第2話 古き調はクラシック
1
さとしが帰ってくるのを待って、出迎え一番に謝った。謝ったってどうなるもんでもないが、自分を戒めたかった。
「構わないと伝えたはずですが」
「いや、構うだろフツー」
「そのつもりで一日留守にしたと言ったら」
「へ?」
なんだよそれ。
「じゃあ、最初っから」
「納得されましたか」
あり得ねえ。
脳がぐらつく。冗談じゃねえぞ。
「気にされる必要はありません。先輩は博士の」
違う。
ないんだ。一回も。
ヤったことなんか。見たこともないってのに。
「なんつーか、溜まってただけっつーか」
「言い訳も反省も不要です。むしろお礼を言いたいくらいです」
「まんまとボクの都合に乗っかってくれて、か。おかしいんじゃねえの?」
それはお前だ、と言い返されるのを待ったが何もない。
さとしはそんなこと言わない。
「なかったことにしろとは言わない。だから今回限りで」
「何を仰っているのかよくわかりませんけど」
「もうしない。したくないんだ」
ヤってわかったことは、こいつはようじじゃないってことだけで。ヤる前からわかっていた。わかっていたんだ、そんなこと。嫌というほど思い知らされた。ようじはこんな声出さない。ようじはこんな風に感じたりしない。ようじは、
知らないだろう。誰も。俺以外。
言いたくなかったようだし、俺も言う相手がいなかったし。
知らないのか。
ようじを創ろうとしてるってのに。
できれば秘密にしといてやりたかったが、俺もいろいろ限界だから。ぽろっと零れることもあるかもしれない。掬いきれない。指と指の間を伝って。
いいか。言っちまうぞ。
「僕としては定期的に。勿論、彼に無理のない程度で」
「できねんだよ」
「やってください。主治医は僕です」
「そうじゃねえ。俺がやる気がないとかそういう話じゃねんだよ。できねえってのは、そういう意味じゃなくて」
ようじは、
「できないんだ」
「どういう」さとしが顔を歪める。
たったそんなことで、この世の終わりみたいな顔しやがって。
他人のお前はいいよ。でも、当の本人は、
世界の終わりどころじゃ済まされなかったんだよ。
「どうして黙っていたんですか」
さとしも馬鹿じゃない。そこまで言って気づいた。
言えるわけがない。
「どうして、そんな」
「どうせ聞いてたんだろ?あれ。訊かれたとき吃驚したよ。バレてんのかとも思った。でもそういうことじゃなかった。ただ、俺を揺さぶるための一番の材料。そんだけだ」
ユリウス博士の息子の名前はいねえよそうでスか
「いねえんだよ。できるわけねんだから」
あづまは、
「親父の息子だ」
親父とその患者との。
「そんな、だって、博士は」
「言い触らしてんだろ? 俺との子だって。常識で考えりゃわかんだろ」
「でも、博士は。博士なら」
「不可能はないってか。どんだけスゲえんだよ、あいつは。不可能だって、んなことくらい医者じゃなくたってわかんだろうよ」
本気で信じていたのか。
正常な判断能力もなくなっている。まさかそこまで追い詰められてたとは。
「やめろよ。いまからでも」
「いまから?だなんて。どうしろって言うんですか?いまさら彼に、神を踏み外せと。人間に堕ちろと仰るんですか」
言ってる意味がよくわからないが。
「休んだほうがいい」
「そんな気遣いをしてもらうために呼んだのではありません。いまさら手なんて引けるわけないじゃないですか。器も歴史も植え込んだんです。あとは先輩だけなんです。先輩さえ認めてくだされば、彼は」
「誰に言われてる?」
さとしもりょうじも利用されたにすぎない。戻れない理由を洗脳してる奴を。
「誰だ」
「ご存じない方です」
「知ってんのかはどうでもいい。誰なのか。それだけ聞く」
天才博士ユリウスようじを創って一番得する奴。
俺か。
「言え」
「所長ではありません」
「わーってる。ホントはいねえんだろ。転送になってるだけで」
「名前をお借りしているだけです。お蔭で成り立っているようなものですから」
カネとコネ。最強じゃないか。
「知らないほうがいいこともあります」
「知り合いならな。でもそうじゃねんだろ?だったら」
「ご存じないと」
脅したって吐くような奴じゃない。さとしが耐え難いのは、ここがなくなってりょうじが劣悪な処遇を受けることだ。りょうじのためなら何でもする。単純に口止めされているわけじゃなそうだ。ラスボスが俺に知られることによって、俺が治療(あれが治療と呼べる代物なら)を放棄する。そうなった場合のりょうじの末路を想像したくない。
ラスボスを知られると、俺が治療を放棄する?
