第14話【陛下視点】うん‥‥‥まぁ、なんだ。なんかすまんな。

‥‥‥‥‥まぁ、この書類は明日にでもまわせばいいか。


人間はようやく身体を起こすと、近くの木に登ってきょろきょろと辺りを見渡し、ピシリと石のように固まった。


自分がいまどこにいるか分かっていないような行動だ。


このまま観さ‥‥‥いや、様子を見ていても得られる情報はなさそうだ。


こっちにつれてくるか。


余が城を出るわけにもいかんしな。


自室からバルコニーへ移動し、空を見上げた。


「おい、おまえあの人間生きたままここに連れてこい」


その辺を飛んでいた野良のドラゴンに声を掛け、記憶共有で場所を示せば、いまにも襲いかかってきそうな雰囲気を纏いはじめた。


面倒くさかったので魔力覇気で威圧し、強制的に従わせた。


玉座の間に移動し、造形美なステンドガラスを背に椅子に腰掛ける。


しばらくすると、ステンドガラスを照らす日の光が一瞬真っ暗になり、ドラゴンが到着したのだとわかった。


扉に向かって手を右から左へ振れば扉が開く。


「ご苦労、下ろせ」


そう言い放つと、ドラゴンは人間をゆっくりと下ろした。


「貴様、どうやって余の大陸に入ったのだ?」


ぎろりと睨みつけ威圧する。


大抵の人間はこれで吐く。


が、目の前の人間はそうはならなかった。


状況を理解できていないのかキョトンとしている。


何も話さない。


いや、なにも話せないのだろうか?


いままでの行動から、魔大陸がどういう場所かわかっていないようだった。


本意で侵入してきたわけではない?


そんな時だった。




グゴゴォォォーーー




? なんの音だ?


ドラゴンに目を向けたが、咆哮をしたわけでもなさそうだ。


再び、人間に目を移せば、顔を真っ赤に染め、お腹を抱きしめていた。


あぁ、そういうことか。


「陛下―――――――!」


と大勢の足音とともに中に入ってきたのは、我が魔族軍の兵士とメイドたちだった。


「ご無事ですか!?」


「余は無事だ。さがれ」


「しかし! 先ほどの大きな音は、ただ事ではございません!」


兵士たちは人間を取り囲み、武器を向ける。


「なにもなかった、だから下がれ」


これは、さすがに可哀相だろ。


腹の音を鳴らしただけで殺されるのは。


「陛下! ですが」





グゴゴォォォーーー





凄まじい轟音。


直後の静寂。


そして、皆、武器を下ろした。


どうやら音のでどころがどこからなのか皆、察したようだ。


「陛下、これは」


「あぁ」


「すみません。私のおなかの音です」


人間の頭から湯気らしきものが見える。


なんか‥‥‥‥‥まぁ、そうだな。


本来ならば王としての立場上、尋問等の取り調べを行なってから判断するべきなのだろうが‥‥‥‥‥敵ではないな、こいつは。


むしろ、これが敵なら本当に間抜けであるが‥‥‥‥‥。


とりあえず、早く食事を用意させた方がよさそうだ。


ほっておけば、この人間は飢餓ではなく羞恥心のあまり死んでしまうだろうからな。

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