第12話警戒心ゼロは、やばいよな。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグモグモグモグモグ‥‥‥
Sランクの音をならした後、また、ご飯をご馳走になっていた。
そこまでは、昨日と同じだった。
「あの、陛下、食べにくいんだが‥‥‥」
「気にせず食うがいい」
陛下が目の前にいることを除けば‥‥‥‥。
「陛下と呼ばれる、位の高い人が目の前にいたら、緊張して食事が喉を通らないだろうよ‥‥‥‥」
「食事は喉を通っているように見えるが?」
「例えですよ、例え。とにかく、このペースでは腹は満たされんのよ」
「腹を満たせるほどの食材はおまえが食い尽くせんくらいある。急がず好きなだけ食え」
いまさらだが、なんでこんなにもてなされてるんだろうか?
ハッ! さては‥‥‥‥
「豚のようになるまで私を太らせ、最終的に私が食材になるということはないよな?」
「‥‥‥だとしたら、どうする?」
口の端を不気味な程までつり上げてにやりと笑みを浮かべるその顔は、まさしく悪魔。
あ、これアカンやつや。
脳が危険を察知してNOと叫んでいる。
脳だけにNO、なんちゃって。
危険を知らせるサイレンが身体中に張り巡らされた神経から細胞に響き渡り、身体を動かす。
脳は、身体は、『逃げろ』と言っている。
ガッシャーーーーーーーーーン!
防衛的反応とでもいうのだろうか。
無意識的反応とでもいうのだろうか。
性格的反応とでもいうのだろうか。
とにかく、ごく自然に身体が動き、食堂の窓硝子を突き破った。
からだがふわりと宙に浮く。
不思議と、
焦りはない。
恐怖もない。
後悔はない。
凶器となった硝子の破片が、ちくりと肌を刺したが気にとめるほどの痛みではなかった。
死ぬかな。
静かに悟った。
思ったよりも簡単に、すとんと受け入れられた。
死に方を勝手に決められるくらいなら、こっちで先に決めてやる。
自分がこんなにも無鉄砲だとは驚きだが‥‥‥‥。
「ぐえッ!」
このまま落ちて死ぬと思っていたら、首根っこをつかまれた。
「大丈夫ですか? お嬢様」
顔を上に向ければ、メイドのリーナがそこにいた。
お嬢様? 私のことか?
「陛下、人間であるお嬢様に魔力覇気を浴びせて試そうなどとしてはいけませんよ。しかも食事中に‥‥‥‥」
「すまん、リーナ。相手を試すには、気が緩んでいるときこそが見極めやすいというものだ」
「‥‥‥‥左様でございますか」
「だが、これで安心できただろう? この人間が敵ではないということがな」
‥‥‥‥‥うむ。ちと周りを信用しすぎたかな?
これからは警戒するよう心がけるとしよう。
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