第41話 壊れた者は叩けば治る 

とんとん飛び跳ねる。

黙々と。


「いつまで飛んでる気だい?」


アルビダが悪びれた様子もなく聞いてきやがる。

人のあそこを蹴り飛ばしておきながら、とんでもない女だ。


これが色気むんむんの美女なら辛うじて御褒美と言えなくもないが、ちんまいガキが相手では只のやられ損もいいところだ。


「ふぃ~」


下腹部の疼きが収まった所で、飛び跳ねるのを止めアルビダを睨めつける。

しかし睨まれてもアルビダは全く動じない。

そんなふてぶてしくも憎たらしいクソガキを見下ろしながら俺は誓う。

いつか絶対悶絶レベルの浣腸をぶちかましてやると。


「やれるもんならやってみな」


腕を組みながら俺を挑発するかのようにアルビダが言い放つ。


どうやら俺の考えが読まれていたようだな。

ガキの癖に中々油断ならない奴だ。


「言っとくけど。あんたさっきから考えてる事口から出てるよ」


なんですと!

ちんこ!


「勇者様!いきなり下品な事叫ばないでください!」


おかしい?

喋ったつもりはないのに何故か口から言葉が出てやがる?


「また何を訳の解らない事を言ってるんですか?」

「いや冗談抜きで、考えた事が勝手に口から出てくるんだが?」

「え?冗談……ですよね?」


少年が驚くのも無理はない。

俺もびっくりだ。


「その様子じゃ、本当みたいね?」

「え!?まさか本当なんですか?」


んむ。

だが特に問題は無いから、まあ別にいっか。


「で、ここには何しに来たんだ?」

「いやいやいや!良くないですよ!そんな異常事態!」


大袈裟な奴だ。

考えた事が口から出るぐらい、どうって事ないだろう?


「流石に問題あるのでは?」

「まあ、普通はあるわね」

「俺は考えた事はほぼ口にしてるから問題ないぞ?」


現実だったらゲームオーバーレベルだが、夢の中なら全く問題ない。


「あの夢って?」

「細かい事は気にするな」

「まあ本人が良いってんなら良いんじゃないの?」


少年が少し心配そうに此方を見ているが、無駄な心配としか言いようがない。

こんなもんは唾つけてほっとけば治るもんだ。

あれ?でもこの場合何処に唾つければいいんだ?

脳みそ?


「脳みそに唾つけたら、その弱いおつむも少しは良くなるかもね」

「馬鹿者!そこは俺のチャームポイントだ!直してどうする!」

「馬鹿だって自覚、あったんですね……」


誰が馬鹿だこの貧乳!

俺様を馬鹿呼ばわりするのは10センチ早いんだよ!


「な!セクハラですよ!それ!それに馬鹿は勇者様が自分で言ったんじゃないですか!」

「言ってねーよ!チャームポイントとしか!そもそもそれなら貧乳だってお前自身が言ったんじゃねーか!」

「そんなこと言ってませんよ!」

「よーく思い出してみろ!」

「言ってません!!」


ちっ、引っ掛からなかったか。

迷わず即答されてがっかりする。


「貴方って人は……」

「はいはい、熱いディスカッションはそこまでよ。それで?どうするんだい?」


どうもしない!放って置けば治る!

以上!


「その自信は何処からやって来るんですか?」

「勇者だからに決まっているだろう!」


つまり根拠はない。


だが何も恐れる事などない!何故なら俺は勇者だからだ!

無根拠でも自分を信じて突き進む!

それが勇者だ!


カッコよくポーズを決めながら叫ぶ。


「さあ!黙って俺についてこっごぎょ!!」


少し前に感じたものと全く同じ痛みが下腹部に走る。

もはや振り返って確認するまでもなかった。


「なぜ……けった……」

「いやもっかい蹴ったら治るかと」


ギギギギ


こ の う ら み は ら さ で お く べ き か







結論:治ったので許した。

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