第15話【陛下視点】正直、書類整理よりも人間観察をしたいのだが。

人間の食事の用意をするよう部下に命令し、兵士とメイドを玉座の間から出払った、側近の二人を除いて。


「おい、おまえら」


「「はっ!」」


半狼半人のワーウルフ──────ガルシア。


そして、骸骨姿のスケルトン

───────バルロは目の前に跪く。


「あの人間は無害だ、敵ではない。客人としてもてなせ。だが、不満を持つ者もいることだろう。明日、直接あの人間から聞き取りを行うと皆に伝えておけ」


「「承知」」


思わず『無害だ』と言い切ってしまったが、大丈夫だろうか?


いや、しかしどう考えても‥‥‥‥‥。


「あんなでかい音を鳴らして余を倒そうなどとする間抜けはおるまい‥‥‥‥」


思わず呟いたのだった。






****





「はぁ‥‥‥」


あれから自室に戻り、山のように積み上げられた書類を一枚一枚確認しては積み上げるのを繰り返していた。


それは翌日まで続いていたのだった。


魔族は人間と違って、毎日睡眠を取らずとも一週間に一度とるくらいで丁度良いくらいで体調を崩すことは滅多にない。


コンコン。


「失礼します」


自室の扉をノックし、部屋に入ってきたのはガルシアだった。


俯いたガルシアの顔は暗い。


「どうした?」


いつもの報告の時とは違う雰囲気。


何かよからぬことが起こったようだ。


「じ、実は─────」


ガルシアの報告はこうだった。


メイド長のリーナが朝食のために客間へ入った。


リーナは床に倒れている人間を見つけ、叫び声を上げた。


それを聞きつけ、客間に入ってきた皆が驚いた。


人間の少女が白目をむいて、開いた口からは血が流れていたことに。


呼吸の確認をしたリーナは人間が呼吸をしていなかったため、死んだと思った。


周囲もリーナの曇った表情を見て、それを悟ったらしい。


その時、メイドのラナが証言したそうだ。


人間を客人として認めず、独断で部屋の前に見張りをつけ、さらには昨晩、人間に短剣を向けているのを目撃したという。


それを聞いたその場の者は、リーナが犯人ではないかと思った。


問いただせば、『短剣を向けたのは事実だが、殺していない。あれは早とちりだった』と話したそうだ。


はっきり言って、もう罪を認めているようなものだ、と思った。


しかし、許せないものだな。


せっかく面白い人間を見つけたというのに、殺してしまうなど。


とにかく聞いた内容だけでは、罰は与えられまい。


直接本人に確認してみるとしよう。


もし、犯人が確定すればその場でその者を処刑してやろう。





魔王─────ダンタリオンは不気味な程までに口の両端をつり上げたのだった。


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