誰だったら、見捨てて帰りたくなるだろうか。
ようじ?自分を殺して自分の分身を自分で創り上げる。
俺の思考もだいぶおかしい。
「ベッドが20以上あるって、言いましたよね」さとしが言う。「ありますよ。空床ができてるだけで」
「イコとマイナとカケルと」
りょうじ。片手で数えられる。
「儲ける気ねえだろ」
「彼らに帰る家はありません。入院費も一切受け取っていません。支払い能力がないからです」
「引き取って面倒看てやってるわけか」
「彼らは親にも家族にも見捨てられました。親戚一同で抱えるにはいささか大きすぎる問題を、彼らはたった一人で抱えています。かといって僕らは無力です。彼らにしてあげられることは、最低限の衣食住と、多少なりとも彼らが楽しいと思える趣味に没頭できる環境を提供することです。これは所長の力によるところのものが大きいです。所長がいたからここがあるし、彼らはこうして生きている。所長には感謝しても感謝し切れません」
「でもお前の提案じゃねんだろ?」
さとしは力なく笑う。立ちっぱで疲れたのかもしれない。水辺が見下ろせるソファ。巨大な消しゴムを思わせる。
ふと自動的にガラス張りの外を。いない。
いない?
雨も降ってないし、暗くもなってない。あるべきものがそこにない。
だけでこんなに不安になる。
「体調が思わしくないのかもしれませんね。あとで診てきましょう」
あとで?
あとでいいのか。本当に?
「俺はいいから」
「生理でしょう。とても重たいそうです」
なんでそんな平然としてられるんだ?
いないんだ。いつもいるはずの奴が、いつもいるはずの場所に。
それはすごく居心地の悪いものじゃないのか。
「心配ですか」
「やな予感する」
「そうですか」さとしが頷く。「先輩の勘は当たりますからね。わかりました。診に行きましょう」
「俺も行っても」
「できればご遠慮願います。生理中の彼女はいつにも増して不安定です。そんなところに先輩が行けば」
「わーった。でもなんかあったら呼べよ」
通信機器。そのためにこれを受け取った。内部にしかつながれないとしても。いまはこれだけが頼りだ。呼ばれたところで何も出来なかったとしても。
こういうときの勘は確実に当たる。
賭けてもいい。賭けるものは命くらいしかないが。
さとしが壁の向こうに消えたあと、文字通りガラスに張り付いて水辺を睨んでいた。もしかしたらひょいと現れるかもしれない。ちょっとトイレに立っただけとか。ちょっと喉が渇いただとか。
そんなわけがないこともわかっている。彼女はもう水辺で本を読むことがないように思う。俺が起きる前から、暗くなって手元が見えなくなるまで。部屋に戻ってからも蒼白い明かりの下で黙々と、外が明るくなるまで。
想像だ。
ぜんぶ、想像にすぎない。
誰でもいい。そこの水辺に腰掛けてほしい。そして俺を安心させてほしい。飛び石に人が腰掛けることでその景色は完成するのだ。飛び石が無人だとその景色は致命的な欠陥を浮かび上がらせる。足りないのだ。足りない。
いっそ自分が腰掛けるか。いや、駄目だ。それだと景色が満たされた状況を確認することが出来ない。俺の眼だけここにおいて、それ以外が飛び石に腰掛ければいい。眼を置いてきたから本は読めないが構わない。本を読むためにそこに座ったわけじゃない。足りない穴を埋めたのだ。代理行動として。
居た堪れない。座っても立っても落ち着かない。なぜ待っていることを選んだのだ。
付いていけばよかった。付いてくるなと言われた。それは言い訳だ。
本当に付いていきたいのなら、無理矢理にでも付いていったらよかったじゃないか。拒絶されても拒否されても。
嫌われるのが怖いか。
想いがひっくり返るのが厭なのか。
なんで俺はひとりで待ってなきゃなんない?答えろよ。いんだろそこに。
ずっと視てやがる。俺が苦しむのをケラケラ嗤いながら。
視てねえで。こっちきて一緒に。
嗤うな。
笑うな頼むから。おかしくなりそうなんだ。とっくにおかしいって?
そりゃお前だって。お前がおかしいから俺だって。
投影だよ。
ああ、そうか。そうだった。
振動。
神童。
「出なよ」
あいつの声がして耳を澄ます。
イコが死にました。
「だろうな」
2
綺麗な死に方だった。綺麗な死に方ってものがあるのなら、だが。
直接の原因は、窒息。
枕元に遺書があったらしい。さとしが持ってきてくれた。
2階から外に出て、階段を使って水辺に下りる。飛び石に腰掛けてまず、深く息を吸った。吐いた。また吸って、吐いた。イコの分まで呼吸をしようと思った。
苦しかっただろう。息ができないなんて。普段意識せずにできていることが、ふとした加減でできなくなる。それほどつらいことはない。
今日だけだから、ちょっとだけ貸してくれ。これを読み終わるまでの間だけ。駄目なのかいいのか。どっちだ。いけなかったら言えよ。すぐ退くから。
遺書は俺宛だった。遺書ってのは誰か特定の人間に宛てて書くものなのだろうか。
A4三つ折。たった二枚。
たった二枚?イコが言い遺したかったことは、A4でたったの二枚?
