

 楽しみになって来た。やるぞ、俺はやるぞぉぉ!

 その前に子供達の所見に行こう。


 ◆◇◆◇◆


 おお、何か畑っぽくなってきた。

 え? 掘り返してる。もう石集め終わったの?

 あ、いや、まだ土を掻き分けて石を取り除いてるのか。

 おっさんに、お疲れ様ですと、声をかけた。


「おお、数日来ないんじゃ無かったのか?」

「ええ、今から遠出予定であの子達の顔を見てから行こうかと」

「はっはっは、まるであいつらの父ちゃんだな? しかも親ばかの」


 親ばかは余計だ。まあ、親くらいに世話するつもりではいるけど。

 あの少年はどこかなっと居た居た。

 おーい、おいでおいでっと手招きするとダッシュでやってきた。


「はいっ、何でしょうか?」


 あ、そう言えば俺この子達の名前一つも知らないな。

 名前なんての? え? 何? もう一回。『ブ』? それが名前?

 不細工だからブって付けられた? そう聞いてカッチーンときた。

 はい、ブサイク代表です。ぶっころ。

 んじゃ、あれだ。お前髪が赤いしブレットな。これからそう名乗れ。カッコいい名前だろ?

 まあ、それはいいとして、話があるんだ。


「おう、しばらく、ここを離れる。その際に何かあったら嫌だからお金渡しておこうと思ってな」

「え? この前頂きましたよ?」

「あれは欲しい物に使って良い金だ。今回のはそうだなぁ、子供達の中で重い病気になったとする。そう言う時にキュアポーション買ったりとかな。後は今までした悪さで文句つけられたりした子がいた時に大銀貨包んで謝りに行ったりとかな? お前らはやり直したばかりだ。昔のつけはこういう時に来るからな?」

「え? そ、そうなんですか?」

「おう、だからお金で済むのであれば渡しとくからそれで何とかしろ。ダメなら俺が戻った時に言え。それまでは何とか生き延びろ。町を追い出されたって俺なら余裕だからな」


 うわぁ、めっちゃ青ざめちゃった。

 それでも金貨を20枚ほど握らせる俺。


「大丈夫だ。お前だけじゃない。ロドさんにも頼んでいくから」


 彼にも追加で金貨一枚。


「はっはっは、お前さんはホント払いがいいなぁ。ありがてぇありがてぇ」


 ずっとじゃないですよ。こいつらが落ち着くまでです。と言い聞かせて彼にも頼んだ。多分畑とか結構荒らしてると思うんだよねぇ。農家の皆さん怒ってない? とおっさんに尋ねる。


「怒ってるに決まってらぁ。だがよ、仕方ねぇ事も分かってる。だから使える分は使ってやってる。だからもうしねぇってしっかり謝れば大丈夫だ。本当は畑が成功してから言いに行かせようかと思ってたんだ。失敗したら逆戻りだからよ。もうしねぇなんて言ったら死ぬしかなくなっちまう。だが、あんた見る限り大丈夫そうだな。そこら辺は任せてくれ。あんたが渡した金包めば騒ぎ立てる奴はいねぇさ」


 やっぱりなぁ。でもここまでやっておけばこの外門の中の居場所は守れるだろう。

 これで心置きなく、メイドゲット大作戦を決行できる。

 あ、待てよ。お屋敷を持つ予定だからって言えば、嘘にならないな。おお、それなら往復しなくていい。

 まあ、お前んちの女の子を一人くれって言ってくれるわけが無いか。

 襲われる時期だって知らないんだから合う可能性も低いしな。

 まずは見に行ってどんな状況で、どんな人たちで、可愛い子が居るかのチェックだ! チェックメイドだ!

