第17話 魔法少女現る!
「私!魔法少女になりたいんです!!」
その出会いは突然だった。
俺は仕事帰りに、近所のコンビニに晩御飯を買って帰ろうと立ち寄ったのだ。
そのコンビニの帰りに出会いは訪れた。
今は午後八時をすでに回っている。
にもかかわらず、恐らくまだ中学にも上がっていないであろう、一人の少女が俺の行く手を遮った。
一瞬知り合いかとも思ったが、よくよく考えてこの年頃の少女に顔見知りは居なかったはず。
ひょっとしたら度忘れしているのかと、少女を繁々と眺めてみる。
目の前の少女は10代前半といった所で、顔立ちは可愛らしく、美少女と言っても差し障りないレベルだ。
幾ら俺が子供に興味が無いとはいえ、これだけの美少女を忘れたとは考えられない。
ならばやはり知らない子で間違いないだろう。
目の前の少女は俺の顔をじっと眺めていたが、意を決したかの様に大きく深呼吸し、自身の願望を何故か俺に告白してきた。
「私!魔法少女になりたいんです!!」
魔法少女?この子は何を言っているんだ?
子供だという点を差っ引いても、理解不能すぎる。
何かの冗談かとも思ったが、此方を見る少女の眼差しは真剣そのものだった。
つまりこの子は純粋に痛い子という訳だ。
残念ながら、あほの子と関わってられる程こちらも暇ではない。
「御愁傷様です」
残念な少女にお悔やみの言葉を残し、少女を避けて帰途に就く。
が、少女はそれを阻むかのように前に回り込み、今度は両手を広げて俺の行く手を遮ぎってきた。
そして少女は俺にもう一度告げる。
「私!魔法少女になりたいんです!!」
「可愛い顔してるし、魔法少女よりアイドルでも目指した方がいじゃないか?それじゃ」
彼女の手をどけその横を通り過ぎる。
こんな遅い時間に、ガキとキャッキャうふふしてた日には、すごい勢いで職務質問が飛んでくるに違いないだろう。
君子危うきに近寄らずだ。
痛いガキの相手などしていられない。
「ちょ、待ってください。貴方魔法使いなんでしょ!どうか私を弟子にしてください!」
その言葉に、思わず俺は動きを止めてしまう。
これはあれか?ひょっとしてあれか?
考えたくはないが、昨日のアレ見られちゃったのか?
「私昨日見たんです!貴方が魔法で木を吹き飛ばす所を!」
ああ、やっぱ見られてたか……
まあでも、子供一人に見られたぐらいなら放って置いても問題ない。
とりあえず煙に巻いておこう。
「幻覚でも見たんじゃないのか?この世の中に魔法使いなんていないぞ」
「いいえ!私見ました!」
「そんな話、友達に話したら馬鹿にされるぞ?」
「うっ……」
どうやらすでに話して、馬鹿にされた後のようだ。
魔法なんてものはこの世には存在しない。
その大前提がある以上、少数の人間が魔法の存在を訴えた所で、周りは誰も信じないだろう。
つまり俺の魔法も、大勢の前で使いさえしなければ、世間的にバレる事は無いという事だ。
それが、俺が今日一日考えて出した答えだ。
という訳で、この夢見るガキンチョは無視する事にしよう。
「もう夜も遅いし、子供の遊んでる時間じゃないからさっさと家に帰りな。俺ももう帰るし、じゃあな」
「叫びます」
「へ?」
「弟子にしてくれないんだったら、変な事されたって大声で叫びます!!」
「ええええええええええ!!!」
この日俺に弟子が出来る。
魔法少女願望の頭のおかしい弟子が。
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