しかも俺になんか宛てて。遺書、と書くべき位置に俺の名前が書いてあった。
艮蔵先生へ
遺書じゃないのかもしれない。さとしは遺書と言っていたが、単に俺への手紙を遺しておいてくれただけかもしれない。開いた形跡はなかった。さとしを疑っているわけじゃないが、遺書と言って手渡したのが気になった。内容を知っていたんじゃないか?
聞けばわかることをうだうだ考えてても仕方ない。開かなければ。
重い。ただの紙だってのに。
そういえば、まともに手紙なんかもらったのは初めてかもしれない。どっかの天才博士はそんな気の利いた生存確認方法を採ったことなんかないし。採るわけもない。
手紙でもメールでもいいから生きているかだけでも教えてくれ。便りがないのがいい便り。てのはあいつの場合に当て嵌まらない。
生きてるのと死んでるのとそう変わらない。ようじはそれらを同時に採れる。生きながら死んでいるし、死にながら生きている。厄介な奴なのだ。
なかなか開けないのは、思いの外動揺しているからだろうか。わかっていたじゃないか。イコがここに戻ってこないことは。二度とここで本を読まないことは。
なんで?わかった?
その答えの裏づけがここにある。
印字だった。ちょっと意外だった。もし俺が遺書を書くなんて状況に追い込まれたら、キィボードは叩かない。立ち上げるのが面倒だからだ。手が疲れるほど書きたい内容もないだろうし。
やっぱ、書かないな。んな面倒なことは。
縦書き。
じっくり読むには短すぎる。読み飛ばすには深すぎる。
なんだ、
これ。
もう一枚あることも忘れて、さとしに電話を掛けていた。
「彼女は正しいことをしました」
「なんで言わなかった?」
「先輩をお呼びしたのはそんなことをしてもらうためではありません」
そんなこと?
復讐できるものなら。
「なんで言わなかった?」
「終わったことです。彼女は罪を悔いて自ら死を選んだ。たったそれだけのことです」
それだけの?
ことか。そうじゃねえだろうが。
「なんで言わなかったかってきいてんだよ。なんで」
「言ったらどうしてました?」
殺してた。
あいつが死ぬ前に。
どこだ。さとし。どこにいやがる。
闇雲にエスカレータを駆け上がって屋上。煙が。
まさか、そいつじゃねえだろうな。まさか俺になんの断りもなしに。
「片付けたんじゃねえだろうな」
「確認しました。彼女は確かに死にました」
遺書なんか渡したのは、遺体を片付けるための時間稼ぎ。俺の眼に触れる前に。俺が核心に気づく前に。
ぜんぶ、
なかったことにしやがった。
「よかったじゃないですか。ご自分の手を汚さずに済んで」
「それ本気で言ってんじゃねえよな?」
通信機器が滑る。手の汗か耳の汗か。
「瑣末な事象です。わざわざ先輩のゴッドハンドを煩わせることもない」
死んだのに。
つい昨日まで生きてた奴が眼の前で。
死んだってのになんだその。
「忘れてください。いまのいままで忘れていたんでしょう?時間をちょっとだけ前に戻せばいいだけのことです。弟さんのことは」
まさか。
「知ってたのか」
「神を創る上であなたの存在を明らかにすることは不可欠でした」さとしが言う。「失礼を承知でいろいろ調べさせてもらいました。関係者にお話を伺う機会ももてました。弟さんがあの状態から復活したのは紛れもなく」
ようじのせいだ。
あいつが時間を戻した。過去に戻って、なかったことにしてきた。
弟は、
俺の知り合いの、別れた奥さんの、妹に。
ようじの、弟の、父親の、助手の、妹に。
人間を剥奪された。
「お前が書いたんだろ」
「お好きなほうで。言っても信じてくれないでしょうから」
思い出させやがって。いまのいままで忘れてたのに。ようやく忘れたのに。やっと忘れられたのに。なかったことにできてたのに。
いまさら。あれがイコだったとか言われても。しかも死んだあとに言われても。
「もう一枚はお読みになられましたか」
「なんで知ってんだ」
封は開いてなかった。
「あったんでしょう?二枚」
「なんで知ってんだって言ってんだよ」
病院でもなんでもない。ここは、
「なにするとこだ」
さとしの声は平板だった。
「大きすぎる問題を抱えたがために血のつながりを断絶された哀れな子どもを引き取って生活の場を与える慈善団体かなにかだとお思いですか。彼らがここに来たばかりのときはもっと沢山の子どもがいたんです。片手で数えられるだけの人が暮らすには広すぎます。彼らは、人間とともに暮らすことが出来ないんです。僕らの世界で生きることが出来ない。彼らを生かそうと思ったら、人間のいない世界を創らなきゃいけない。同じく、人間と暮らせない子どもたちと一緒に。一緒にすればどうなるのかはあらかじめ予想がついていました。なにせ人間の中で暮らせないんです。彼らは、人間を人間として捉えることができない。人間と物が同等なんです。価値が同じなんです。命の価値も、人間性の尊厳も、彼らの前では無に等しい。彼らは彼ら以外を、僕らの世界の言葉を使えばですが」
殺したんです。
そんなこと日常茶飯事だから。見慣れてるから。とでも言いたいのか。
平然としてんのは。
なんも動じてないのは。
殺した?
