第51話 二人は優しいキスをして
くっそー、どうなってんだ姫さんの強さは?
底なしかよ!
地面深くにめり込んだ体を起こし、這い出る。
「やっぱいなこりゃ」
空を見上げると、姫が上から俺を楽しげに見下ろしていた。
「レースの黒か……」
全身に纏わりつく土埃を払いつつ呟く。
エロいパンツ履きおってからに。
褒めたら機嫌直してかぶらせてくれるかな?
「余裕だな」
「ん?なに?嫌味をわざわざ言いに来たのか?」
本当に何しに来たのか、勇者が険しい顔つきでよって来る。
ぶっちゃけ足手纏いだから離れてて欲しいんだが。
ひょっとして空気読めない子?
「作戦がある」
「作戦?」
超インフレパワーバトルに作戦の入る余地なんざないだろ。
考えている事をもろに顔にだす。
仮にも相手は勇者だ。
声に出して追い払うのは可哀想なので、KYな奴でも一目で察せる位の最高の不満顔で応待した。
「耳を貸せ」
通用しなかった。
真性かよ!
だがそれ位じゃないと勇者は務まらない。
やるじゃないか!
間違いなくお前は相棒だぜ!
俺は親指を立て、ウィンクする。
「何をしている早く耳を貸せ」
「おう!どうした相棒!」
「ああ、個人的には余り気が進まないんだが実は――」
次の瞬間顔を横に向かされ、次いで口が塞がれた。
奴の唇で。
「…………」
「…………」
時間が止まる。
「………………」
「………………」
「何しやがる!!?」
勇者を跳ね除け、俺はファイティングポーズに。
舌入れやがった!
こいつは敵だ!
コロス!
吹き飛ばされた勇者がゆっくりと立ち上がり叫ぶ。
「マジカルパワー!メイクアップ!」
そして回転。
「なにぃ!まさか!?」
驚愕に声を上げる。
こいつ、まさか変身する気か!?
さっきのキスで俺から情報抜きやがった!
「おい、待て!その体で変身は不味い!マジ勘弁しろ!!」
俺は焦り奴の変身を止めようとするが、テール姫に邪魔される。
さっきまで高みの見物してた癖に、なんでこのタイミングで動く!?
「私を無視してぇ!自分とぉ、いちゃつくなぁ!」
いちゃついてねぇ!
俺に自己相姦する趣味なんざねぇよ!
今はメンヘラの相手なんざしてる暇はない!
どけ!!
全力でスティッキを叩きつけるが受け止められた。
「ぐううううう!姫さん!結婚でも何でもしてやるからそこをどけ!!」
「嘘です!騙されません!!」
ヒイィィィ!
マジで!マジで勘弁してくれえぇぇぇ!
だが俺の願いは虚しく、辺りはピンクの光につつまれた。
▼
「な……何です!?勇者様のあの格好……」
地面から這い出て来た勇者の姿に思わず言葉が詰まる。
顔はそのままに、豊満な肉体にフリルいっぱいの可愛らしい衣装を纏う姿は、完全に珍獣である。
あの人らしいとも言えなくも無いが、いくら何でも酷すぎない?
「魔法少女よ!」
「あれが魔法少女?」
フレイムさんが先程口にしていたのはこの珍獣の事だったのか。
しかし何故彼女はこんなに嬉しそうなのか?
私には理解できない。
「それよりもあれを見なよ」
アルビダに促され視線を上にあげ、驚愕する。
「そんな……テール姫様」
「あたしらは完全にいっぱい食わされていたみたいね」
まさか姫様が魔人将?
そんなまさか!?
なんで!?
「あ!キスしたわ! 」
は?キス?
誰と誰が?
まさか姫と勇者様が!?
混乱する頭を置き去りに、意識を現実に引き戻し視線を勇者様達の方へと向ける。
その瞳へと飛び込んできたのは、勇者同士の熱い口づけ。
……
…………
…………………
「ええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!?」
「女に興味なさそうだとは思ってたけど、まさかこんな趣味があったとはねぇ?」
「フリーザー様!?どうして私の目を塞がれるのですか!?今いい所なのに!」
「フレイム、君には少し早い」
「そんなことありませんわ!後学の為にも!!!!」
何がどう後学のためになるのかという疑問はあるが、今はそんな事よりもキスしている2人に視線が釘付けになる。
「吹っ飛ばされたわね。まあ、あっちの方は女にしか興味がないんだから当たり前か」
「え!?何?何が吹っ飛ばされたの!?フリーザー様お願い!!!」
「駄目だ」
勇者様の方が吹き飛ばされたって事は、勇者様の方からキスしたって事?
あっちの方じゃなくって?
え?え?勇者様ってそういう趣味だったの?
もう一人の勇者と姫との戦いが再開したが、もはやそれどころでは無かった。
勇者様を茫然と見つめていると、突如全身からピンクの光が放たれる。
その光が収まり、変わり果てた
次回はロスタイム!
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