第2話 改革

「一体何の報告だ?わざわざ街の全員を城の庭園に呼び寄せてまで」

「良い知らせか?悪い知らせか?」

「まさか、俺達の首都のここに人間どもが乗り込んでくるとか?」

「バカ!無理に決まってんだろ。ただでさえ、今はセイルの街の奪い合いをしてる最中なのに」

魔族の首都、オルステッドの城の庭園には、オルステッド中の者が集まり、ひしめき合い、ざわついていた。


城の突き出した、小さなベランダのようなところがある。

魔王ベルゼブルはここで良くスピーチをしていた。


その奥に、ネフィリムは黙想していた。

「ネフィリム王子、そろそろ行きしょう」

「ああ、行こうか、長老」

長老と呼ばれる魔族のレビヤタンは、長年、ベルゼブルの側近として仕えてきた。

政治、経済に優れていて、ベルゼブルにとても重宝されていた。

「ささ、この、人間どもの血で染められた覇王のマントを着けましょう」

長老は覇王のマントをダビデに着させようとした。

すると、ダビデはその覇王のマントを払いのけた。

「いや、俺はいらないよ、それ」

長老は目をパチクリさせていた。

「何を仰っておられるのですか。これは魔王が唯一着けることが出来、魔王である証拠のマントですぞ」


「んじゃ、新しいの創ろうよ。そのマント、なんか、おどろおどろしいよ。血の匂いで臭いし。俺、血が嫌いなんだよ」

長老はキョトンとしていた。

「んじゃ、みんな待ってるから、行くね」

キョトンとしている長老を横目に、ダビデはベランダに進んでいった。


ダビデが姿を現すと、群衆が一気に歓声を上げた。

ダビデはしばらく、手すりに手をかけて、その様子を伺っていた。

頃合いを見て、ダビデは観衆たちに、手で静かにするように制した。


「王子、ネフィリムである」

その声とともに、魔族の女たちがキャアッと声をあげた。

「今日は、とても重要な話がある」


「魔王、ベルゼブル、我が偉大な父は・・・」

そこまで言って、言葉を詰まらせた。

「魔王、ベルゼブル、偉大な父上は、先程、亡くなられた」

どよめきが起こり、中には叫びだしたり、泣く者もいた。


「そして!今日から私が二代目魔王となる」

歓声が起きた。


「みんなに、言っておきたいことがある」

しばらく、間を置いた。

固唾を飲んで大衆は見守る。


「私は、ベルゼブル王とは、根本的に主旨が違う」

観衆はざわついた。

「私は人間を滅ぼしたりしない!人間との和解をし、人間も魔族も共に平和を造り、協力し、この素晴らしい地球を守っていきたいと考えている!」

観衆はシンとしている。

ほとんどの観衆は鳩が豆鉄砲を食らったかのようになっている。

「皆の者には人間に殺された家族や友人もいるだろう。しかし、人間にも私達に殺された家族や友人がいるのだ。どっちが先かは分からない。今は亡き、ベルゼブル王や私達は、人間たちの環境汚染により、我々魔族が地底から出る羽目になり、荒地に私達が畑を耕していると、急に人間に殺されたという。人間は急に私達に襲われ、街を奪われたという。この際、どっちかは関係ない。復讐は復讐を産み、復讐は不幸しか産まないのだ。私達は、共に赦しあい、共存していくことを選ぶべきだ。そうするなら、今いるみんなも、みんなの家族や友人も殺されることはない」


後ろにいる長老は頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くしている。


観衆はどよめき、ざわめき、泣き出す者、怒る者、拍手する者で収集がつかなくなっていた。

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