「じゃあ、イコも」
殺されたんじゃ。
「自殺です」
「診せろ」
「ですから先輩のゴッドハンドを煩わせるようなことは何も。いいえ、すみません。すでに診せることができないんです。意に沿えず心苦しいのですが」
煙が立ち上る。
「俺に診せねえために燃やしたんだろうが」
これじゃ何もわからない。イコは本当に死んだのか。イコは自殺だったのか。イコは誰かに殺されたのか。イコは、本当の本当にあの遺書とやらを書いたのか。イコは何故死ななければならなかったのか。俺に殺されないため。
先手を打たれた。なにもかもが後手に回ってる。
「殺し殺され、殺され殺した。残るはとうとう二人になってしまいました」
「生き残ったほうはどうするんだ。こっから出してやんのか」
「僕が殺します」
正気じゃない。
「そして、次の二〇人がやってきます。互いに殺し合って数を減らしてもらうしかないんです。彼らは僕らの世界で生きてはいけない」
生きることが不可能だという意味なのか。
生きることを禁じるという意味なのか。
お前らが平和に暮らすために死んでもらうってか。殺し合って、減らし合って。
それのどこが命の価値だ?どこが人間性の尊厳だ?わかってねえのはてめえらのほうじゃねえのか。
「彼らは世間一般の少年犯罪じゃないんです。絶対に直らない更生不可能の異常者なんです。子どもだからといって将来未来を約束する必要はないんです。おとなだとかこどもだとかそういうことを言ってるんじゃありません。区別のカテゴリが根本的に間違っている。未成年か成人かは二の次です。はっきり言ってそんなことまったく重要じゃない。明確にすべき線は、異常かそうでないか。直るのか直らないのか。ここは、到底正常の範囲には収まらない犯罪行為を犯した、かつ矯正見込みのない異常者を収容する施設です」
弟から人間を剥奪した女は死んだ。
たったそれだけのことだ。受け入れろ。よかったじゃないか。
いなくなってくれて。
死んでも償いきれないことをした。死ぬしかないじゃないか。死ぬべきだったのだ。
死んで当然だった。あの女は。
でも、弟は元通りになった。ようじのお蔭で。時間を戻したわけじゃない。過去に戻ってなかったことにしてきたわけじゃない。わかってる。あいつは天才博士だ。できないことはなにひとつない。できないことは、この世に存在しない。してはいけない。あの世にはあったかもしれないが、生憎と確認できない。
殺してやろうと思った。俺が仇を取るべきだと思った。でも、ようじがそれをさせなかった。ようじがあの女を匿った。どこか知らない土地に。
それがここだったのだ。名前も変えて。顔も雰囲気もごっそり取り換えて。
全然気づかなかった。気づけなかった。思いもしない。
だって、イコはイコだ。あのイカレた女じゃない。あの女がイコのはずがない。イコがあの女のはずがない。何もかもが違う。あの女は異常だ。でもイコは、過去と未来に馴染めない、現在でしか生きれない脆い存在で。
過去と未来がないってことは、人間として存在できないということ。過去と未来があるから人間は存在できる。そこにいると思い込むことができる。過去の記憶と未来の予感。それがまったくないということは。
刻一刻と過ぎる現在がどれほど危ういか考えたことがあるか。次の瞬間には自分は崩壊してるかもしれない。塵芥と同様、消えてなくなってるかもしれない。そう思い描いたことがあるか。連続する流れこそが命。途切れ途切れの場面を、それこそ途切れ途切れに見せられて、何を意識できるのか。命の価値を人間の尊厳を考える暇があるか。
それどころじゃない。そんなものに思考を割いてる場合じゃない。
イコが、
電話を地面に叩きつけてから、しばらく煙を見つめていた。眼に焼き付けようと思った。イコが燃やされていてもいなくても、煙を見ていたい気分だった。
ゆっくりと天に吸い込まれる。空と雲に同化する。煙の出処は、ここからはわからなかった。木と林と森が邪魔をして。
イコは死ななくてもよかった。
日口にうゆが死ぬべきだった。
3
一枚目
ちかおを壊してごめんなさい
わたしには、死ぬことしかできません
二枚目
あるところに、とてもなかのいいふたりぐみがいました。ふたりはとてもなかがよかったので、いっしょにレストランをひらくことにしました。
ぼくはりょうりがとくいだから。おとこのこがいいました。
ぼくがりょうりをつくるよ。
わたしはりょうりがにがてだから。おんなのこがいいました。
