PHASE-1096【他人事みたいな言い様ですね】
「お前、ポルパロングなんだよな?」
上からな物言いから分かるけども、一応の確認をすれば、
「様をつけろ!」
「おう!」
横っ飛びで回避。
怒号と共に強靱な右ストレートによる乱暴な肯定は、一撃で二撃。
「自由に動けるくらいに広くて天井が高い部屋でよかったな。金持ちめ」
「そういった戯れ言を吐ける余裕があるか。そもそもこの部屋を選んだのは、この姿となって貴様たちを葬るためだ」
なるほどね。
逃げることもせず待ち受けていたのは、勝てるだけの奥の手を持っていたからか。
「吐けるついでにそっちも吐いてみろよ。なんだそのバケモノの姿は。イケメンが台無しだぞ。まあ醜悪な心が表面に現れたって事なら納得だけど」
「ほざけ! ウインドランスッ!」
発せば四本の腕と同数の風の槍が顕現。
腕に合わせるように、槍のサイズも電柱サイズといったところ。
体躯に比例するように、魔法の威力も上がるのかな?
「死ねい!」
「お断り。マスリリース!」
抜刀、抜剣。
抜くと同時に残火とエドワードから光刃を放ち、二つを迎撃。残り二つは回避で対応。
「ちょこまかと!」
姿はデカいし口の形も普通とは違うけども、低い声になったくらいでしっかりと会話によるやり取りは可能。
こういった時のお約束としては、会話が出来ないくらいに知能が低くなるもんだろうけど、そこに変わりはないようだ。
「で、さっきの続きだ。なんなんだその姿は? こっちの二人が知らない生物だ。普通じゃないな。合成獣か?」
もしかして――、カイメラが関与してるってことはないよな。
「合成獣? なんの事を言っている」
どうやら関係していないようだ。
「で、それはなんだ?」
「これを目にすることは誰しも初だろうな。この力は偉大な御方から与えられたということだ」
「……えっと……なんだその他人事みたいな言い様は。その当事者はお前だろうが。なんだ? お前はその力を疑いもせずに従って受け取り、飲んだのか?」
飲む時にはわずかに躊躇も見られたけど。
――……。
「…………当然で、あろう……。あの御方が……仰るのだからな」
なんだよその妙な間は?
「で、その御方って誰だ? 氏族のお前が御方って言うくらいだからな。明らかに上の階級だな」
「え!? 嘘だよね」
氏族の上となると階級は一つしかない。
だからこそシャルナは信じられないとばかりに驚く。
氏族には筆頭もいるけど、その筆頭とは現在、仲違いの関係だから消去していいだろう。
となれば、信じたくはないけど――、
「エルフ王――か?」
「ハッ!」
縦に割れた大口がこちらに侮蔑の笑いを放つ。
「そんな訳がないだろう。あのような者にこの国は任せられん」
違うと分かれば安堵するというもの。
任せられんとはっきりと言う辺り、
「なんだよ。ここにきて謀反か?」
「謀反ではない。大義である」
「じゃあその大義の主は誰だよ?」
――……。
流石にそれは言えないのか、急に
だとしても目の前の動作は気になる。頭を傾げている姿ってのがね――。
まるで自分は分かっていないといった感じだ。
「おい。主は誰だ?」
念のためにもう一度問うてみれば、
「黙れぃぃ! 貴様と話をしていると頭が混乱してくるぅぅぅぅ!」
なんだそりゃ?
会話は終わりとばかりに四本の腕から再度魔法を発動させようとする。
「じゃあ最後。その姿になるために飲んだ黒い液体はなんだ? なにも聞かされないでそんなもんを服用するような根性はお前にはないだろう」
挑発じみた発言になってしまったが、
「あれはメタモルエナジー。偉大なる御方の力が含まれているそうだ。名をモード・ガグと言うそうだ」
だからなんで聞かされたことをそのまま説明するような言い様なんだよ。
当事者でしょうがよ!
まあいい。
何よりも――、
「ガグって分かる?」
後ろの二人に問うてみるも、姿もだったけど名前も初めて耳にするという。
やはり、シャルナが詳しい幻獣なんかの類いでもなければ、知識豊富なリンの知識外に存在する生物って事か。
新種かな?
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