第10話結局一日で終わった。
商人ギルドの登録を済ませた。
冒険者であっても問題は無く、土地の貸し出しを任されている商会や農家との提携をメインにやっている商会も聞くことが出来た。まずは農協の方だ。広大な土地を借りてもそっちで弾かれるようだと土地代が無駄になる。
という事で今はロレンス商会を尋ねて会長と談話中である。
「なるほど、ランスロットさんは農業と販売を両方手掛けたいと言う事ですかな?」
「いえ、こちらでお買い上げくださるのが一番だと思っております。勿論他の方々と同じ値段で。簡単に言えば子らに働かせてピンはねをしたいのですよ。彼らも日々食事が出来る。私も成功すれば儲かる。売り物が増えればあなたも儲かる。皆幸せになれるのではないかと」
「なるほど、下の者に任せるわけですね。ですが私どもとしましても売れない物は買えません。現状王都は大体の食料は賄えております。勿論輸入込みではありますが。そこに参入ともなれば、一工夫必要となるでしょう」
やはりはいそうですかとはならないよな。
どこか割り込めそうな所は無いのだろうか。いや、その見積もりが出るなら自分で動くか。とりあえず聞くだけ聞いてみよう。
「では、果実やハーブ、香辛料なども参入は厳しいですか? 勿論勝算が無いと大商会のロレンスさんが仰るのであれば、他の事業を考えるとしますが。私は皆が幸せにをモットーとしたいので、薄利でもやっていけるならと思っていますが」
だから頼むよぉ。何か紹介して?
マジであいつらが食っていければそれでいいから。
「ほう。そう仰るのでしたら香辛料の方で少々不足しているものもありますな。ハーブ関連は上流階級にしか浸透していません。購入者が少ないので厳しいと思われます。果実系の物はそうですな。珍しく味がよければ、でしょうか」
キターー。
「なるほど。では香辛料を少量から始め、珍しい果実でも今のうちから植えておきましょうかね。自分は未だBランクの身ですが冒険者をメインにやっておりますので、これから遠出する事もあるでしょう。ですからあまり気候が変わらない土地から種や苗木を持ってくればという考えもありまして」
「なんと! Bランクといえば一流ではありませんか。であれは、此度の会談は顔を繋げただけでもありがたい」
「いえいえ、食品を一手に任される商会こそ商人で言えば超一流でしょう。こちらこそお会いしていただいた事、感謝しております。では、ダメな時は遠慮なく跳ねてもらって構いませんので、物が出来る様になったら見ていただくだけでもお願いできますか?」
「ええ、もちろんです。冒険者の方とは思えないほどにやりやすい商売になりそうですよ。ははは」
「ありがとうございます。ははは」
ははは! よし、一応話は通した。次は農家か、土地か。ここで話が通ったのであれば、土地は借りちゃっていいよな。
次はブロコリー商会か。こっちが食品の方がしっくり来るんだが……
とやって来ました。今回ただの客なので会長では無い、しかもまた男だ。
「ほう、農業をやりたいので市民壁外の土地を借りたいのですね? いかほどの広さをお求めでしょうか? とは言え最大でも1アーカーほどしか貸せないのですが」
「制限があるのですか? それは一体……」
「国政ですな。商会は制御できるからと任されていますが、農家一つ一つを管理はできないのでばらばらにやらせています。その調整をロレンス商会が一手に引き受けているのです」
なるほど。一農民に力を持たせたくないからの政策か。
子供達が借りるというのは不可能だろうなぁ。これも問題の一つだな。
「例えば、その借りた土地で大きめな家を建てて、農業と共に副業をするというのは法に触れませんか?」
「ええ、問題ありません。ただ、農業用の土地ですのでお安く借り受けられます。こちらの視察でメインが農業でないと判断された場合次回からの借用のお値段が上がる場合がございます。払えない場合土地と同時に持ち出せない物。家なども同時に没収になる可能性がある事を承知して下さい」
そりゃそうだな。だが、その判断基準は何処になるのだ?
国の判断って言われちゃうと怖いな。まあ、犯罪になるわけじゃないのなら、その時考えるか。
「そうですか。では1アーカーをお借りしたいのですが、金額の方は……」
流石に金貨10枚あればいけるだろ。銅貨一枚100円と考えると1000万だ。借りでそこまで行くんなら農家がやっていけない、よな?
「金貨で3枚となります。ですが他にも注意事項が御座います。国から中止された物は仮に栽培中であっても破棄する場合があります。他にも王都の外に出す場合にはロレンス商会にて手続きを行ってください。勝手に直で売ることは出来ません」
それも納得だな。変なもん作ってたら止めろって言うわな。あと食料関連はホント大切だから勝手に外に出してもらっちゃ困るわな。
うんうん。と頷いて納得の意を示しつつ話を最後まで聞いた。
そして証文での手続きを終えてはれて一年間俺の使える土地が手に入った。
地図だけでは分からないので外へと案内して貰い、杭を打って範囲を示してもらった。
業者さんにお礼を言って次は農地回りをした。
「すみませーん」
「あーん? なんだよあんちゃん」
と布で額を拭きながら訝しげに近寄ってきたおっさん。
「あのう、隣で作物を作ることになったランスと申します。今日はそのご挨拶とご相談に来ました。お時間少し頂けませんか?」
「お? お仲間さんかい。ちゃんとロレンスさん所通してるか?」
ギラリと目が光る。そりゃそうだな。通してなければ自分の所の作物と被る可能性が出てくる。
「ええ、勿論。でないと作っても売れませんよね?」
「まあ、そうだな。で、何やんだ?」
おおう、一気に緩んだなおっさん。話してるのに地面にべたっとすわんな!
「ロレンスさんには香辛料なら参入可能だと言われました。なのでそれを。後は皆さんと被らない様な果実系もやってみようかと」
「ほー」
ほーじゃねえよ。興味ねぇなら聞くなよなぁ!
「それでですね。お金を払うので、畑の作り方から教えてもらえないかと思いまして」
「あん? 誰に、いくらで教えんだ?」
「物乞いの子供達に、そうですね。三ヶ月程度でいいのでみっちり教えていただきたい。御代は何と金貨3枚!」
「はっ!? マジか!?」
急激に立ち上がった。
そりゃそうだよな。一月100万円のお仕事です。
「マジです。ただ、培った技を優しくしっかり伝授して頂きたい」
「厳しくじゃねぇのか?」
「楽しい方がよく覚えますよ?」
「痛てえ方がわすれねぇぜ?」
うむ、それも一理ある。
だが、あいつら苦労してきたんだからもういいと思うんだよ。
「まあ、やさしめで頼みます。農作物が上手く行かなくても文句は言いませんので」
「ああん? あんた何がしてえんだ?」
「あいつらに仕事をあげたいんですよ。そうすればもう盗みなんてしないはずです。それでもするようなら鉄槌を下しますが」
「おかしな奴だな。だが、香辛料つうても色々あるぜ?」
おっさんと話し合った結果、数種類をやることになった。金貨もう1枚上乗せして仕入れからやって貰っちゃう事にした。おっさんはこれなら今年はこれから全部失敗しても余裕じゃねぇかと飛び上がっていた。
ちょっと出しすぎた。だけどその分本気で出来るだけ多くに根気良く教えて欲しいと頼んだ。
そして再び子供達の所へ行き、借りた土地へと集まって貰った。
総勢85名はヤバイ多すぎる。多分この土地だけじゃ賄えない。どうしよう。一刻も早く次の仕事がいるな。だが、そんな事言ったら怖がっちまうだろうな。
「農業をやる手はずは整った。安心してくれ。お前らの仕事は出来たからちゃんとやればお前らはこれから金を稼げるだろう。だから後二日間はゆっくり飯食って英気を養ってくれ」
てか家もどうにかしなきゃな。
土魔法チートがしたいです。ストーンウォールで箱は作れるかもだが……
まず自由に形を操れないもんなぁ。
ん? いや、ちょっと待てよ。クリエイト系ならいけるんじゃないか?