つくったりょうりをはこぶわ。
おとこのこのりょうりはとてもおいしかったので、たちまちおきゃくさんがあつまり、あっというまにレストランはだいにんきになりました。
おんなのこは、おとこのこのりょうりがとてもすきだったので、みんながおいしいおいしいとたべてくれることが、うれしくてたまりませんでした。
あるひ、おとこのこがかぜをひいてねつをだしてしまいました。おんなのこはねずにかんびょうしましたが、おとこのこのねつはいっこうにひきません。
きょうはおやすみにしましょう。おんなのこがいいました。
しかたがないわ。みんながきてくれるのはうれしいけど、むりしてにどとりょうりをつくれなくなってしまうほうが、みんなもこまるはずよ。
そんなことはできないよ。おとこのこがいいました。
まいにちたのしみにしてくれてるんだ。おみせがひらくじかんよりもまえにきて、そとでまってくれてるひとだっている。きれてくれたみんながあしたもくるね、といってくれる。まいにちまいにちぼくのりょうりをたのしみにしてくれてるんだ。ぼくはりょうりをつくるよ。
おんなのこは、おとこのこのかわりにりょうりをつくることにしました。おみせがひらくじかんまであとわずかしかありません。
だいじょうぶ。おんなのこはじぶんにいいきかせました。
まいにちみてるじゃない。わたしがいちばんあのあじをよくしってる。できないはずないわ。
がんばったかいあって、おみせはいつもどおりのじかんにひらくことができました。おきゃくさんは、いつものとおりにせきにつきます。
しかし、いつもとちがっていることにきづきます。
おきゃくさんのひとりがたずねました。
おとこのこはどうしたの?
いないじゃないか。
まさかびょうきにでもなったんじゃ。
くちぐちにこえがとびかいます。
おんなのこはえがおでこういいました。
ちょっとかぜをひいちゃってね。でもだいじょうぶ。きょうはわたしがつくるわ。
おんなのこは、じしんまんまんにちゅうもんをとりはじめます。でもメニュもいつもとちがっていました。
なんだこれ。
ひとつしかないじゃないか。
きみにはむりだったんだ。
きょうはかえるよ。
おきゃくさんがつぎつぎにせきをたちはじめます。
おんなのこはえがおでこういいました。
だいじょうぶ。じかんがなくてひとつしかできなかったけど、とてもうまくできたわ。だからどうかたべていって。もしおいしくなかったら、おだいはいらないわ。
おんなのこがひっしにがんばったことは、おきゃくさんにもわかっていました。
おだいがいらないなら。
ちょっとだけなら。
たべていってもいいかな。
おきゃくさんのそのこえに、おんなのこは、えがおでおれいをいいました。
そして、いつものように、おとこのこのたつちょうりばにもひびきわたるおおきなこえでメニュをとなえました。
へいビーフシチュいっちょう。
そのビーフシチュは、とてもひょうばんがよく、おとこのこのかぜがなおったあともメニュにとりいれてほしいと、おきゃくさんはこえをそろえていいました。
でも、おんなのこは、そのビーフシチュを、
にどとつくることはできませんでした。
なぜなら、そのビーフシチュのざいりょうが、
にどとてにはいらなかったからです。
ぜっぴんのビーフシチュをだせなくなったレストランが、いまどうなっているのか。だれもしりません。
おんなのこは、いまもレストランをつづけています。おとこのこといっしょにひらいただいじなおみせです。つづけたいとおもうのはとうぜんです。
追伸
マイナのビーフシチュだけは食べないでください
4
日口にうゆは偽名だ。いわゆるペンネームというやつで。彼女は作家だった。一般書店では取り扱っていないらしい。俺は見たことはない。
彼女には姉がいた。俺の知り合いの心理学者と婚姻関係にあったが、いろいろあって別れることにした。そこに至るまでにだいぶ揉めたのだが。
そもそもあの二人がなぜ結婚することになったのか。二人が別れたあとも俺には皆目見当がつかない。
好き合っているかと聞かれれば、おそらくそうなんだろうが、いざ愛し合ってるのかと問われれば、首を捻ってしまう。結婚式も披露宴もやったかどうか定かではない。俺は招待されていない。そのどちらにも。二人を引き合わせたのが俺だということにもかかわらず。
