PHASE-1545【全員集合】
「さてと。じゃあ行きましょうかゲッコーさん」
「おう」
――強者達と別れ、地下へと続く扉がある通路へと向かって歩き出す。
「警戒――しなくてもいいくらいに会敵がないな」
「当然だよ。ここに来るまでにお姉ちゃんが倒しちゃってるからね」
定位置である俺の左肩に座り、嬉々と語るミルモン。
発言を耳にして得意げになるベルではあるが、自分の肩に座ってほしいようで、ミルモンに自分の所へと来るように言うも、断られると俺に嫉妬の目……。
ミルモンの代わりとばかりにポームスとちびっ子ワイバーンを抱っこしているからいいじゃないか……。
抱っこされている方は、頼れる強者さん達と別れて孤軍となり、気弱になっておられる。
頼れるのはちびっ子ワイバーンだけだからか、ベルに抱っこされながら、ちびっ子ワイバーンにしがみつくといった感じ。
「ほう」
「どうしましたロマンドさん」
後方を整然とした隊列で続くスケルトンの皆さん。
「近いようだ」
何が? と、問おうとしたら、
「やっと合流!」
快活の良い声が対面方向から聞こえる。
声の主はシャルナ。
その後ろに続くのはリンと彼女を守るスケルトンの皆さん。
「凄い数のアンデッドだよ……」
合流することで五十にもなる上級スケルトン。
これに怖がるポームスとちびっ子ワイバーン。
ワイバーンの体に更に強く抱きつけば、ワイバーンも弱々しい鳴き声をあげながら頭をポームスにこすりつけていた。
「大丈夫だ」
ベルがあやすが、そのベルにも怖がっているからどうしようもないといったところ。
負の感情が伝わってくることでミルモンは気分が良いようだし、それを出しにして小馬鹿にしているけども、ポームスは反論することも出来ず縮こまるだけ。
「皆、無事でよかったよ!」
「シャルナとリン。そしてそちらのスケルトンさん達も」
「あら、誰も欠けていないわね。ちゃんと励んでいたのかしら」
再会して早々、ロマンドさんに向かってリンがそう言えば、
「こう見えて、強者との激闘続きだったんだがな……」
と、嘆息まじりのロマンドさん。
「装備がボロボロになっているようだから、そこは信じてあげましょう」
「素直に信じてやれよ。ロマンドさん達がいてくれて本当に助かったんだからな」
フォローすれば、
「勇者が感謝するくらいには励んだようね」
言う顔は普段の小馬鹿にしたような顔じゃなく――安堵からのもの。
リンがそんな表情を見せるのも珍しい。
小馬鹿な言い様ではあっても、誰一人消滅することなく済んだことが何よりも嬉しいご様子。
「な、本当は素直でいい娘なんだよ」
見透かしたかのようにロマンドさんが俺へと言えば、
「うっさい!」
照れ隠しとばかりに蹴りを入れるも、
「ああ~痛くない痛くない。この体になってからというもの、こういうところは便利よな」
「全く!」
不貞腐れるリンの姿にスケルトンの皆さんは笑い声を上げる。
精神に揺らぎのないアンデッドとはやはり違うこの面々。
俺達が知ることのない、長い時の流れの中で結ばれた固い絆。
「皆が揃った事だし、先に進もうか」
場を締めるゲッコーさんの発言に皆して首肯で返し、隊列を整えて歩き出す。
――西側通路。
アドゥサルと激しく戦った部屋の横を通り過ぎる。
つまりは西側の最初の方だな。
「こっちだ」
俺達が訪れることのなかった通路をゲッコーさんの誘導で進む――。
「ほうほう」
狭い通路を右に曲がれば、視界は一気に広がる。
横幅のある通路へと変わった。
幅にして五メートルはある通路。
高さも幅と同程度。
「何かの搬入口? それとも巨人専用とかなのかな?」
ベルに抱っこされるポームスへと問えば、
「し、知らないよ……」
嘘をつくのが下手だな~。
特別な道ってことでいいようだね。
「皆、気を引き締めていかないとな」
範を示すように自分の頬を両手で叩いて気合いを入れて見せるも……、
「痛い……」
力加減を失敗して涙目になってしまう……。
「気合いを入れるのはいいとして」
「なんだリン?」
肩越しにリンを見れば、リンも肩越しに後方を見ていた。
見ているのはスケルトンの面々。
アル氏との戦いが苛烈だったロマンドさん達の鎧やマント、ローブには傷や破れが目立つ。
「貴方たちにはここで帰ってもらったほうがいいかもね」
「何を急に言い出すのか。我らが主は」
リンの発言に髑髏を傾けるロマンドさん。
――うん。
強力な戦力なのは間違いない。
ストームトルーパークラスの連中にすら勝ってしまう実力者集団。
このまま一緒に行動してもらったほうが俺としてはありがたいけども――。
「主がそう言う以上は従ったほうがいいんじゃないでしょうか」
「勇者まで言うか。我らが足手まといとでも?」
「滅相もない。ロマンドさん達の実力は短い付き合いの中でも存分に見させてもらいましたよ」
「ならば問題などあるまい」
「俺は問題ないですけども、主には問題があるんでしょう」
「なんだ、心配してくれているのか。主よ?」
「別に心配なんてしてないわよ!」
急に声を張るじゃないか。リン。
発言内容とは裏腹だな。
「大人数で行動するとなれば、全体へ気を配ることが難しくなるからね」
「まるで我らを守りながら戦わなければならないような言い様だな。心配は無用。脅威への対処は可能だ」
「無理でしょうね! 明らかに無理!!」
リンが声を張り上げるってのは、安堵の表情に続いて珍しい。
――俺達がクロウス氏と戦っている間、アル氏と戦ってくれたロマンドさん達。
アル氏は一人、対して集団で戦ったスケルトンの面々。
誰一人としてかけることはなかったけど、装備はボロボロ。
かろうじての勝利からの拘束だったのは分かる。
アル氏と対峙した時、戦力が少なかったなら負けていたかもしれない。
そうなれば犠牲も出ていただろう。
これから先の相手のことを考えれば、リンが声を張り上げるのも仕方ない。
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