第18話 風邪薬
「ふぅ…」
「また溜息ですか?」
「少年は良いな。何も悩みが無くて」
「悩みぐらいありますよ。っていうかこのやり取り、昨日もやりましたよね?」
言われて納得する。そういや昨日もやってたな。
もっとも昨日の悩みはすでに解決済みで、今度は別の悩みではあるが。
何が悲しくていい年したおっさんが、他所のガキに悩まされにゃならんのだ。
「というか何で又溶岩地帯なんだ?」
昨日長時間の探索で焔の花を見つけたって言うのに、又溶岩地帯とか……
「二日連続同じとか飽きるんだけど?」
「何言ってるんですか?ここは昨日の場所とは違いますよ」
「同じに見えるぞ?」
「昨日いたのはグラムス火山で、ここはグレイムス火山の火口付近の洞窟です」
グラムスもグレイムスも大して変わんねーだろうに。
どっちにしろ火山帯の洞窟じゃねーか。
「2日連続で真っ赤な溶岩地帯とか気が滅入る。で?ここには何し来たんだ?」
「ここには、フレイムに昨日手に入れた焔の花を渡すために来てるんですよ」
毎度おなじみの質問タイムに、少年がうんざりだという顔で答えてくる。
相変わらず態度の悪い奴だ。
「因みに、花はフレイム用の風邪薬みたいなものです」
「うむ、説明御苦労。少年よ、大儀であったぞ」
少年の説明に対し、王者らしく鷹揚に答えて見せる。
これで俺の株も急上昇間違いなしだ。
さて、昨日聞いた話も含めて纏めるとこうだ。
フリーザーとフレイムは恋人同士であり、イチャイチャした結果、フリーザーの冷気に充てられてフレイムが風邪をひいてしまったと。
それに責任を感じたフリーザーが、風邪薬となる焔の花の収集と、フレイムへの輸送を俺に頼んだという訳だ。
これでもかと言うぐらい分かり易いお使いクエストだ。
俺は手元にある、魔力の封印に包まれた焔の花を見る。
昨日散々苦労して手に入れた代物だが、只の風邪薬と聞かされて地面に叩きつけたくなってきた。
風邪くらい気合と根性で直せよ!くそが!
「間違っても溶岩に放り投げたりしないでよ?」
俺の剣呑な雰囲気に気づいたのか、アルビダが釘を刺してくる。
アルビダの方を見ると、昨日のままのアダルトバージョンだ。
やはりでっかいって事は良い事だ。何がとは言わないが。
「わかってるよ。せっかくここまで来て破棄するとか、只のあほだからな」
「あんたは平気でそういう馬鹿な事するでしょ?」
もちろんする。
しかし流石アルビダだ。俺の事が良く分かってやがる。
心が通じ合うってのはこういう事だな。
後は体もくっついて、一心同体状態になれば完璧だ。
善は急げ。実行あるのみ。
「アルビダ。この仕事が終わったら二人で飯でも食いに行かないか?」
「勇者様!こんな時に何を言ってるんですか!!」
少年が食ってかかってくるが無視する。
これは子孫繁栄のための一大事業なのだ。
少年如きに構っている場合ではない。
「あら、いいわね。子供の姿でよければいくらでも付き合うわよ」
「よし!先を急ごう!」
ガキンチョに用はねぇ!
それでなくても現実の方でガキに頭を悩まされているのに、夢の中でまで子供とデートなど笑えない。
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