引き合わせたといっても、大した演出はしていない。俺という接点がなければ、彼らは決して出合うことはなかった。かどうかはわからない。同じ大学に勤めていたし、遅かれ早かれ顔を突き合わせる機会は設けられていたと思う。なにせ同じ学部だ。しかも同じ教授を介して彼らは、改めて接点が生まれる。なにもキューピッドは俺じゃなくてもよかったのだ。
日口にうゆの姉は助手。俺の知り合いは、教授が体調を崩して入院している間のピンチヒッタとして講師に呼ばれた。教授直々の指名だった。姉のほうも、教授直々にどこぞの大学から引き抜いたとのことだ。ほら、キューピッドは俺じゃない。
それでもやっぱり、彼らが結婚した理由はわからない。物の弾みというのが一番近い気がする。気の迷いとも言い換えられる。結婚自体が俺にはよくわからない。自分の両親が結婚した理由があんなだから、余計そう思えるのかもしれない。
あんな、を想像しないわけじゃなかった。俺の知り合いは、自他共に認めるプレイボーイで、昔っからとっかえひっかえ女が違った。一度たりとも同じ女を連れていたことはない。そんな奴だから結婚が長続きするはずがない。やめるべきだと忠告したときにはすでに遅し。届けを出した後だった。俺のところには事後報告だったのだ。教授には事前に行っていたらしいが。な?キューピッドは絶対俺じゃなかった。
あの二人が一度も寝てないと聞いたときは、本気で耳の治療を考えた。が、本当の本当にそうだったらしい。あり得ない。あってはいけない。相手はプレイボーイなんだ。それをヤらずにナニをする?
なにもしてなかったのだ、要は。夫婦がすべき、夫婦がしているようなことは何も。
それが直接の原因だとは思わない。何か他の根本原因があって、その結果、一度も寝てなかったし、結局別れる破目になったのだ。ヤらなかったのは結果だ。
ヤらなかった理由は、ヤる必要がなかったから。愛がなかった、と簡単に言い切ってしまえばそれまでだが、愛がなくたってヤれる。どこかのプレイボーイが、全身全霊をもって体現している。
プレイボーイには、他に好きな奴がいたのだ。プレイボーイがプレイボーイになる前からずっと思い続けてる奴が。
それが一番の原因。それ以外にない。それなのだ。まさにそれ。
プロポーズはプレイボーイからじゃなかった。日口にうゆの姉は、まともが服着て歩いてるような人で、研究と学問以外に興味はありませんよと言わんばかりのオーラで武装していた。研究と学問以外に関心がなかったわけじゃない。研究と学問以上に関心を持つ機会に巡り会えなかっただけなのだ。幸運にも巡り会えた機会を物にしたいと思うのは、至極当然のことだ。
そして、彼女は手に入れた。かに見えた。
気づいていなかったわけではない、きっと。気づいていた。気づかないふりをしていた。気づかなければよかったのに。彼女は自分で墓の穴を掘り進めてしまった。
日口にうゆは、姉が気づくよりも前にそれに気づき確信し、墓の穴の出口で誘き出した。姉を苦しめている人間を。日口にうゆは、姉を助けたかったのかもしれない。
しかし、日口にうゆの採った方法は、とても容認できるような代物じゃない。それだけは確かだ。姉のために、俺の弟から人間を剥奪していいはずがない。
俺は、日口にうゆを心の底から憎んでいる。弟の復讐もそうだが、そんな人間が人間のカタチをして存在していることが許せない。許していいはずがない。
でも、日口にうゆは死んだ。
死んだのだ。俺が殺すより前に。
死んでしまった。
死んだ。
死んだら殺せないじゃないか。生き返れよ。そしたら心置きなく殺してやれるのに。
イコには死んでほしくなかった。
イコはまだ生きるべきだった。読書しかすることがなくても、読書というすることがあるんだから。読書をすればいい。
1階の巨大ホールもといアトリエで、カケルが陶器の皿を並べていた。床に一直線に。
重い扉を両手で押して入ると、皿が一斉にこちらを向いた。ような気がしただけだ。そうやって並べられていただけだ。
「イコさん残念だでな」カケルが言う。
「見たのか」
「先生が煙見とったの、見とったよ。燃やすんは俺」
は?
「窯がな、俺んだで。俺がやらな」
並べられている皿の枚数をなんとなく数えた。
ひいふうみいよ。
いつむうななや。
ここのとお。
プラスはち。
二〇には二枚足りない。
二枚足りない。二枚。
2人。
二人足りない。
「一九枚目は俺んじゃいかん。二〇枚作らな」
カケルが、
「燃やしたのか」
「俺の生業じゃんね?」
なんで。
なんでそういうことしかできない?
