PHASE-1104【整合性】
「師匠!」
「サルタナまでいるのか。無事でよかった」
肩で息をしている辺り、全力で走ってゲッコーさんについてきたようだ。
ゲッコーさん曰く、見込みがあるとのこと。
伝説の兵士の歩法に必死になりながらもちゃんとついてこられたんだからな。そら見込みがあるってもんだよ。
とりあえず――、
「ハーフエルフとかってのは問題にしないでくださいね」
「この様な時にそんな事を気にする者はいませんよ」
蛇さんって存外、寛大だね。
「それでゲッコー殿、大仰にしなくてよいとは?」
王様が問えば、
「村を襲おうとしたシッタージュ氏の私兵たちを制圧。尋問し情報を得ました。無論、命は奪っていません」
「そうか。迷惑をかけた」
エルフ王は俺たちに頭を下げる。
「もっとも迷惑を被ったのはトール殿だな。シッタージュ卿との事はまだ詳しく聞かされていないが、トール殿に非はないだろう」
単純に俺に対して恨みを持っていたポルパロングが意趣返しをしたと思っている程度で内容を聞かされているようだ。
なのでポルパロングが不可思議な力を使用し、怪物となって屋敷内での戦闘へと発展したことを伝える。
そしてフル・ギルによって支配を受けていた事も話した。
「メタモルエナジーにガグか……。両方とも初めて耳にする。そしてフル・ギル……。魅了の大魔法が使用された――いったい誰に?」
「私が知る限り、エルフの中でその大魔法を使用できる者はおりません。そもそも国に混乱を招く魔法ですので、習得自体が禁止となっておりますからね」
蛇さんが王様にそう返す。
加えて、メタモルエナジーなどという薬の事も王様同様に蛇さんも知らないとのことで、中立の氏族二人も同じように返していた。
エルフの国において医薬品を扱うカゲストが、自分たちの知らないところで未知の薬品を作りだしたという推理に傾倒する王様と蛇さん。
「まあそれは本人に聞くのが一番いいでしょう」
ゲッコーさんが推理に傾倒する二人の話を遮れば、
「その言い様。場所は既に把握しているようですな。流石はトール殿のお仲間。それでゲッコー殿。クリミネアン卿は何処に?」
王様の質問に、
「ゲド集落かと。シッタージュ氏の部下が言うには、問題が起こればそこに集まるという手筈だったようです。その時の指揮系統はシッタージュ、クリミネアン両氏が有しているということでした」
それが本当ならポルパロングとカゲストは確実に繋がっているし、お互いに協力していた関係という事になる。
といってもポルパロングの場合、フル・ギルが使用されていたからどこまで深く繋がっているかは分からない。
「ゲド集落か……」
王様の声は重い。
ウーマンヤール。つまりはダークエルフの集落だからね。
カゲストとダークエルフは繋がりを持っているって事かな?
でもそうなると、ルマリアさんとアルテリミーヤさんをいいようにしていたポルパロングがこの繋がりからは弾かれるような気がする。
どう考えてもダークエルフ達が拒絶するだろうからな。
となると、ポルパロングはカゲスト――もしくはフル・ギルを使用した者に体よく利用されたと考えるべきか。
ふむん……。
「しかしここでクリミネアン殿がダークエルフと手を組むとは……。シッタージュ殿ほどではないが、下の階級を見下していたのだがな」
そうなんだよね。薬をテレリやウーマンヤール階級に出し渋るような人物だからな。
この繋がりには整合性が取れていないんだよね。
「やはりカゲスト――氏もフル・ギルで操られているんですかね?」
と、蛇さんに発せば、ないとは言いきれない。むしろそれが自然かも知れないと俺の推理に賛同。
この魔法ありきって事なら整合性も取れるからな。
「だがまだ問題が残っている。フル・ギルは誰が使用したか――」
頤に手を置いて考え込む蛇さん。
「これ以上の推測は迷走に繋がる。ゲッコー殿が言うように、本人に聞くのが一番だ」
王様がここで話を中断。
答えは単純明快。ゲド集落に赴けばいいだけのことだと続けた。
今は何よりもエリスの身を第一に考えないとな。
ダークエルフ達はエリスを人質として、王様に無茶な要求を出してくるかもしれない。
そうなれば内戦ルートってのもありえる。
「ファロンド卿」
「はい」
おっと、音も無く登場。
城壁と外周防御壁への兵の展開を終えたとルミナングスさんが伝えると、
「準備は?」
と、王様。
「整っています」
と、返す。
発言と同時にルミナングスさんの部下たちが姿を見せる。
ルーシャンナルさんだけでなく、北伐の時に参加してくれた三百人隊隊長のカーミルトさんもいる。
この国において間違いなく精兵中の精兵なのがルミナングスさんの麾下の方々。
ポルパロングのとこの正規兵や私兵とは次元の違う方々。
目力からして実力の違いが分かるというもの。
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