PHASE-1103【展開の変わり方よ……】
「捕らえる事を前提に――な。それにさっきも言ったけど氏族同士ってのを考慮してくれよ」
「当然」
なら安心だ。
「逃げられないように足は射抜くけどね」
「……さいですか」
シャルナがカゲストの屋敷へ案内すると言ったところで――、
「いいかな」
「どうぞ」
次へと移行しようとしたところで、屋敷の封鎖に協力していたエルダースケルトンの一体がエルフさんを伴って俺達のところへとやって来た。
随伴していたエルフさんの表情は、エルダーが原因で引きつっていたけども、俺達の姿を見れば安堵の表情に変わる。
しかし、なぜ勇者がアンデッドと行動を? といった疑問符は浮かべていたようだけど――。
「どうしました?」
問えば、はたとなり、
「はっ! 勇者殿にもご連絡を入れたく参上しました」
ルミナングスさんに俺たちがここにいるというのを聞かされ、ポルパロング邸を訪れたという。
「それで、連絡というのは?」
「殿下が……エリスヴェン殿下が拉致されました!」
「……はい?」
――――。
「まったく……急転直下だな…………。カゲストどころじゃないぞ……」
ここにきて動きが激しくなりすぎだろう……。
数日前にこの国に来たってのになんだよこの状況は。
やっぱあれか? 俺は一級フラグ建築士なのか?
俺がこの国に来たからいろんな事が起こっているのか?
勘弁してくれよ……。
案内されるのは謁見の間――ではなく、御前会議なんかで使用されるという玉座の間。
「どうも――」
「おお、トール殿」
息子が拉致された中でも背筋を伸ばして覇気のある声。
王様然とした姿。
周囲には氏族の――名前は聞いてないけど中立の二人組がいる。
ルミナングスさんと蛇さん。後、今から会おうとしていたカゲストの姿がなかった。
「それでいつ頃だったんですか?」
「夕暮れの頃だという」
俺と別れて直ぐってところか?
だが気付いたのは今しがただという。既に夜更けの時間帯
ざっと四、五時間は経過しているってところか。
「発見が遅れた原因は?」
「それは私に……」
「お姉ちゃん」
と、ここで以前のように名で呼ぶようにと注意する――といった余裕はないリンファさんが、母親であるカミーユさんに支えられて玉座の間へと入ってくる。
立っているのもやっととばかりに憔悴していた。
――エリスの世話をする最中、不意に背後を取られ意識が遠のいていったという。
薄れる意識の中でエリスの部屋へと足を向かわせている人物を目にし、そのまま意識を失ったそうだ。
目が覚めたのはついさっき。これが遅延の原因。
その人物が誰かと問えば、やはり俺が原因を起こしてしまっているのだろうかと不安になる人物名が、リンファさんの口から発せられる。
俺たちが正に会いに行こうとしていたカゲストだったからね……。
「だがまだクリミネアンとは限るまい」
と、エルフ王がフォローを入れるも、
「この場に罷り越せない事が証拠かと」
ここで蛇さんの登場。
「遅参、お許しを」
と、蛇さんは継いでから深々と頭を下げる。
「いや、十分に速い」
王様はそう言うも、蛇さんは俺たちを目にして、外の方よりも遅れている事は恥ですと返していた。
「勇者殿、シッタージュ殿の事は聞きました――申し訳ない」
二メートルを超す長身痩躯の蛇さんが俺たちにも頭を下げてくる。
「そういったのは後にしましょう、それよりもカゲストは何処に?」
「十中八九、殿下と一緒でしょう。ファロンド殿の部下がクリミネアン殿の屋敷を訪れましたが、主は不在。何処に行ったのかも聞かされていないと使用人が答えたと、ここへと来る最中に聞かされました」
ルミナングスさんがここにいないのは、既に行動してくれているからって事か。
蛇さんの報告では、ルミナングスさんと部下達によって城壁と外周壁上の守りを厳重にしているという。
これに加えて、ここに残っている者達にも蛇さんは声に鋭さを混じらせて下知を発する。
刺されるような声に刺激を受けたエルフの兵達が迅速に動き出す。
カゲストとポルパロングの息の掛かった者達は捜索への参加は除外とも加えていた。
国からの逃亡の恐れも踏まえて門は固く閉ざし、捜索にあたるとの事。
「ふぅぅぅぅぅ……」
と、長嘆息なのは王様ではなく蛇さん。
「これからだというのに」
と、独白を続ける。
「大丈夫だ。我が子はそう簡単に言い様にはされん」
本来なら一番に励ましの声をもらうであろう王様は、背筋を伸ばした堂々たる姿を崩さない。
心底では不安を抱えているだろうけど、蛇さんたち臣下が目の前にいれば、弱々しい姿を見せるわけにはいかないのが王様としての立場なんだろうね。
「そこまで大仰に捜索しなくてもいいかもしれん」
「ゲッコーさん!」
なんとも頼りになる渋くて格好いい声ですよ。
「ここに来たって事は、村の方は問題なかったみたいですね」
継いで発せば、
「問題はあったが対処した」
「流石です」
ゲッコーさんが対処したって言うなら、なんの問題もなく村は平穏無事ってことだ。
ま、ゲッコーさんが見張ってくれていた時点で、全くもってなんの心配もしてなかったけどね。
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