「この皿」
一八枚目。
円が二つ。その間に横線一本。
「メガネしとったのもあるし、イコさんメガネさんお好きだでな」
「何入れた?」
「燃やしとった残り」
残り?燃やしたらなにが残る?何も残らない。
遺るのは。
残りかすの灰。
「使ってねえだろうな。それに、そいつにイコの」
「使っとったらいかんか」
「いかんか、て。骨だぞ骨。使うとか使わないとか」
「使ったらいかん?」
文句や異論があるから問うてるわけじゃない。いかんか、と。訊くのは。
「いかんか」
何も言い返せない。
いけない理由を知らないのだ。単純に理由を問うている。
どうして自分の作品に人間だった骨の粉末を使ってはならないのか。
「いかんか」
何も言えない。
「カナさん呼んでこな。見せたる」
「これ、全部か」
全部の皿に人間だった骨の粉末を使っているかということだが。
「窯は俺んだで」
皿を根こそぎ蹴飛ばしてやりたい気分が一瞬だけ掠めたが、これに本当に骨が使われているならそれはすべきじゃない。してはいけない。命の価値と人間の尊厳。なんて物を引き合いに出さなくても。
息を吐く。吸いすぎた。
イノチのカチ。ニンゲンのソンゲン。
そんなものが本当にあるのなら。
さとしが来る前にホールを出た。きっと、さとしは褒めるだろう。
よくできたね、と。
褒めて褒めて褒めちぎるだろう。それを見たくなかった。
5
出会いは、そうですね。
彼はそこですごく懐かしそうな眼をした。
「僕が声を掛けたんですよ。まさか先輩ともあろうお方が僕なんかに興味を持つはずありませんから。先輩は、いわゆるあれです。不良というか。かろうじて学校には通っていたようですが、基本は家でゲームをするか、河川敷で決闘です」
「決闘?ですか」
思わず訊いてしまったが、その返答はあらかじめ予想されていた。そういう顔で笑う。
彼は意気揚々と続けた。
「決闘といっても一方的です。一方的に向こうが吹っ掛けてきて、一方的に向こうが去っていく。負けなしでした。少なくとも僕が見ている範囲で先輩が負けたことはありませんでした。一方的になることがわかってて、一方的に仕掛けるんです。もうこれは、先輩を倒したいとか眼に物見せてやりたいだとかあのときの落とし前をとか、そういう意図は確実に薄れてきてますね。ただ単に、先輩に相手してもらいたいだけです」
頼んでおいたコーヒーが運ばれてきた。彼はそれをとても勿体付けて口を付ける。癖なのか彼なりの流儀なのかは定かではない。
「お飲みにならないんですか」
「あ、はい。すみません。失礼します」
それほど飲みたくなかったのだが、コーヒーだって彼に合わせて注文しただけで。あなたは?と訊かれてつい、同じものをと言ってしまっただけの。
苦い。
付属の味付けをすっかり忘れていた。ミルクもガムシロップもなしでは飲めないくせに。どういうことだろう。そんなに緊張してるのだろうか。昔話を聞くだけなのに。
彼は半分ほど飲み干していた。
「どうぞ。硬くならず、力を抜いて」
「そう見えましたか」
「仕事柄人間観察には長けていますので。あなただってそうでしょう、先生?」
コーヒーを専門とするチェーン店に呼びつけたのが間違いだった。彼がコーヒー好きだと知っていたから。彼がコーヒーを好きだという背景に、コーヒーが大嫌いだという先輩が関わっていることを見抜いたから。
僕も見抜かれている。
「話を戻してください」
視線が痛い。彼の見栄えのよさに惹き付けられる女性客。外見つまりは顔なり素振りなりに釘付けなお蔭で、会話の内容までに注意は向いていない。
聴けばきっと眼を背けたくなる。
「どこまで話しましたっけ。ああ、河川敷の決闘のあたりでしたね。僕もそこで声を掛けたんですよ。場所が悪かったんでしょうね。最初、逃げ帰った奴らの残党だと思われて、それはそれは凄まじい目つきで睨まれましたよ。僕じゃなかったら失禁してましたね。準備もなしに先輩に話し掛けようだなんて、そんな愚かなことは出来ません、先輩に伸してもらいたい不良たちと違う目的ならば尚更です。違う場所で声を掛ければよかったんですけど、生憎そこしか先輩の居場所がわからなかった。制服から学校はわかったんですけどね、まさか学校まで押し掛けていくわけにいかないでしょう、告白じゃあるまいし」
いちいち話が遠回りだ。
わざとやっているのだろう。コーヒーの飲み方と同じように。
「先生」彼がカップをソーサに戻して身を乗り出す。「ちょっとばかり長くこの業界にいるものとしてアドバイスさせてもらいますと、本心を露わに顔に出されないほうがいいですよ? 相手は子どもです。僕らなんかよりずっと、表情の読解力に長けています。表情だけじゃない。微妙な動き。それこそ僕らが自然にやっているほんの僅かなことでも、彼らは敏感に反応します。警戒されたら終わりです。彼らは二度と心を開きませんよ」