えっと、あのちょっと残念なスキルが今は生きる時じゃないか?
『クリエイトストーン』という、ゴブリンの名を冠する装備を作る為にある様なスキルが。
形が弄れる事はアクセサリー作った時に分かってる。無理をしすぎなければ色々弄れた。
ならば、やってみるしかないな。
けど石集めるのマンドクセ……
「えっと、これは自由参加だ。やりたくない奴はやらなくてもいいが、二日間暇だろ? 適当にここにこの敷地の石を積み上げておいて貰えないか? 適当にでいいからさ」
どうせ石をどかす作業はやることになる。
「あと、痩せすぎて体に力が入らない奴はゆっくり飯食って休めよ? 見捨てたりはしないからな」
と、伝えたのだが、皆必死に石を集め始めた。
無理しなくて良いと言っているのに。
……ここまで頑張られちゃうと放置して他にいけない。
仕方が無い。俺もやるか。
あっ、しまった!!
ストーウォールで出せるじゃんか石! 使いまわせるか分からないけど。
いや、やってみよう。絶対にこの人数泊める為の家を作る分の石は無い。
「『ストーンウォール』『クリエイトソウル』『クリエイトストーン』」
お、おお、おおおおおお!
あっ、崩れたっ。
……使えるけど難しい。
よし、もう一度、今度はちゃんとイメージしよう。コンクリで作った旅館の様なイメージ。
ぐはっ、良い感じだったのに石が足りねぇ。
これ一発でやりきらないとやり直しなのよね。
外側だけでも一発で作らないと隙間だらけになっちまう。
よし『ストーンウォール』10回追加だ。多い分には構わない。
行くぜ『クリエイトストーン』って名前がしまらねぇな。
いや、イメージイメージ。ダメだ。日本で見た旅館だと複雑すぎ。しかも材質違うし。石だよ石。木材は無いの。
あっ、ゲームに出てきたシンプルな古城はどうだ?
四つ角が塔見たくなっててその頭にとんがった屋根がついてて四つの塔を繋げるように外壁を敷いて中央二階にバルコニーが出ててそれを支える支柱が出入り口のアクセント。その下もコンクリで固めたい。で屋上は平らで端に落下防止用に凸凹の壁をつけて。
完成!
うわー、めっちゃ城! 城にしてはちっちゃいけど俺の城!
だが中は全て空っぽ。お城の中は一部屋クソワロ。
まあ、多分クリエイトで作れる筈。隙間は出来るかも知れんが出来るはず。だから内装は後から作ればいいさ。
「よーし、今日からここがお前達の家だぁぁ!」
「「「えええ~~~!!」」」
皆石をぶん投げて走ってきた。いや、折角持ったなら集めとけよ。
「こんな感じに少しずつ皆が気持よく住めるようにしていこう。という事で今日はもう石はいらなくなったけど、結局集める事になる。ゆっくりでいいし全部じゃなくていいから暇な奴はちょいちょいやっといてくれ」
あのおっさんの契約は三ヶ月だけだからな。石集めで何日も掛かったら勿体無い。
今日はもう良いといったからか、全員が中に入りたそうにしている。
一応崩れたら死人が出るから支柱だけは作っておくか。
補強がしっかり終わった所で皆に中に入ってもらった。
「土の上で寝るのは痛いだろうから後で何か持ってくるか。せめてフローリングの上に毛皮でも敷きたい」
まだ中は何も弄っていない。これじゃ雨風を凌げるようになっただけの外だ。
こういう時に貧乏人が使うとなると、藁に布かけてとかか?
流石にクリエイト系に家具を作るシステムは無い。と言うか木を弄れない。
なんでだろうな、レザーはあるのだから元生き物とか関係ねぇし。
いや、もしかしたらこの世界なら出来るのかも?
