最終話 俺の冒険はこれからだ!

朝。

いや、もう昼か……


天井を見上げ、ゆっくりと起き上がり確認する。

自分の体を。


グローブは……なし。

体は……全裸。

靴も……当然無し。


………………よし!


俺は寝ていたベッドの上に立ち上がり、両手を突き上げ静かにガッツポーズをとる。

感動しすぎて声も出ないとはこの事だ。


姫との戦いから2ヶ月。

長く……本当に辛く苦しい2ヶ月であった。


だがついに俺は解放された!

魔法少女の仮装から!!!



結局姫との戦いは勇者と2人がかりですらきつく。

勇者からの提案で奴と俺とで融合し、何とか倒すに至る。


そして融合解除の際、全てを押し付けられた。

仮装も性転換も両方全て。


ガッデーム!


本来変身の魔法は1ヶ月で解ける所、奴の分も押し付けられたため俺は2ヶ月という倍の期間、苦渋の時を過ごす羽目になったのだ。

しかも変身中は魔法抵抗が偉い事になっているため、性転換の呪いを解除できずにセットで背負い続ける破目に。


そんな状態で外を出歩けるはずもなく、お陰で今や立派な無職だ。

異世界を救った代償がこれでは余りにも報われない。


…………まいっか。


仕事なんざまた探しゃいいし、最悪あのセレブのガキンチョ共から授業料と称して金を巻き上げればいい。

今はとにかく、地獄の様な引きこもり生活から解放されたことを素直に喜ぼう。


「そういや、男に戻ってるな」


改めて自分の体を眺めると、胸はぺったんこ。

股間からはゴン太さんがこんにちはしている。

どうやら変身解除に合わせてそっちの方も解除されたようだ。


「お帰り、息子よ」


嬉しさの余り手で息子をぺしぺし弾いてぶらぶらさせて遊んでいると、室内に悲鳴が響き渡る。


「キャーー!!ゆ、勇者様!何をされているんですか!?」

「おう、デカいじゃろ。姫さんもぺしぺしする?」

「しません!そんな事よりも早く服を着てください!」


凄く楽しいのに、そんな事とは失敬な。

しょうがないのでシャツだけ着て声を掛ける。


「着たぞ?」

「嘘です!ちゃんと服を着てください!」


ちっ、勘のいい女だ。


渋々ズボンを履き、もういいぞと声を掛けようとするがやめる。

折角目を瞑ってくれているのだ、この絶好の機会を逃すわけには行かない。そろりそろりと気配を殺して姫に近づき、そのたわわな果実を堪能するべく俺は手を伸ばす。


「なにをしてるんだい?」

「おう、アルビダおはよう。いやなに、ちょっと朝の挨拶をば」

「そんないやらしい手つきの朝の挨拶なんざ、見た事ないわよ?ていうかもう昼だし」

「お前はこの世界に来て日が浅いから知らないだけだ。後、朝も昼も似たようなもんだ、気にするな。さ、子供は外で遊んでいなさい」


シッシッと手を振りアルビダを威嚇する。


「別にいいけど、姫さんもう目を開けてるわよ。あと―――――」

「あ……私の事は気になさらないでください。私は……お邪魔でしょうから……」


レアーニャが半べそかきながら出て行こうとするが、それを姫さまが引き留める。


「邪魔だなんてそんなわけないじゃない!私とあなたは同じ方を愛する同志なんですもの!」

「姫様!」


力いっぱい抱きしめあう二人。

こいつらレズか?



あの戦いの後、肩書捨てるんなら愛人にしてやるとテール姫に言ったら、1も2もなく彼女は乗ってきた。

あっちの世界ではやらかしまくってるわけだから、追放の意味も込めてこっちの世界に連れてき分けだが。何故かレアーニャとアルビダ迄付いて来て今や4人暮らしだ。


ハーレムウハウハだと思うだろう?


だがテールとレアーニャはお互い遠慮しまくって、挙句によく分からん協定を結んで抜け駆け一切なしとかほざきだす。

おかげでこの2ヶ月エロイ展開が一切ない。

何かしようとするたびに、毎度さっきの様な展開になる。

死ねばいいのに。


アルビダに到っては子供の姿で生活しやがる。

呪いは解いてやったというのに。

姫に頼んで呪いをかけなおしてもらうとか、どうなっとんじゃい!


「なに人の事睨みつけてるのよ?」

「いや、いい歳して子供ごっこはどうかと思うぞ。大人は大人らしく夜のお遊戯しようぜ!」

「別にいいけど?」

「え!?まじで!?」


やったぜ!何事も言ってみるもんだ!!


「ただし、あっちを納得させられたらね」


そう言うアルビダの視線を追い振り返ると、能面の様な顔で死んだ目つきの二人が此方を見つめていた。


ちっ!

もうレズごっこ終わってやがる。


「外野は気にするな」

「冗談でしょ?あたしはまだ死にたくないわよ」


気にするな、俺が守ってやる!

とかっこよく言いたいところだが、姫さんは俺より強いからまず無理だった。


「んじゃあ、あたしはまどか達と約束があるから。後は3人でゆっくり話し合って決めなよ。じゃあねー」


ええ年した女が、小学生の子供に混ざって遊ぶなよな。

そう言おうとしたがやめた。

アルビダは悲惨な幼少期を送っていたらしく、手に入れる事の出来なかった青春を謳歌したいらしい。

それを邪魔するほど俺も無粋ではない。


どちらにせよ姫とレアーニャ邪魔者達が居る以上、Hな展開には持ち込めないので、まあ好きにさせておこう。


「勇者様。こんな事を言うのも差し出がましい事ですが、あのような穢れた女は勇者様には相応しくないかと」


他人を穢れた呼ばわりとか、魔人将として迷惑活動してたあんたがそれを言うの?

