PHASE-1451【突入】
そう。外殻を突破した後、よりしんどい状況が待ってんだよな。
――ギルドハウス・執務室での話し合いを思い出す。
俺らサイドから見ると脅威となる数だけども、やはり三百万という数を耳にした後だと少なく感じる。
全てが飛行能力を有した者達から編制されているということもあるから、選定によることで少なくなっているんだろう。
その分、広範囲に素早く部隊を展開できるというのが強味。
まあ、それを現状ではしていないのが適当であり不気味でもある。
茶を飲んで帰るという適当な仕事ぶりだったというのを記憶している。
適当とはいえ、ショゴスの拠点となっている魔大陸は鎮護の地ということもあり、
いても総兵力の五分の一程度と先生は推測。
それでも一万はいるってことなんだけどな……。
しかも
ゲッコーさんとS級さん達による、スティンガーミサイルでの撃退から兵を補充していないなら、天空要塞の兵力は削られた状態だろうから、ここは補充されていないことを祈りたい。
まあ、補充されていようがいまいが――、
「行くっきゃない!」
からな。
「コクリコ」
「なんでしょう?」
「こういう時はなんて言うんだ」
「……なんでしょうね?」
以前ははしゃいでいたじゃないか。
ここぞという時、高難易度の場所に踏み込む時の台詞といえば――、
「アーレヤ――」
「ヤクタ・エスト! でしたね!」
「しっかり覚えてんじゃねえか」
賽は投げられた。
「後は出目しだい。いいのが出てくれないとね」
「なにを言ってるんだ。出さなきゃ死ぬだけだ」
後方からゲッコーさん。
「無理矢理に出すって事ですね」
「当然だろう。絶対に負けられないからな。イカサマダイスを使用してでも、自分たちにとって好ましい目を出さないとな」
戦いへと発展した場合、こちらからすれば多勢からなる
勝つためにはどんな手でも使わないとな。と、ゲッコーさん。
居城の主である
これに加えて今までの経験上、ショゴスの力に支配されている水龍タレスとの戦闘も控えているだろう。
「こりゃマジでイカサマ――チーティング的な力を使用しないといけないかもな」
S級さん達だけでなく、デミタスにも見せた力の使用。
絶対的な力を使用するとなれば、ここの攻略は簡単になるだろうな。
「駄目だぞ」
ここぞという場合、使用しないといけないだろう。と考えていた矢先、ベルがこちらを睨んでくる。
「楽して勝利を得るな。己の実力がその力に見合っているなら何も言わないが、私に手も足も出ない内はそんな力は使わせられないな」
「あ、はい……」
これからの事を考えれば間違いなく使用するべきなんだけども、許さないという最強さんからの有り難いお言葉。
使うなら自分がそれに見合わないといけないか……。
相も変わらずスパルタですよ……。
もう一人の最強さんであるゲッコーさんみたいに、柔軟な発言が欲しいところだ。
普段はベルの考えに近いゲッコーさんですら、今回は俺に近い思考なんだからね。
とりあえずは己の実力と仲間達の力でなんとかしてみますかね。
本当に危険だと判断したら使うけど。
まずは――、
「俺個人で頑張ってみるから、ベルも頼むぞ」
「分かっている。今回は相手が相手のようだからな。戦闘へと発展すれば、周囲の強者達は蹴散らそう」
「本丸戦にも出てくれよ」
「トールの成長も促したいところだが、本当に危険と判断した時は、本格的に参加しよう」
俺の命が危機に瀕しないと本気で動いてくれないとか……。
本当にスパルタがすぎるよ……。
まったく! 少しくらい愛らしい連中に向ける愛情を俺にも向けてほしいよ!
という、負の感情を燃料にするとばかりに、
「行こうかツッカーヴァッテ!」
と、裂帛の気迫を込めた声で伝えると、
「キュゥゥゥゥゥン!」
と、可愛らしくも気合いの籠もった鳴き声で返してくれる。
口部がないのにどうやって鳴き声を上げてるのかが不思議ではあるけども、
「今は目の前だな!」
鳴き声から加速するツッカーヴァッテ。
速度が上がればそれだけ雲の外殻へと近づく。
「でかいな……」
楕円からなる一塊の雲。
サイズは――俺では目算が出来ない。
ここは口にしなくても、
「でかいな……」
――……と、頼みの綱であるゲッコーさんも、雲の外殻の大きさに呆気にとられており、正確な大きさを答えてくれなかった……。
――接近すればするほど、雲の内部の輝きが強くなり、ゴロゴロといった音に加えて、ピシャーンと大気を劈く音も派手になっていく。
「このまま突っ込めば耳がいかれそうだな」
と、心配するゲッコーさんを尻目に、ツッカーヴァッテは迷わず真っ直ぐに外殻へと突き進む。
「アーレヤ・ヤクタ・エスト!」
ここでコクリコが大音声で発し、
「南無三」
と、俺がポツリと呟いたところで、暗闇と一瞬の輝き、そして雷鳴轟く世界へと突入。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます