PHASE-1533【小太刀】
「電撃の壁だな」
迫るクロウス氏の魔法を佇んで見つつ、慌てることなく発する当人とは違い、
「ゲッコーを守るのです!」
「おうよ!」
コクリコと俺は焦った声音になりながら動く。
迎撃とばかりにファイヤーボールを放つコクリコに、俺もマスリリースとウインドスラッシュでゲッコーさんを掩護。
「数が多いよ!」
壁の一部を破壊したところで止まることはない。
「だったらこれ」
と、ユーリさんが手にした武器で次々と迎撃。
「でた、一人で面制圧できるもんでお馴染みなAA-12 」
ドラムマガジンを装備したフルオートショットガンであるAA-12を気持ちよくぶっ放せば、ゲッコーさんに迫ってくる雷ボールの大部分をかき消してくれる。
「三人とも助かった」
と、端っから問題なかったのか、落ち着きある声で俺達に礼を述べれば、ユーリさんが見せた回避行動といい勝負のフットワークにて残りの壁を躱しつつ、バレットを立射姿勢にて構えてトリガーを引く。
「プロテクション」
回避ではなく障壁にて防いでくる。
初手を見て防げる威力と判断したのか、今度は障壁で対応。
念を入れたのか二重展開という用心深さを見せてくるクロウス氏。
「んん。素晴らしきファンタジー」
所有する武器が強力な威力を有していても、魔法に対して大きな効果を出せる代物となれば限定されるな。と、続ける声に些か弱さを垣間見せるゲッコーさん。
「捕捉しにくい攻撃ですが、防げるとなれば脅威にはなりません」
「そのようだ」
淡々とクロウス氏に返すゲッコーさん。
で、俺を見れば、
「どうする? 俺達の武器で高レベルなファンタジーを相手にするとなれば骨が折れるぞ」
「またそんな冗談を」
「冗談ならどれだけいいだろうな」
「ええ……」
圧倒的強者の台詞じゃないですよゲッコーさん。
「アレですよ! レールガンがあるじゃないですか。あれなら障壁だろうが無視してやれますよ。火龍戦での実績がありますからね」
「不意でもつかない限り、敏捷に動き回る相手に使うような代物じゃないからな~。困ったもんだ。打つ手無しだな」
「何を情けないことを言いますかね!」
「そうは言うがコクリコ。あいつは強いぞ」
「ゲッコーの方が強いですよ」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
本当に嬉しかったようで、ハリウッディアンなヒゲに囲まれた口元を緩ませれば、紫煙を楽しもうと一服しようとする。
戦闘中でも一服とかやっぱ余裕じゃないですか! と、ツッコミを入れようとしたけども、俺より先に、
「それはクサいのでやめてください」
と、コクリコ。
本当に嫌いなようで、口調は冷たいものだった。
「コクリコの言うとおりです。終わってもいないのに一服とか。終わらせてから楽しんでください」
若干コクリコが怖かったので、ツッコミは止めて同調に舵を切る。
「終わっても私の前では吸わないでください。クサいので!」
「お、おう……」
コクリコの本気度に落ち込むゲッコーさん。
「そういったやり取りが出来るのも、余裕からなのでしょうね」
「当然です。強烈なのをぶち込んでやりますよ!」
代表してコクリコ。
「ゲッコーさん。コクリコに負けてられませんよ」
「そうだな。武器が通用しなくとも、相手に負けてやろうとは端っから考えていない」
「そうでしょうとも」
ゲッコーさんのゲーム内にだって、へんてこ装備の兵器人間たちがいたんだし、それらを倒しているんだからな。
まあ、プレイヤーは俺だけど。
中には高速で飛行するのもいたもんだ。
今回の相手はそれにプラスして大魔法が使える相手。
大丈夫! ゲッコーさんなら負けないね!
なのでゲームプレイで勝利を収めてきた俺だって、
「負けるわけにはいかないんだよね!」
「よい気概です」
「本当に余裕な姿を崩さない嫌なカラス頭ですよ」
「コクリコ女史はそう言いますが、実際のところ余裕などありませんよ。肝は常に冷えています」
「ならばもっと肝を冷やしてやりましょう! 氷のようにキンキンに冷やしてやりますよ! 表情もそれに見合うように恐怖で歪ませてやります!」
今回のコクリコは悪役な台詞が似合いますな~。
「さて、実際問題やっかいな相手でもある」
「走攻守がハイスペックで全部そろっている選手みたいなもんですからね」
「ああ、高火力を叩き込むにしても外からだと難しいのは分かった」
「となれば――」
ガルム氏同様の攻略法になるってことだよな。
「接近戦で高火力を叩き込むしかないですね」
「そうだな」
「あら、珍しい」
いつもなら銃器をメインとするゲッコーさんが会話のキャッチボールの中で宙空から取り出すのは、サバイバルナイフではなく――小太刀。
刃渡り50㎝ほど。
刀身は黒く、フルタングのグリップ部分はラバーからなる。
鍔はなく、反りの浅い作り。
ゲーム内にてクリア特典で手に入るアイテムの一つ。
でもって、正面からの射撃に対し、小太刀を振って弾丸を切り払っていくという特殊仕様もある。
現実でそれが適用されるかは分からんが、ベルも似たような芸当が出来るからな。ゲッコーさんの技量なら可能かもしれん。
流石に雷ボールであるブリッツスウォームを切り払うのは無理だけど。
「大丈夫なんですか」
「心配無用だコクリコ。俺はこう見えて、刃物の扱いも得意なんだぞ」
「普段ショートソードの類いを使用するところを見たことがないので不安でしかないですよ」
「その不安を払拭させるだけの姿をご覧あれってな。掩護は任せるぞユーリ」
「了解」
AA-12 のマガジンを再装填しつつ、ブリッツスウォームは自分が迎撃するとユーリさん。
「普段お目にかかれないゲッコーさんの剣劇アクション。近くで見ないと損ですよね」
「一体感を得るために、是非ともアリーナ席で」
つまりは一緒になってクロウス氏に接近戦を仕掛けようってことね。
――いいですとも!
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