PHASE-1173【いびつなバランス】
――――魔王軍ってのはいびつな力関係で出来ているようだね。
そこを突けば一気に崩れるかもしれないな。
となれば、こちらから動いてそこを突いて崩せばいいような気もする。
そこら辺を刺激すれば内部抗争に発展させることも出来るかもな。
先生や荀攸さんに相談すれば、最上の策を繰り出してくれること間違いなしだ。
「造反を狙っても意味はないわよ」
「ソンナコトハ、カンガエテイナイヨ」
「なんなのその語り方は……」
「う、ううん。意味は――ないのか?」
「ない」
きっぱりと言い切るね。
「それはなぜ?」
「それはお前――お前達が原因でしょうね」
「なぜに!?」
「お前達によって
「言い方よ」
失態したことがよほど嬉しいのか、クツクツと笑みを湛える。
味方であっても
なんか戦っていた時は恐怖を感じた嘲笑だったけど、今では性悪美人の笑み程度に見えてしまうのが不思議だよ。
「本来は王都を落とし、そこを中心として各地の人類やエルフなどが住まうカルディア大陸を征服、統一をと考えていたのだけどね」
だがあろう事か
王都付近の要塞、砦までも落とし、尚且つ王都内へと侵入することも可能となっていたのに、欲にまみれたクズ共が欲を優先とした動きへと移行してしまう。
ここのデミタスの説明部分は怒りを隠すことが一切無く、感情が大いに体から溢れていた。
俺に向けての怒りではなかったのでプレッシャーは感じなかったけども、絶対に許すことが出来ないといった怒りを脱力した体全身でも感じ取れた。
――欲にまみれたってのは、王都の女性を連れ出して好き放題していたってことだろう。
実際にゲッコーさんが潜入してくれたリド砦では、多くの女性が全裸で囚われていたからな。
その前の話になると、王都に跋扈していた連中。そしてその後、王都に迫り来る者達を召喚したばかりの最強状態の赤髪だったベルが、レイピアの一振りで生み出した炎の大波で撃退した。
そこからゲッコーさんを召喚してリド砦に潜入してもらい、ベルと俺……あの時の俺はまったくもって役に立っていない存在だったな……。
――……とにかく三人で砦を攻略した。
更にその後、先生を召喚して王都にカイルたち後のギルドメンバーになってくれた冒険者たちを集わせ、兵を精強へと変えていくことで王都に侵攻してきた
王都が追い込まれた状況からの反攻も一年前になるんだな。
――以降は高順氏のお陰で不落の要塞と化したトールハンマーの存在により、
王都まで攻め込んでいて大きな後退を余儀なくされた事に現魔王であるショゴスもお怒りではあるそうだが、いかんせん大規模な戦力を有している
それをいい事にカルナックは形だけの侵攻へとチェンジ。
見て分かる程に北伐への力を緩めているという。
「なんで?」
「さっきも言ったわよね。強欲な存在だって。自分の力を温存したいのよ。欲の塊なのだから。だからこそ自分の所有物が消耗することを惜しむ。見ようによっては兵に対して慈愛ある行動のようで、そう判断するゲスな配下達からの信頼はすこぶる高いようね」
実際は部下の消耗を惜しんでいるのではなく、三百万を超える兵を動かすとなれば輜重もとんでもない事になる。
それらを多く失うのが嫌だというのが本音だとデミタスは付け加えた。
なので北伐の時は魔王サイドから物資を提供してもらって攻撃を行っているという。
で、流石の魔王サイドも三百万の兵力すべてに対して物資を無尽蔵に送るなんて事は出来ない。
でも北伐はしてもらいたい。
なので叱責はしても強くは咎めない。
いびつではあるが相互の思惑が奇跡のバランスとなっているようで、そこを崩すってのは難しそうだ。
「現魔王も苦労してるんだな」
「苦労などしないわよ。カルナックなど聖祚が殺そうと思えばいつでも殺せる。ただ無用な内乱に発展すればお前たちが調子づく。先ほどもそれを画策していたようだし。それが分かっているからこそ粛清を実行しないのよ」
「だろうね」
といっても、瘴気が充満している以上、こちらも攻めあぐねているから南伐が出来ないんだけどね。
カルナックもそれが分かっているから大軍ではなく兵を小出しにして損耗を抑えているってわけだ。
後々、自分が魔王を名乗るために――。
「なら瘴気が浄化されてこっちの動きがよくなれば」
「その時はあのクズは困るでしょうね。本腰を入れないといけないのだから」
それはお前達もだろうと言いたかったが――やめておく。
デミタスにとってはショゴスへの忠誠よりも、
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