「貴重なアドバイス感謝します。ですが、余計なお世話ですね。これは仕事じゃない。況してやあなたは子どもじゃない。違いますか」
彼が柔和に微笑むと、溜息が同時多発的に充満した。会話の内容に聞き耳を立てている不届き者は存在しないのか。
「ええ、そうです。その通り。先生は何も間違っていない。間違っているのは僕のほうです。すみません。お気を悪くされたのなら」
だいぶ悪くしたが。
「構いません。続けてください」
彼は残りの半分を飲み干して、店員を見つけて手を挙げた。店員の顔が確実に紅い。店内が暑いせいではない。
黒い液体の補充が済むと、彼は体の前で手を組んだ。
「本題から逸れている、と先生はお思いでしょう。僕の拙い経験則で申し訳ないのですが、本題から逸れたところにこそ真の本題があるのです。僕のところに来るクライエントは皆そうです。本題を話せといわれると構えてしまってどうしても第一声が出てこない。せっかくやっとの思いで塞いだ開けたくない箱を、いまここで抉じ開けろといってるわけですからね。それは抵抗しますよ。ですから僕は、本題にはあえて触れません。どうでもいい世間話から徐々に仲良くさせてもらいます。時間はかかりますが、箱を封印するのだってそれはそれは時間がかかったわけですからね。それと同等の、いえ、それ以上の時間を掛けてこつこつと封を解いていく作業が必要不可欠で」
「もう一度言わせてもらいますが、これは仕事じゃないんです。況してやあなたは子どもでもない。本題から逸れる必要も、仲良くなる必要もまったくない。あなたはただ、本題にのみ的確に答えていただければ」
「それが果たして出来ますか?先生。失礼ですが、あなたがやっていることはとても失礼なことですよ。初対面の相手に、著しくプライヴェイトな内容を、包み隠さず暴露しろと、そう言っているわけですからね。僕はすごく警戒しています。あなたが何の目的を持ってこんなケーサツやらキシャごっこをしているのか。何の権限があってこんな失礼なことをのうのうと言ってのけるのか。門前払いしなかったのはですね、おわかりではないんですか?僕が断らないと、会って話してくれると、そう確信していたのではないですか」
そう思っていたのは確かだ。彼は絶対に話に応じてくれる。忙しい仕事の合間を縫って無理にでも時間を作ってくれると。
答えなんか最初から知っている。
僕はただ、先輩を追い詰める方法を一手でも多く用意しておきたい。
「先生は、僕の気持ちを踏み躙っている。現在進行形で」
「別れた原因はそれですね」
「それが本題でしたか?」
「そうなんですね?」
悪魔の液体を頭から掛けられる覚悟は出来ていた。
でも、彼はそれをしなかった。しようと思ったかもしれないが、なにかが彼を寸前で押し留めた。世間体とか静かな空間への配慮でないことは容易く想像がついた。
「大丈夫です。決して口外はしません」
「仕事じゃないんでしょう?信用できませんね。守秘義務の適用外です。それに今更バラされて困るような相手もしませんし」
「知っているんですね」
王手だ。
逃げ場はない。闇黒の液体に手を出す余裕も。
「どうして、医者なんかにおなりに?」
「向いていないと仰りたいのでしょう。ええ、それは僕が一番よくわかってます」
僕は、自分を医者だと思ったことは一度もない。
「先輩は、医者に向いています。僕なんかより遙かに」
先輩はあなたの先輩じゃない。僕の先輩であって。
先輩の先輩は、あなたでしょうに。
どう見たってあなたが年上だ。
「そうでしたか。ついに辞めてしまわれたか」彼が言う。
「ご存じない? あなたが知らないことを、どうして僕なんかが。たったの5年、大学で一緒だっただけの」
消えたほうがよさそうだった。いろんな意味で。
勘定を置いていこうとしたら首と手を振られた。
「借りなんて真っ平御免です。一人分で結構」
「最後に一つだけいいですか」
「呼称ですか。それ訊かれたの、何度目でしたっけね。いいじゃないですか。僕がそう呼びたいのであれば。最初確かにいい顔はされませんでしたよ。でももう、訂正も面倒になってきてほぼ容認です。だって、優等生の僕なんかが不良に取り入るには、それが最良な方法でしょう? 結果は現在の状態から判断していただければ」
「失敗したわけですね?」
「どうしてそう嫌味しか言えないんですかね。嫌われますよ子どもに」
「三度目ですが、これは仕事じゃありません。そういうことです。本日は貴重なアドバイスを賜り」
「さっさと消えてください」彼は微笑まなかった。
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