PHASE-1172【薄っぺらい主従関係】

「で、最新の情報ってなんだよ? これからも増えていきそうな感じだな」


「実際に増えていくでしょうね。護衛軍や他の幹部に悟られないようにコソコソとしているみたいだし」


「勘弁してくれよ……」

 現魔王には配下に対して、しっかりとした内部調査を早急にやってほしいところだよ。


「手の内は見せないタイプか」


「稚拙な頭ながらにその辺りは徹底しているわね」

 蹂躙王ベヘモトに対しては一々と悪態をつけないと嫌なのかな?

 更に悪態を続けるデミタス。

 ――蹂躙王ベヘモトはこの世界のありとあらゆるものが自分の所有物だと思っているほどの強欲の持ち主だそうな。

 強欲さだけで比べるならば、強欲を具現化させた存在である聖祚にも引けを取らないとまでデミタスは語る。


「……主である聖祚を強欲を具現化させた存在とか表現して怒られないのかよ……」


「ここにはお前しかいない。失言ではあるが、私は別段、聖祚に絶対の忠誠は誓っていない。私の忠誠は司令に対してのものだ」


「あ……そうですか……。そうですよね……」

 恩人であるデスベアラーに忠誠を誓っており、そのデスベアラーは生みの親であるショゴスに絶対の忠誠を誓っていたから、自分も従っていただけとの事だった。

 護衛軍だから絶対的な忠誠にて活動しているのかと思っていたけど、魔王にではなく個人に対しての忠誠の向け方ってのもあるんだな。

 この内容部分を口にする時、俺にしっかりと恨みの視線を向けるところはデスベアラーに対する絶対的な忠誠心からだよね……。


「まあいい。話を戻す」

 恨みの視線を向けることをやめ、話を戻してくれる。

 強欲な蹂躙王ベヘモトは、いずれは自分が魔王となるということを望んでいるという。

 今はショゴスに忠誠を誓っているようだけども、心内では反乱を企てている可能性があるだろうと、護衛軍内では考えられているようだ。


「じゃあ弑逆を実行する前に、謀反人あつかいで粛清すればいいだろうに」

 そうすれば難敵が一人消えて俺たちサイドは楽できる。

 

「それが出来れば苦労はしない」


「ですよね~」

 現魔王が魔王となる前から魔大陸でその名を轟かせていたというのがこの蹂躙王ベヘモトことカルナック。

 前魔王リズベッドに組みすることなく活動していた時から自身が魔大陸を制覇し、魔王になる野心を抱いていたそうだが、ショゴスの登場によりそれが頓挫。

 

 頓挫したとはいえ、以前から力で従わせてきた軍勢は有したままであり、現在はそれが三百万を超えているわけだ。

 面従腹背であるカルナックは間違いなくそれ以上の兵数を隠し持っているとも考えられているという。

 悟られないようにコソコソとしているってのがその証拠なんだそうな。

 いやいや……。俺たちサイドからされるとそれ以上に増えるのは困るってもんだ……。

 ただでさえ三百万って数に絶望しているってのに……。


 脅威対象だからこそ粛清の標的にもなるカルナックだが、現魔王であっても強くは出られないのが現実。

 やはり圧倒的な兵数が背後にあるからってことみたいだ。


「魔王も力にものを言わせて兵力を併呑すればいいのに」

 あ……、そうなると三百万が魔王に移動するだけで、俺たちサイドにうまみってのはないか……。

 つぶし合ってくれるのがベストなんだよな。


「聖祚は強い。間違いなく最強である」


「おう。そうか」


「が、あの蹂躙王クズも強い」


「おう。そうか」

 クズの時の発言の強さよ。


「認めたくはないが個の実力なら聖祚に次ぐ」


「おう。そうか……」


「同じ発言だが今のは力がなかったな」


「戦いたくないからな」

 ショゴスに次ぐ強さに、分かっているだけでも三百万の兵数を有しているんだからな。

 戦いたくねえよ。

 まあ俺がそう思うように、ショゴスも同じように考えているようで、自分に次ぐ強さであり、魔王軍内で最も兵力を有する者だからこそ無理に従わせず、利用しているといったところだ。


「強くて兵力を持っていて強欲我欲の塊なのに、魔王には従うんだな」


「それだけ聖祚の力が絶大だからだ」


「そうか……」

 圧倒的な力と兵力を持っていても、ショゴスの前では大人しくなるわけだ。

 ショゴスってスライムはぶっ飛んだ存在のようだな……。


「いずれは研いだ牙と爪を聖祚に向けるでしょうけど」

 

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