レアーニャの一言に心の中で突っ込みを入れる。

まあ、本人もその辺りを相当気にしてる様だから口には出さないが。


実はレアーニャも比較的短期間ではあるが、姫に勧誘され魔人将、通称勇者様大好きファンクラブの一員として姫に尽力していたのだ。


「どうでもいいけど、そろそろどっちが先か決めてくんね?」


女の間はある程度仕方ないと諦めていたが、折角男に戻っても手が出せないんじゃこいつら連れてきた意味がねぇ。


「そ、それはまだ心の準備が。それに姫様を差し置いて私などは……」

「わたしだってそうです。レアーニャを差し置いて勇者様と結ばれるだなんて」

「じゃあ3人で一緒に」


我ながら素晴らしい名案を提示。

一粒で二度美味しいとは正にこの事。


「勇者様!あなたは愛の営みを何だと思ってらっしゃるんですか!?」

「気持ちよくて楽しい事」


それ以外ないじゃろ?

もし辛くて苦しい事なら誰がするかよ。

ああでもマゾなら喜ぶか。


だが残念な事に俺にはそっちのけはない。


「勇者様!それは違います!愛とは快楽などではなく、もっと尊きもの!お互いの気持ちと温もり、命の共有こそが真実の愛なのです」


真実とか興味ないんだが?


「テール姫様のおっしゃる通りです!良いですか――――」


説教が無そうなので適当に聞き流し、ベッドに潜り込んで耳を塞ぐ。


「ちょっと勇者様!ちゃんと聞いてください!」


当然無視する。


はーやだやだ。

何でこの状況でお預けくらわにゃならんのだ?

やっぱ現実は糞だな。


あっちの世界も姫が居なくなったことで状況が落ち着いちまっただろうし、もう胸をすくような冒険は出来ないだろうな。残念だ。


ん?あれ?

そもそも俺冒険なんかしてたっけ?

思い返すとセクハラしかしてない事に気づく。


それもこれも全て見ていた夢が悪い!

もっと健全な夢なら俺だってちゃんと冒険してたはずだ!

そう!俺は悪くない!



……

………

……………何だか眠くなってきた。2度寝するとしよう。


目を瞑ると、瞬く間に意識が薄れる。






「……さ……」


女の声が聞こえる。


「……さ……!ゆ……」


さゆ?喉でも乾いてんのか?


「ゆうしゃさま!ゆうしゃさま!」


ああ、勇者か。

聞きなれない声に目をゆっくりと開く。

そこにはたわわな実りが二つ。


ほほう。

これはこれは。

金メダルだな。


いやまだ金メダルを贈与するには早いか。

胸100点顔0点なんてよくある事だ。


俺はドキドキしながらゆっくりと視線を上げ、顔を確かめる。


横たわる俺を心配そうにのぞき込む濡れた蒼い瞳。

整った顔立ちに長いまつげ。

少しぽってりした真っ赤な唇。

その全てが俺の視線を釘付けにする。


100点満点!

完璧超人現る!!


「良かった。やっとお目覚めになられたのですね」


俺が目覚めた事を喜び、泣きそうな表情もそそる。


「うむ!俺は目覚めた!さあエロい事をしよう!」

「勇者様、混乱されているのですね。それも無理ありません」

「ん?いや別に混乱してないぞ?これが俺の平常運転なんだが?とりあえずエロい事をしようぜ」


俺は立ち上がりながら答える。


「ここは異世界アストラリエ。この世界を救っていただくため、勇者様を召喚させていただいたのです。どうか御尽力お願いいたします」


スルーされた。

しかも聞いても無いのに事情説明しだすとか。

都合の悪い事は聞こえないふりするタイプの子かな?


うん!でもそういう子嫌いじゃない!

だってビジュアル100点満点だし!!


だから頭を仰々しく下げる彼女に答える。


「任せろ!その代わり世界を救ったらエロい事させてね!」

「本当ですか!!ありがとうございます!!」

「エロい事が交換条件だからな!これ重要!!」


後々とぼけられない様念押ししておく。

何事も最初が肝心だ。


「エロい事ですか?よく分かりませんが、私に出来る事なら何なりとお申し付けください」


よく分からないといった風に小首を傾げるが気にしない。

重要なのは知ってるかどうかではなく、約束したかどうかだ。

約束さえしてしまえば後はどうにでもなる!!


めくるめく官能世界を想像し、俺は決断する。


良し決めた!

俺はこの世界で第二のエロい人生をスタートする!!


元の世界に残してきた奴らの事が少し気がかりだったが、レズ二人とアルビダは魔法が使えるし、俺がいなくても別に生きて行けるだろう。

仕事も首になってるし、まさに後顧の憂いなしだ!


「俺の冒険はこれからだ!!!」



~~~~~~END~~~~~~~




光の速さで姫様達に見つかりました。

ガッデーム!

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おっさんだけど、夢の中でぐらい無双してもいいよね!?~異世界へ日帰り転移~ まんじ @11922960

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