無理か。覚えてないスキルは試した事がある。少なくともこれから覚える必要がある。でもあるなら覚えたい自分のために。製造系大好きだし。
にしてもヤバイな、高揚感が凄い。お城作っちゃったよ? がわだけだけど。
「なーお前ら、藁とかどっかで見たこと無いか? それを売ってもらうか貰って来れば結構快適に寝れると思うんだが」
と、子供達に尋ねる。半数以上は無くても寝れるよと言った子に同意した。
だが、相談してるグループもあるみたいだ。
「あのう、このずっと先に動物飼ってる所にあったと思います」
「よっし、んじゃちょっと話聞いてくるわ。あ、言っておくけどもう盗みはやっちゃダメだぞ? 必要なものがあれば俺が買ってやるからな」
と、告げてその子達が行った方向へとダッシュした。
暫く行くと言っていた通りの場所があった。馬がのどかに歩いている。
人が見当たらないので建物の方へ近づき戸をノックした。
顔を出したのは50代のおばちゃんだ。ふむ、綺麗なおばちゃんだな。
流石に守備範囲外を飛び越しすぎているが、この世界の人は年取っても綺麗なもんだな。いや、さっきのおっさんはそうでもなかったか。
「誰だい?」
「あの、あっちの方で農家を始めたものなのですが、少し事情がありまして、藁を多めに売っていただく事は出来ないでしょうか?」
「藁を売るぅ? あっちのほうのぉ~珍しい木作りの家があるから、そこに行ってみなぁ、うちもそこから貰ってるんだよぉ」
「あ、ありがとうございます。ちょっと量は多めに欲しいんですが、今回限りなのでお目こぼしお願いします」
「大丈夫さぁ、今年はもういらねぇから」
なまりが酷く聞こえるな。これは翻訳されてそうなってるのかそういう設定で作られた世界なのかは未だに分からないな。口の動きに違和感が無いから多分日本語なのだとは思うけど。ファンタジー世界だからなぁ……
とにかくおばちゃんにお礼を言って更に移動した。
「はい。ああ、藁が欲しいのですか? ええ、後はそこら辺ばら撒いとくだけなので持っていっても大丈夫ですよ」
と、好青年に了解を得て、お礼を告げてから巨大な藁束を四つほど抱えて移動。
それを3回繰り返し、まとまって寝れば十分寝れる程度まで藁が集まった。
うわぁ、もう16時じゃねぇか!
迷宮今から行っても微妙だなぁ。仕方ない。今日は子供達の日って事で魔物狩ってレザー集めてくるか。迷宮じゃ死体残らないんだろうし。あ、あれはアンデットだったからか? まあ、迷宮から持ち帰るより今行った方がいいな。
どんなのが良いかなぁ? 丈夫で毛なしだとやっぱりトカゲ系か? いねぇな。
毛が有りだとここら辺ならそうだな……いねぇな。
そりゃそうだよ王都周辺は聖光石に守られてるから魔物いないんだって。
一番近い所でも一時間は走るな。狩り時間一時間。ギリッギリだ。
まあ、折角だ。今日一日は使ってやるか。
俺は、走ってイエローフォックスを狩りに出かけた。
狩り尽くしてやろうとついた瞬間『ソナー』からのトレインで敵を集めるだけ集めて『ハデスの抱擁』というめったに使わないスキルを使った。
範囲即死スキルなのだが、これも成功確率が魔力依存で渋い。上にMPの使用量も多い。だが、これなら毛皮が全て使える。
残ってしまった数匹に数回かけてその場に放置、もう一度トレインして集めてと同じ事を繰り返した。
そして、その場で『クリエイトレザー』を使い、一枚の皮に繋ぎ合わせた。
魔石も取れるだけ取ろうと頑張ったが、予定時間を超過した為断念して帰還した。
戻ってきたのは18時50分、子供達はまだ元気に騒いでいて、持ってきたものを披露したら耳を塞ぎたいくらいに騒ぎ出して大変だった。
だが、ここまでやっておけば、後はちょこちょこ見に来る程度でいいだろう。
市民門が閉まらない内に中に入り、今日も陽光の木漏れ日亭に泊まった。
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