第34話 地図改変
目の前にオークが現れた!
どうする!?
1 友好的に挨拶する。 5へ
2 贈り物をする。 5へ
3 不思議な踊りで相手を驚かす。 5へ
4 お茶会へ誘う。 5へ
→5 とりあえず殺す。
ゆうしゃの攻撃!
オークに999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999のダメージ!
オークは死んだ!
「ふぅ……」
溜息を吐く。
別に疲れたからではない。
単に飽きただけだ。
オークの数が多かったので、色々と趣向を凝らし狩っていたのだが。
流石に100匹以上殺すと飽きてきた。
「なあ、もういいんじゃね?」
「良くありませんよ。生体感知で、この森には200匹はオークが入り込んでいるっておっしゃったじゃないですか。まだ120体しか倒してませんよ」
大失態だ。
最初の時点で100匹ぐらいと言っておけばよかった。
正直者が馬鹿を見る。
理不尽な世の中だ。
――ここはパルテの森。
最近この森にオークが住み着いたため、その討伐に俺達はやってきていた。
近隣住民の不安を取り除く、それは素晴らしい仕事だ。
素晴らしい仕事ではあるが、オーク如き勇者様に退治させんなよ。
こんなもんそこらに転がってる兵士で十分だろうに。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~」
前を行く少年に自身の不満を叩きつけるべく、わざとらしい大きな大きなため息を吐く。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~」
少年が無視するのでワンモアトライ!
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~」
駄目だ。完全に無視を決め込んでやがる。
鋼の精神を手に入れた少年の成長を喜びつつも、一抹の寂しさが心を過る。
これが親心というやつなのだろうか?
そんな事を考えながら、少年に膝カックンを決める。
「うわ!いきなり何するんですか!?」
膝を後ろから押され態勢を軽く崩すが、素早く持ち直した少年が非難の声を上げる。
「後ろががら空きだぞ!ここは戦場だ!油断するな!」
老婆心から少年に苦言を呈す。
正に上司の鏡ともいえる言動だ。
「後ろには勇者様がいるじゃないですか!」
「俺を信頼するとか、貴様の眼は節穴か!」
少年はフレンドリィファイヤという言葉を知らないらしい。
常日頃から俺が少年の首を狙っている事に気づかないとは、嘆かわしい限りだ。
もうちょい色っぽければ、首ではなく尻を狙ってやるものを。
その時、俺の尻に衝撃が走る。
後ろを振り返ると、アルビダが軽くこちらを睨みながら足を前に突き出していた。
どうやら俺の尻がセクシーすぎて、思わず足が出てしまったといった所だろう。
我ながら罪な男だ。
「アルビダ。悪いが幼女とSMするきはねーぞ?」
「あたしだってないわよ」
だったらその突き出した足はなんだというのか?
俺は思考を巡らし、ある一つの答えに行きつく。
「あの日か?」
今度は顔面に飛び蹴りをかまされる。
パンツ丸見えだったが、全然うれしくない。
今日のアルビダの出で立ちは赤のワンピース。
スカートの裾の部分にはフリフリのレースが編み込まれている。
ザ!美少女と形容していい出で立ちだが、残念ながら俺の心には響かない。
「赤か。子供なんだからもうちょっと可愛らしい色にしとけ」
「ほっとけ。それよりポエリはまじめに働いてるのよ。あんたにまじめにしろとは言わないけど、邪魔はやめな」
そう言いながら俺を睨みつける。
最近どうもアルビダが荒々しい気がする。
ひょっとしたら、邪神に何かされたのかもしれない。
もしそうだったら一大事だ。
万一の事も考えて、今度大人に戻った時にでも念入りに調べるとしよう。
「勇者様。スケベな妄想してる所すいませんが、オークです」
少年が前方を指さしながら、小声で話しかけてくる。
「よく気づいたな。やるじゃないか」
少年に称賛の言葉を贈る。
オークを見つけた事に。
では勿論なく。
俺のスケベな妄想を見抜いた事にだ。
「少年は剣を帯同してるが、扱えるのか?」
「!? 勿論です!!勇者様の足元にも及びませんが、剣の訓練は日々欠かさず行っています!」
俺の質問の意図を理解したのか、少年が興奮したように声を大にする。
「少年、声がデカいぞ?」
「す、すいません」
「まあいい、じゃああの2匹は少年に任せていいな?」
「任せてください!!」
だから声デカいっての。
幸いオークには気づかれていない様だが、少年はメンタルコントロールが今後の課題だな。
少年の顔を眺めると、今まで見た事が無いほど活き活きとしていた。
まあ今まで小間使い的な事しかさせてこなかったからな。
初めてまともな仕事が与えられ、興奮しているのだろう。
「じゃあ頼んだぞ」
俺の言葉に少年はコクリと頷くと、音を立てずにゆっくりと木の陰などを利用しオーク達に忍び寄る。
そして間合いが数メートルと迫った所で一気に躍りだし、オークの一匹を抜刀の勢いのまま切り裂く。
続いて、目の前で仲間のオークが切り裂かれ、唖然とした間抜け面のオークの首を刎ね飛ばした。
マジかよ!
すげぇ!
オークすげぇよええ!!!!!
弱い弱いと思ってはいたが、少年に瞬殺される程弱いとは。
本格的に勇者が相手する魔物じゃねぇな、こりゃ。
「ど、どうでした?」
此方に戻ってきた少年が、声を上ずらせながら訪ねてくる。
「え?普通」
少年に関しては、まああんなもんじゃね?
って程度だ。
城の衛兵よりはましかなってレベル。
だから普通としか返答しようがない。
「そ、そうですか」
少年が明かにしょんぼりとした表情で暗く返事を返す。
そんな少年を見て少し可哀そうな気はしたが、嘘の褒め言葉を言うのも何か違うような気がするのでしょうがない。
「まあ、あれだ。頑張れ」
「は、はい」
落ち込んでいる少年に、アルビダが悪くなかったよと肩を叩く。
上司として何か優しい言葉でもかけてやろうかとも思ったが、めんどくさいし少年のメンタルケアに関してはアルビダに丸投げするとしよう。
なにせ俺にはまだ大きな問題が残っているからな。
オークはまだ80匹ほど残ってる。
正直、オークをちまちま狩るのにはもう飽き飽きだ。
何とかならない物かと思案を巡らせる。
するとそこに天啓が下った!
「名案が浮かんだぞ!!!」
「は?何の事です?」
少年がきょとんとした顔で聞き返してくる。
そんな少年の疑問に、俺は興奮気味に答える。
「オークを一気に殲滅する為の名案だ!!」
「また碌でもない事考えてんじゃないでしょうね?」
「あの、止めておいた方がいい気がします」
失礼な奴らだ。
所詮凡人には天才の考えなど理解できぬのだと、俺は二人を無視して自分の出した答えを実行した。
その日、国の地図からパルテの森は消える事となる。
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