第11話HAZUKASIーーーー!
「はぁ‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥」
走った直後の大声は、正直きつい。
だが────────。
「人間っ! なぜ‥‥‥‥‥」
驚く陛下の前には、拘束されたリーナの後ろ姿があった。
どうやら間に合ったようだ。
ふっと息を吐いて安心する。
呼吸を整えて、陛下に歩み寄った。
「死んでいなかったのか‥‥‥‥‥」
そう言った陛下は目を丸くし、まだ驚いている。
「‥‥‥‥‥いや、最初っから生きてるし」
思わず苦笑いで答えた後、今回の勘違いを正すために説明をした。
説明を‥‥したのだが‥‥‥‥‥。
てんてんてんチーン。
陛下は空を見つめたまま動かない。
「へ、陛下?」
「‥‥‥余をからかっているわけではないのだな?」
良かった、てっきりばかばかしい事実を聞いたせいで天に召されたのかと思ったよ。
「じゃなきゃ、こうやって止めにこないって」
「‥‥‥‥‥人間、敬語はどうした?」
「あっ‥‥‥‥‥」
そういえば、敬語、今日使ってないわ。
ここで説明しておこう。
私は非常に面倒くさがりで、敬語も1日しかもたない。
初対面では敬語だが、2日目以降はタメになる。
良くいえば、フレンドリー。
悪くいえば、生意気で馴れ馴れしい奴。
さて、陛下はどちら側なのか。
「すみません。さっきまで混乱していたので敬語を忘れていました。以後、気をつけます」
「‥‥‥‥‥いや、そちらのほうが新鮮でいい。ため口でいい。許可する」
「ありがとうございます」
陛下にため口で話せるような位の者はいないのかもしれない。
いたとしても、腹の探り合いばかりで気を抜いて話せないのかもしれないな。
大変なんだな、陛下って。
あっ! てっきり忘れてた。
「陛下、リーナの拘束解いてくれない?」
「‥‥‥‥そうだな。リーナ、すまなかったな」
「いいえ。そもそも私の犯した失態が招いた結果です。陛下のお手を煩わせてしまい申し訳ございませんでした」
「いやいや。私の寝相が悪かったせいで起きた事件だ。リーナ、陛下、ごめんなさい」
「いいや。余、自ら動いて調べれば死んでいないのだと気がついたはずだ。余にも責任がある」
「いいえ、私が悪いのです!」
「いやいや、私が!」
「余が!」
「私が!」
グオオオオォォォォォオオオオオォォォォォオォーーーーーーーーーーーーーーー!
「これは‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥またか?」
「すみません。また、私です」
そういえば、ごはんまだだったわ。
玉座の間で、二度目のドラゴン級の空腹音です。
一度目を、Aランクの音とすれば今回はSランクの音。
HAZUKASI―――――!!
「「「「「陛下あぁあぁぁああああぁぁぁぁ、ご無事ですかああぁぁあぁぁ!!」」」」」
駆け込んできた兵士の数も前回よりも倍でした。
「‥‥‥‥余は無事だ」
羞恥心パラメータMAXです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます