第10話「壁、壁、壁、壁地獄」

「地獄っていうか……」

「完全に牢屋って感じだね」

 今回二人が来た場所は、牢獄であった。

 三方を石のブロックの壁で囲まれ、目の前にはとてもすり抜けたり折ったりはできなそうな鉄格子がはめられている。

 そして鉄格子の向こう側もまた四方を石のブロックで囲まれた、立方体の部屋になっている。たとえ、鉄格子を外せたとしても何らの解決もなさそうである。


「なんか、謎解きの要素なさそうだなあ。ぱっと見なんかギミックとかなさそうだし、ヒントになるような図とかもないからね」

 周囲を簡単に観察しながら、するおはそういった。見る限り、今までのような特殊なオブジェとかも存在せず、ただ何の変哲もない牢屋といった感じである。


「あの、するおくんごめんなさい……。また、なんか余計なことしちゃって」

 先ほどのミスの時と違って、さすがにラビリンスは殊勝な様子を見せる。

「……過ぎたことは仕方ないよ、それよりこの部屋にも何かあるのかもしれない、ラビィも頑張って何かを探して」

 本当ははらわた煮えくりかえるほど腹が立っていたが、必死に抑えて、するおはラビィを許した。この先どうなるかわからないが、ラビィはかわいいかわいい初カノである、スルオとしては大切にせざるを得なかった。

 それを聞いたラビィは、部屋中の壁を調べ始めた……、すると、


「ねえ、するお君。なんかこの壁うごくっぽいんだけど……」

 ラビィは、鉄格子の背にある壁のブロックの一つを何やら押そうとしている。確かにブロックは、ぐらついており、強く押せば外れそうだ。

「ナイス! ラビィ、いけそうだね、それ。僕も手伝うよ」

 とするおが言おうとしたとき、ラビィはすでに行動に移っていた。ラビィは狭い牢獄内で助走を取ると、その壁に向かって走り出して、思い切りドロップキックをぶちかました。


「うひゃあっ」

 どしゃーんという音とともに、ブロック壁は崩れ去り、そしてその崩れたブロックに巻き込まれたラビィから変な声が聞こえる。

「ラ、ラビィだいじょうぶか?」

 慌てて、するおはラビィに駆け寄る。

 この女は一体何を考えてるんだという冷静な突っ込みより先に、心から彼女の身を案じる行動が出てしまうほど、ブロックは激しく崩壊したのだ。


「いたーーーいっ!」

 ところが、とても元気よさげな声をあげながら、崩れたブロックの中から、ラビィは平然と起き上って出てきた。彼女はスカートをはいて割と素足むき出しであるのだが、不思議とかすり傷一つついていないようである。


「よ、よかった、無事そうで……」

 するおは若干ひきながらも、ほっとしていた。


「ラビリンスの家では、昔からブロック崩しの練習をしているから、こんなん余裕っしょと思ったんだけど、スランプかなあ……結構、痛かったyo」

 一体城山フランソワーズ家ではどういう教育を施してるんだと、心からするおは、疑問に思ったが、もちろん声には出さなかった。しかし同時に、きっとこの恋の終着点に結婚の二文字はないんだろうなと直感していた。


 ラビィの無事を確認して、するおは話を現状の考察に戻した。

「結局、壁を抜けた先の部屋も、四方を壁に囲まれてるなあ、この部屋は鉄格子もないからなおさらどうしようもない」

 そういいながら、壁に手を当てながら、部屋をぐるりと歩く男、するといまぶち抜いた壁から進んで、右手側の壁の一部に動くような感触があった。

「おっ、ここはおして外せそう」

 少しするおは強めに壁を押す。

「するおくん、私に任せて、今回はクールにこわしてみせるyo」

 すると再び、ラビィが助走をとろうとしている。本当にわんぱくなお嬢さんであった。


「いや、そんな無茶しなくても、たぶん全部押して外せるから」

 そういいながら、ラビィの暴走を止めて、壁のブロックの一つを強く押した。すると、あっさりとブロックは奥へとはずれて落ちた。

 そして、スルオの腕が、そのまま隣の部屋に伸びた瞬間、スルオの腕に電流のような鋭い衝撃が走った。

「ぐあっ!!」

 すぐさま、するおは腕をひいた。そしてあまりの衝撃にするおはバランスを崩して、その場に転がり苦しんだ。

「す、スルオ君!」


「――いってぇ、どうやらこっちの壁の奥の部屋は危なそう……」

するおは、声にならない声を出しながら、もだえ苦しむ。


「そ、そうみたいね。ねぇスルオ君、こっちの壁のブロックも外せそうなんだけど」

 ラビィは、入るために壊したブロックの反対側の壁に手を触れている。とくにスルオを心配して駆けよったりはしてこない。


「……くれぐれも慎重にね、いまみたいに電流の罠とかあるかもしれないし」


―――――――――※ここで現状の確認。―――――――――――――――――――

 

   ①ラビィが動かそうとしてる

   ↑ 

 ②←□→③電流が走った

   ↑壁を壊して侵入

   □

 最初の部屋(鉄格子があった) 

   □

 この部屋も何もない


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「すべての壁のブロックは動かして外せるのかもしれないな……」


果たして、二人はこの後、どういう行動をとればよいだろうか。

とりあえず、①、②のどっちに進むべきか?

はたまた、電流を我慢して③の方向に進むべきなのか?

 それ以外の選択なのか?


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