 何も得られなかったら、憂さ晴らしに適正170の狩場を殲滅して帰ろう。

 んじゃ、しゅぱーつ。


 3時間後、その村と思われる場所に着いた。

 メイドパワーは衰える事を知らなかった。ミレイちゃんたちに性欲を煽られすぎた。サシャちゃん柔らかかったなぁ。結局話せなかったけど。

 畑ばかりの村だった。井戸を中心に木で作られた家がぽつぽつと並び、色々な形の畑が、無造作に耕されている。それでも数えれば50軒近くの家があった。

 畑仕事が終わって切り株で休んでいるおじさんに一声かける。


「村長さんの家はどちらになりますか?」

「おお、お客さんかい。村長の家はあそこだよ」


 少し雑談を交わす。


 こんな所まで何しに来たんだい?

 実は俺冒険者も商人も両方やってるんですよ。それで各地を回っていましてね。

 ああ、そりゃよく来てくれたね。


 少し元気の無いじいさんと朗らかな会話が進み一段落後、村長宅へと向かった。


「おお、来てくださったのですな、冒険者様! おや、お一人でしょうか?」

「ええと、私は流れの旅人でして、一応冒険者登録もしていますが……何かお困り事が?」


 ご老人の表情に陰りがさす、話を伺えば、近くの森にゴブリンのコロニーがあると言う。だが、ただのゴブリンじゃない。上位種がごろごろ居る大型のだ。

 良くそんな状態で生き残っていられたなと不思議に思いもうちょっと話を掘っていく。

 そのゴブリンたちの狙いは元々ここより先の他国の町。そちらの方が巣から近いのだろうと踏んでいるそうだ。距離はかなりあるのは間違いないと村長は話す。

 その町と長い事戦っているらしい。

 だが、大きくなりすぎたのか、最近はこっちの方にも流れてきて村の娘が一人攫われた。その言葉に疑問を持ち『殺されたではなく、攫われたのですか?』

と尋ねると首を傾げられた。いや、大迷宮専門で鍛えたのですが、ゴブリンって殺しに掛かってきますよね? 男女問わず。

 昨日そんな話を帰りがけにミレイちゃん達としたのだ。オークとかゴブリンって女性を攫うんじゃないのって。そしたら普通に殺しに掛かってくると言葉が返って来た。

 あんなのに犯されるなら殺された方がましだとラーサが鼻で笑ってた。


「なるほど。外のゴブリンは違います。あれらは魔物の中でも特に醜い。メスなら何でも孕ませて自分達の子を産ませる。自然と死ぬまで縛り付けて飼うのです」


 え、それ攫われたのっていつ? 十日前? もう生きていないのか。


 ……あっ、待って。ここで俺報酬に女の子とか言うの?

 ゴブリンな並に醜いとか渋い感じに言われたりしない?


「そう、ですか。因みに何故冒険者がまだ来ていないのです?」

「報酬が足りないのでしょう。ゴブリンは魔石の価格が低い。命を賭けるに値しないと思われた様です。もう依頼を出して数ヶ月経ちます。先日追加金を出しました」

「なるほど。あ、あの、せ、成功報酬で、村一番の可愛い女の子をうちのお屋敷の使用人にしたいとか言ったら……ゴブリンみたいだと思われますか?」


 ああーーーー間違えた。ついビビッてる事を聞いてしまった。

 馬鹿なの! 死ぬの!?


「う、受けてくださるのですか!? 町を相手に戦うほどの数ですよ!?」

「ああ、そっちはどうでも良いんです。倒せるので。問題は報酬の話し合いでして。勿論、無理にと言う訳ではありません。他の事でという交渉も受け付けます」


 よかったぁ。突っ込まないで居てくれて良かったぁ、さすが爺さんなだけはある。

 え? お金はいかほど? ああ、いりませんよ。

 どっちにしても助けますから、気楽に話し合ってください。

 それよりも珍しい香辛料とか果実とかありません?

 無いか。


「では、今夜はここにお泊りください。村の皆で話し合いをさせて頂きたいので」

「あー、じゃあ取り合えず索敵してきますので、深夜に戻ってもいいですか?」

「へ? いや、ですがまだ報酬の話が……」

「いや、言ったじゃないですか。どっちにしたって助けます。無理な報酬も頂くつもりはありません。神に誓いましょう。気楽に相談なさってください。使用人の仕事を請けてくれる若い女の子が居るのかどうかを。報酬は何と衣食住はこちら持ちで月大銀貨1枚」


 そう言い残して早々に村長宅を出た。

 ……安いかな? 衣食住付きで月10万円じゃ……

 まあ、それは良いとしてさくっと退治してくるか。

 えっと、こっちだって言ってたな。うーん夕方の森の中は暗くてやだなぁ。

 上位種もいるって言ってたし、一応『シールド』『マジックシールド』『マジックバリア』『リフレクトシールド』『ソナー』

 まあ、絶対に必要ないと思うんだけどね。キングが居て不意打ちして来たら付けといて良かった。無くてもちょっと痛いで済む程度なのだ、ゴブリンとは。

 いや、ゴブリンロードが居たら必要か。けど、それが居たら町程度落ちてるよな。

 アルールなら一瞬で落ちるだろう。そう考えたら怖くなってきた。アルール守りたい。いや、ユーカ達を守りたい。


 お、ここら辺だ。もう一回『ソナー』はいビンゴー。

 さて、どうやって倒そうかなぁ。たまには前衛として前に出るか。防具も新調したし。

 普通のゴブリンを走りぬけるように首を落としていく。

 っていっても10レベルから80レベル程度のゴブリンじゃなぁ。

 声を上げる暇も無いみたいだ。

 あっ、もしかしたら、巣に女の子がいるかも!?

 この世界の子ならまず可愛い。これは回収必須ですな。

 一杯上書きして癒してあげる。

 このおじさんがふへへ。


 さて、気合が入ってまいりました! 『ソナー』!

 地面を見つめる。固まっている場所はここの地下かいっ。道理で居ないわけだ。

 入り口がわかんねぇ。女の子が居たら埋まってしまうから崩せねぇし。

 仕方が無い。音を立てておびき寄せるか。

 ゴブリンの移動具合で入り口がどこか分かるだろ。


 ズドンッドンッドンッ


 祭りーお祭りだよーエクスプロージョン祭りだよぉ。

 おらぁ! 出て来いやぁ!

 俺より先に童貞卒するどころか拉致監禁レイプだと! ぶっころ! 絶対にだ!

 あ、移動始めた。ほいほいこっちね、まだこっち?

 あん? 茂みがざわざわっと揺れて大量のゴブ登場。あ~隠し扉見たくなってたわけね。んで見つからずに大きくなっちゃったと。

 さて、殲滅させて貰うか。

 えっと、じゃあ面倒なので出て来たの『ブリザード』で凍らせてからのお宅に侵入。

 『アイスウォール』で玄関を閉じて一応念の為『ソナー』で他の出口が無いかを監視っと。

 でもこれ距離はなんとなく分かるけど上下の感覚がねぇんだよな。

 まあ、どうせもう一度見回りに来る事になるだろうから、その時殲滅してもいいしな。

 さて、真っ暗だ。ゴブリンはこれで見えんのか? 見えてるんだろうな。流石に。

 えっと『ライト』おお、久々に使ったよ。何年ぶりだよライト! しかも付いてくるよ。

 なるほど。ゲーム時は分からなかったがこういう光球がついてくるんだな。


 ってそれはいいんだよ。奥のほうにご溜まってるな。

 そこにいるんかな? お偉いさん達は。

 取り合えず行こう。殲滅しながら。


 その先はゴブリンたちの乱交パーテーの会場だった。

 凄惨だった。ゲームで見るのとは違った。まるで人が解体される場所かと見紛うほどに。様々な死体が転がる中、興奮しているゴブリン共がいた。

 張り付けにされた女の子が二人。

 声なんて聞こえない。もう心臓が動いているのかも分からない。

 だが、ゴブリンが喜色を浮かべているのが分かった。


 言葉にならない。

 抑えが効かない。

 ゴブリンは殲滅だ。

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