第2話 異世界の街

「何だここ……!?」

 そこは、歌舞伎町にそっくりな街だった。

「お兄さん遊んでかない?」とキャッチが声をかける光景も、居酒屋やカラオケ屋が並ぶ光景も、歌舞伎町がそのまま移動して来たと思ったほどだ。

 1つだけ違うのは、街ゆく人や客引きが「人間じゃない」事だ。

 人の形はしている。だが人ではないのだ。

 服が洋服じゃないし、俺にも分かるほど神々こうごうしいオーラのような物を感じる。

 とりあえず、人を探さなければ。

 そう思い、歩き出したその時、何かが身体にぶつかった。


 じゅうひとえのようにすその長い着物を着た女の人だった。

「……わらわの顔に何か付いておるか?」

 我に返った。見とれてしまっていたらしい。

「いや、なんも付いてねっす。あ、ちょい待ち!」

 歩き去ろうとするその人を慌てて呼び止める。

「何じゃ、まだ何かあるのか」

「すいません、ここってどこっすか!!」

 周りの人が一斉に振り返った。

「貴様、ぐらまちの者ではないな!」

「か、かぐらまち??」

「いいからこっちへ来い!」

 いきなり腕を引っ張られ、引きずられるようにして路地裏へ連れ込まれた。


「あの、神楽街って何すか?」

 先ほどからの疑問を口にする。

「貴様、神楽は知っておるか?」

「知らねっす」

「神楽はな、神に奉納するための舞じゃ。神楽この街の名はそれに由来しておる。1つだけ違うのは、普通は『人間』が『神』を楽しませるが、神楽街ここでは『神』が『神』を楽しませるのじゃ」

「じゃあその辺りを歩いてるのは……」

「神じゃ。わらわもそうじゃぞ」

「マジ!? 何て名前?」

「わらわはおとたちばなひめじゃ。周りからは略して弟様おとさまと呼ばれておる。貴様の名は何という?」

 弟様はドヤ顔で名乗った。

「煌星っす。京極煌星。そーいや神楽街ってどこにあるんすか? 歌舞伎町っすか?」

「確かにここは歌舞伎町をモデルにして作ってはいるが、貴様がいる世界とは別の世界じゃ」

「マジか!」

「貴様が元の世界に帰ったら、行くあてはあるのか?」

 突然質問された。

「無いっすけど…………」

「ちょうどいい。煌星、わらわに付いて来い」

 弟様はきびすを返し、歩いて行く。

 俺は慌てて追いかけた。

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